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灰かぶり、遺産を放置する
離宮の王子
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故人となった側妃が産んだ離宮の王子は、一年後には王籍を失い、聖職者になることが決まっている。
離宮の王子の母はそれほど身分が高くなかったが、側妃になることができた。
そのことで、母の実家は浮かれ、分不相応な望みを持ち、側妃の実家であることを盾に好き勝手したことで、実家は取り潰しとなった。
離宮の王子が幼い頃のことで、その事件以降、離宮の王子の元を訪れる人はほとんどいなくなったので、詳細は解らないが、その一件で父親である王を怒らせてしまったらしく、成人と共に王籍から抜かれ、聖職者となり生涯独身を貫くことが決まっていた。
「どうしても、諦めたくない」
「殿下……」
そんな離宮の王子には恋人がいた。生まれた時からずっと一緒の乳姉弟。
ほとんどの人から見放された離宮の王子だったが、乳母とその娘だけはずっと側にいてくれた。
幼い頃から、そして辛い時もずっと一緒だった二人の間には強い絆があり、二年前に乳母が亡くなり、互いに一人だけになって支え合ってきた。
それが男女の愛へと変化するのに、それほど時間はかからなかった。
王子はこのままでは、女人禁制の孤島の修道院に送られ、二度と乳姉弟と会うことはできない。
どうしたら、二人でずっと一緒にいられるかを考えていた時に、灰かぶりの噂を小耳に挟んだ。
「娘と結婚した男を跡取りにする」
条件を知った王子は乳姉弟に、
「私は婿の座を射止める。正妻にすることはできないが、ずっと側にいてくれ」
灰かぶりの婿になって、最愛の乳姉弟と一緒に生きたいと告げた。
「たとえ日陰者であろうとも、殿下とずっと一緒にいられるのなら充分です」
灰かぶりと呼ばれる娘が聞いたら「私の意志は?」とツッコミたくなるような会話を二人はし、そして灰かぶりを手に入れるために、乳姉弟は使用人として灰かぶりが監禁されている邸の使用人になった。
連れ出す理由は離宮での舞踏会だが、招待客は下級貴族ばかり。
上級貴族は一人も招待していないし、招待できるような舞踏会ではなかった。見る人が見れば、みすぼらしい舞踏会。
王に疎まれている離宮の王子にとっては、精一杯の催しだった。
乳姉弟は灰かぶりの食事を運ぶことができ、コンタクトを取り、連れ出すことに成功した。
後は離宮から出さずに、結婚したと書類を出せば……と考えていた二人。
「ああ、解っている。かならず、あの灰かぶり姫と結婚する。だが心は君にしかないことを忘れないでくれ」
「解っています。信じております」
成功を確信して気が緩んでキスを……というよりは、人気の無い離宮なので、二人はいつもこんな感じだった。
その姿を灰かぶりに見られているとも知らず。
離宮の警備体制が杜撰だったこともあり、灰かぶりは簡単に逃走することができた。
離宮の王子と乳姉弟は、灰かぶりを探したが見つからず、呆然としているところに、王が派遣した兵士が訪れ、二人は王の元へと引っ立てられた。
そして灰かぶりについて、なにか知らないかを暴力込みで詰問され、離宮の王子は灰かぶりの夫の地位を狙って、邸から連れ出して離宮に連れ込んだことを白状した。
話を聞いた王は呆れながら、
「婿になれるのは、親族だけだ。それも四親等まで。お前は四親等ではないから、婿にはなれんぞ」
根本的な間違いを指摘した。離宮の王子と乳姉弟の調査能力は、それほど高いものではなかったので、その重要な部分を知らなかった。
「何処へ行ったかは解らない……か。あいつらに、痛くもない腹を探られるハメになるとは」
灰かぶりの連れだしは、離宮の王子の思い込みによる単独犯罪だが、灰かぶりの実家にそんな言い分は通用しない。
灰かぶりの一族の莫大な遺産を欲して、王家が横やりを入れてきた……灰かぶりの親族たちは、王家が灰かぶりを行方不明にし、家督を継げないようにして、財産を国庫に収納しようとしているのではないかと、猛烈に抗議してきた。
王としては聖職者として孤島に押し込み、存在をなかったことにする予定の王子が、こんなことをしでかすとは、思ってもいなかったが、知らなかったで済ませられないのが王というもの。
灰かぶりの一族に対して当主を立てる期間を「灰かぶりが見つかってから、一年以内」と延長することを伝えて、正式な文章にして交付した。
離宮の王子は一年前倒しの上に、生殖機能を剥奪して孤島の修道院に送られた。乳姉弟は、何ごともなかったかのように、退職金が支払われ離宮を出ることになった。
ただ離宮を出た後の乳姉弟の消息は不明。
灰かぶりの一族に始末されたのではないかという噂も、少しは立ったがそれもすぐに消え、灰かぶり本人の耳に入ることもなかった。
離宮の王子の母はそれほど身分が高くなかったが、側妃になることができた。
そのことで、母の実家は浮かれ、分不相応な望みを持ち、側妃の実家であることを盾に好き勝手したことで、実家は取り潰しとなった。
離宮の王子が幼い頃のことで、その事件以降、離宮の王子の元を訪れる人はほとんどいなくなったので、詳細は解らないが、その一件で父親である王を怒らせてしまったらしく、成人と共に王籍から抜かれ、聖職者となり生涯独身を貫くことが決まっていた。
「どうしても、諦めたくない」
「殿下……」
そんな離宮の王子には恋人がいた。生まれた時からずっと一緒の乳姉弟。
ほとんどの人から見放された離宮の王子だったが、乳母とその娘だけはずっと側にいてくれた。
幼い頃から、そして辛い時もずっと一緒だった二人の間には強い絆があり、二年前に乳母が亡くなり、互いに一人だけになって支え合ってきた。
それが男女の愛へと変化するのに、それほど時間はかからなかった。
王子はこのままでは、女人禁制の孤島の修道院に送られ、二度と乳姉弟と会うことはできない。
どうしたら、二人でずっと一緒にいられるかを考えていた時に、灰かぶりの噂を小耳に挟んだ。
「娘と結婚した男を跡取りにする」
条件を知った王子は乳姉弟に、
「私は婿の座を射止める。正妻にすることはできないが、ずっと側にいてくれ」
灰かぶりの婿になって、最愛の乳姉弟と一緒に生きたいと告げた。
「たとえ日陰者であろうとも、殿下とずっと一緒にいられるのなら充分です」
灰かぶりと呼ばれる娘が聞いたら「私の意志は?」とツッコミたくなるような会話を二人はし、そして灰かぶりを手に入れるために、乳姉弟は使用人として灰かぶりが監禁されている邸の使用人になった。
連れ出す理由は離宮での舞踏会だが、招待客は下級貴族ばかり。
上級貴族は一人も招待していないし、招待できるような舞踏会ではなかった。見る人が見れば、みすぼらしい舞踏会。
王に疎まれている離宮の王子にとっては、精一杯の催しだった。
乳姉弟は灰かぶりの食事を運ぶことができ、コンタクトを取り、連れ出すことに成功した。
後は離宮から出さずに、結婚したと書類を出せば……と考えていた二人。
「ああ、解っている。かならず、あの灰かぶり姫と結婚する。だが心は君にしかないことを忘れないでくれ」
「解っています。信じております」
成功を確信して気が緩んでキスを……というよりは、人気の無い離宮なので、二人はいつもこんな感じだった。
その姿を灰かぶりに見られているとも知らず。
離宮の警備体制が杜撰だったこともあり、灰かぶりは簡単に逃走することができた。
離宮の王子と乳姉弟は、灰かぶりを探したが見つからず、呆然としているところに、王が派遣した兵士が訪れ、二人は王の元へと引っ立てられた。
そして灰かぶりについて、なにか知らないかを暴力込みで詰問され、離宮の王子は灰かぶりの夫の地位を狙って、邸から連れ出して離宮に連れ込んだことを白状した。
話を聞いた王は呆れながら、
「婿になれるのは、親族だけだ。それも四親等まで。お前は四親等ではないから、婿にはなれんぞ」
根本的な間違いを指摘した。離宮の王子と乳姉弟の調査能力は、それほど高いものではなかったので、その重要な部分を知らなかった。
「何処へ行ったかは解らない……か。あいつらに、痛くもない腹を探られるハメになるとは」
灰かぶりの連れだしは、離宮の王子の思い込みによる単独犯罪だが、灰かぶりの実家にそんな言い分は通用しない。
灰かぶりの一族の莫大な遺産を欲して、王家が横やりを入れてきた……灰かぶりの親族たちは、王家が灰かぶりを行方不明にし、家督を継げないようにして、財産を国庫に収納しようとしているのではないかと、猛烈に抗議してきた。
王としては聖職者として孤島に押し込み、存在をなかったことにする予定の王子が、こんなことをしでかすとは、思ってもいなかったが、知らなかったで済ませられないのが王というもの。
灰かぶりの一族に対して当主を立てる期間を「灰かぶりが見つかってから、一年以内」と延長することを伝えて、正式な文章にして交付した。
離宮の王子は一年前倒しの上に、生殖機能を剥奪して孤島の修道院に送られた。乳姉弟は、何ごともなかったかのように、退職金が支払われ離宮を出ることになった。
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