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灰かぶり、遺産を放置する
灰かぶり、謎の靴と対面する
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監禁先から逃れることができた灰かぶりは、王都から少し離れた街で、住み込みの仕事をみつけて、平和に暮らしていた。
灰かぶりを連れ出した離宮の王子が修道院送りになったことについては、興味がないので知らない。
「今日は随分、血止めの薬草が売れているんですね」
灰かぶりが働いているのは薬草屋で、この店は広い中庭で、売れ筋で作り易い薬草を育てていた。
灰かぶりは、庭で作っている薬草への水やりや草むしり、収穫して乾燥などを担当していた。
重労働ではあるが、はめ殺しの窓に鉄格子まで追加された一室に閉じ込められていた時に比べたら、屋外に出て自由に動くことができるのは、とても幸せだった。
この日はいつもと同じように、中庭で成長した薬草を摘んでいると、雇い主の店主が声を掛けてきた。
「血止めの薬草を倉庫から運んできてくれ」
「はい」
売り物になる薬草が保管されている倉庫の鍵を店主から受け取り、灰かぶりは急いで倉庫へと向かい、血止めの薬草が入っている麻袋を一つ担いで、店舗へと急いだ。
「血止めが売れるなんて、どこかで大きな事故でもあったんですか?」
店舗には人はいなかったが、血止め薬が並んでいる棚は空になっていた。
「事故じゃない。若い娘が足を切っているだけだ」
「足を……切る?なぜそんなことを?」
おかしな流行だな……と思った灰かぶりだが、ファッションは往々にしておかしなものが流行ることもあるので、それなのだろうか?等と思っていると、
「首都で資産家の一族の娘が行方不明になっていてな」
店主は「灰かぶり」について、語り出した。そして、
「行方不明になった、その灰かぶり姫を探しているそうだ」
捜索隊が組まれていることを知った。
「へえ……」
「その捜索隊は、髪や瞳などの身体的な特徴ではなく、灰かぶり姫ならぴったりと合う靴を持って探しているらしい」
「え?」
捜索隊が探している灰かぶり姫当人である灰かぶりだが、自分にぴったり合う靴などというものに、心当たりがなかった。
「灰かぶり姫の足は、かなり小さいらしい」
なぜ若い娘たちが足を切るのか?理解できていなかった灰かぶりだが、店主の言葉で理解し、背筋がぞわりとした。
「お姫様ですからね」
灰かぶりは自分の足に視線を落とす。そこには、大きくはないが小さくもない、ごくごく平均的な足があった。
「そうだな。王都で靴を履かせてみたが、誰一人入らなかったそうだ。靴が小さくて。その情報が流れてきたから、捜索隊が来る前に少しでも足を小さくして……ということらしい」
足を切ってまでして、財産が欲しいのか……財産を放置して逃げた灰かぶりは、その狂気じみた執念に震えた。
「明日から、化膿止めも売れるだろうから、多めに店舗に置いておくか」
店主の言う通り、翌日から解熱剤や化膿止めが飛ぶように売れた。
そして、首都から捜索隊がやってきた。
灰かぶりは近づくつもりはなかったが、年の頃も合っているし、この街にやってきた時期も合うという噂を聞いた捜索隊が、わざわざ薬草屋までやってきた。
(……こいつ等、私の容姿を知らないんだ!)
灰かぶりを目の前にしても、捜索隊は慌てることはなく、淡々と靴を取り出し、履いてみるように指示する。
そこにあった靴は、
(これ、誰の靴?)
灰かぶりには、全く心当たりのない靴だった。
当然ながらサイズも合わず、帰る捜索隊を見送った。
そして財産の為に足を切った、もしくは切られた娘たちの中に、靴が合う者はいなかった。
捜索隊はまた別の街へと向かい、
「灰かぶり姫のお陰で、うちの店は大繁盛したな」
「そうですね」
「ボーナスやるよ」
「やった!」
かなり懐が潤った店主から、灰かぶりは臨時ボーナスを貰った。
(あの靴、本当にどこから……)
灰かぶりを連れ出した離宮の王子が修道院送りになったことについては、興味がないので知らない。
「今日は随分、血止めの薬草が売れているんですね」
灰かぶりが働いているのは薬草屋で、この店は広い中庭で、売れ筋で作り易い薬草を育てていた。
灰かぶりは、庭で作っている薬草への水やりや草むしり、収穫して乾燥などを担当していた。
重労働ではあるが、はめ殺しの窓に鉄格子まで追加された一室に閉じ込められていた時に比べたら、屋外に出て自由に動くことができるのは、とても幸せだった。
この日はいつもと同じように、中庭で成長した薬草を摘んでいると、雇い主の店主が声を掛けてきた。
「血止めの薬草を倉庫から運んできてくれ」
「はい」
売り物になる薬草が保管されている倉庫の鍵を店主から受け取り、灰かぶりは急いで倉庫へと向かい、血止めの薬草が入っている麻袋を一つ担いで、店舗へと急いだ。
「血止めが売れるなんて、どこかで大きな事故でもあったんですか?」
店舗には人はいなかったが、血止め薬が並んでいる棚は空になっていた。
「事故じゃない。若い娘が足を切っているだけだ」
「足を……切る?なぜそんなことを?」
おかしな流行だな……と思った灰かぶりだが、ファッションは往々にしておかしなものが流行ることもあるので、それなのだろうか?等と思っていると、
「首都で資産家の一族の娘が行方不明になっていてな」
店主は「灰かぶり」について、語り出した。そして、
「行方不明になった、その灰かぶり姫を探しているそうだ」
捜索隊が組まれていることを知った。
「へえ……」
「その捜索隊は、髪や瞳などの身体的な特徴ではなく、灰かぶり姫ならぴったりと合う靴を持って探しているらしい」
「え?」
捜索隊が探している灰かぶり姫当人である灰かぶりだが、自分にぴったり合う靴などというものに、心当たりがなかった。
「灰かぶり姫の足は、かなり小さいらしい」
なぜ若い娘たちが足を切るのか?理解できていなかった灰かぶりだが、店主の言葉で理解し、背筋がぞわりとした。
「お姫様ですからね」
灰かぶりは自分の足に視線を落とす。そこには、大きくはないが小さくもない、ごくごく平均的な足があった。
「そうだな。王都で靴を履かせてみたが、誰一人入らなかったそうだ。靴が小さくて。その情報が流れてきたから、捜索隊が来る前に少しでも足を小さくして……ということらしい」
足を切ってまでして、財産が欲しいのか……財産を放置して逃げた灰かぶりは、その狂気じみた執念に震えた。
「明日から、化膿止めも売れるだろうから、多めに店舗に置いておくか」
店主の言う通り、翌日から解熱剤や化膿止めが飛ぶように売れた。
そして、首都から捜索隊がやってきた。
灰かぶりは近づくつもりはなかったが、年の頃も合っているし、この街にやってきた時期も合うという噂を聞いた捜索隊が、わざわざ薬草屋までやってきた。
(……こいつ等、私の容姿を知らないんだ!)
灰かぶりを目の前にしても、捜索隊は慌てることはなく、淡々と靴を取り出し、履いてみるように指示する。
そこにあった靴は、
(これ、誰の靴?)
灰かぶりには、全く心当たりのない靴だった。
当然ながらサイズも合わず、帰る捜索隊を見送った。
そして財産の為に足を切った、もしくは切られた娘たちの中に、靴が合う者はいなかった。
捜索隊はまた別の街へと向かい、
「灰かぶり姫のお陰で、うちの店は大繁盛したな」
「そうですね」
「ボーナスやるよ」
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(あの靴、本当にどこから……)
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