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1年前に婚約破棄と、冤罪で国外追放を宣言した元婚約者がいきなり現れた
後編
俺は邸から逃げ出すことに成功した!
深夜、いつもメイド達た噂話をしている場所から、俺に呼びかける声があった。
その声の主は、俺を逃がしてくれると言い、邸から脱出して隣国まで行けるように、手筈を整えてくれた。
名前を聞いたが「昔からこの邸に仕えている者です」としか答えなかった。
更に「公爵家の嫡男がこんな目に遭っているのを、見過ごせなくて」と、協力した理由について語ってくれた。
昔から公爵家に仕えている者ならば、この働きも納得できる。
きっとその者も、俺が公爵になることを望んでいるのだろう!
俺はその者の期待に応えるためにも、隣国でブランシュに再会し、今までのことを謝罪すれば、
きっと俺とよりを戻してくれるはず。
隣国までの旅は辛いものだった。
休憩は少なく、安宿にしか泊まれないが、それでも宿に泊まれる日はよかった。宿のないところで、夜を迎えると野宿しなくてはならない。
馬車の中で身を縮こまらせ、朝まで耐える辛い日々。
食事は一日二食、補給が出来ない時は一食だけの日もあった。
馬車の乗り心地も悪く、着替えも滅多にできない。
そんな厳しい五日間を過ごし、やっと隣国に入った。だがそこから、予想外に時間がかかった。ブランシュがいる隣国の王都にたどり着く迄に、半年もかかったのだ。
「検問がしかれているんです」
不法入国している身なので、検問に引っかかるのは困る。ということで、検問を避けて旅をした結果、半年もかかった。
無事に王都にたどり着いてから、馭者が拠点となる宿をとった。旅の途中と同じく安宿だったが、
「高価な宿は身元保証人が必要ですし、公爵家が捜索隊を出していたらまっさきに探しに来ますから。その点、安宿に泊まっているとは考えないでしょうし、数も多いので」
馭者の言葉はもっともだった。
俺はそこで、ブランシュが夜会に参加するのを待った。
俺に婚約破棄を突きつけられたから、夜会に出席するのにためらいがあるんだろう。
そして俺は、協力者の手引きのもと、約一年ぶりにブランシュに会うことができた。
俺は自分が騙されていたこと、このままでは公爵家の嫡男ではなくなってしまうことを話した。
そして俺は会場から引きずり出された。
「俺は公爵家の嫡男だぞ!」
「ああ、はいはい」
そのまま粗末な馬車に押し込まれた。ブランシュの所へむかう馬車も乗り心地は良くなかったが、いま乗せられた馬車はそれよりも、ずっと酷くて酔ってしまった。
「しっかり働けよ」
その言葉と共に馬車から乱暴に降ろされた。
「こ、ここは……」
引きずり出され地面に体を打ちつけてしまった俺は、周りを見回す。そこには薄汚れた恰好をした者たちが、生気の無い顔で動き回っていた。
「強制労働施設だ」
俺を引きずり降ろした男の言葉に耳を疑った。
公爵家の嫡男である俺が、強制労働施設だと!
「どういうつもりだ!」
「さあ?連れていくように命じられただけだから」
男は俺の言葉を無視して馬車を走らせた。
「おい!まて!俺を乗せろ!」
叫びながら追いかけたが、当然追いつくことができず、俺はその場に残された。
「一体、なにが……きっとこれは、間違いだ……なにかの、間違いだ……きっと」
呆然と立ち尽くしていると、
「あ、お前!」
いきなり老け込んだ中年女性が指を指し、足を引きずりながらこちらへとやってきて、俺を叩きはじめた。
「なんだ?」
「お前のせいで!お前のせいで!おまえが!」
ずっと殴ってくる中年女性が鬱陶しく、手を払いのけたら体勢を崩し、石に頭をぶつけた。
中年女性は数回、大きく痙攣して、その後泡を吹き出した。
打ち所が悪くて死んだと、施設の責任者から聞かされた。
「痴情のもつれで殺害っと。刑期は十年くらい追加しておくか」
中年女性の殺害理由が事故ではなく、痴情のもつれと言われて、俺は抗議したのだが、
「マルロー伯爵令嬢アンジェリクだよ、あれ」
部屋の隅に粗末な布を掛けて置かれている中年女性が、アンジェリクだと聞かされた。
「え……」
「ここの労働で老け込んだだけ」
俺は責任者の言葉を理解するのに、時間がかかったが、働き始めてすぐに解った。あまりに過酷な労働で、老け込んでいくのを、身をもって知った。
「そういえば、あいつらは……」
労働を初めてすぐの頃、あの時邸から俺を脱出させてくれた召使いや、隣国まで連れていってくれた馭者、そして夜会会場へと手引きしてくれた者たちはどうなった?
俺がこうして捕まっているのだから、奴等もきっと捕らえられたここにいる筈だと探したが、ここにはいなかった。
どれだけの歳月が経ったのか解らないが、俺はまだ生きている。
何年か前に俺は作業中、事故に遭って片腕を失ったが、治療により生きながらえた。同じ事故に巻き込まれたヤツは、治療を受けられずに死んだ。
その時俺は、自分が公爵家の人間だから治療を受けられたのだと思っていた。だが、ある時気付いた。
ここには刑期があることを。
そして俺は、アンジェリクを殺害して刑期が十年追加されたことを。そしてこんなところで生きていても、苦しいだけであることを。
俺はここで、餓死することもなければ、凍死することもなく、病死もしなければ、大怪我を負ったが治療が施された。
俺はここで生き延びている。だが生き延びることは幸せなのか?
俺は怪我や病気の治療を受け、最低限の食事を与えられ、アンジェリクを殺害し追加した刑期分を務めたあとどうなるのか……それは、きっと……
深夜、いつもメイド達た噂話をしている場所から、俺に呼びかける声があった。
その声の主は、俺を逃がしてくれると言い、邸から脱出して隣国まで行けるように、手筈を整えてくれた。
名前を聞いたが「昔からこの邸に仕えている者です」としか答えなかった。
更に「公爵家の嫡男がこんな目に遭っているのを、見過ごせなくて」と、協力した理由について語ってくれた。
昔から公爵家に仕えている者ならば、この働きも納得できる。
きっとその者も、俺が公爵になることを望んでいるのだろう!
俺はその者の期待に応えるためにも、隣国でブランシュに再会し、今までのことを謝罪すれば、
きっと俺とよりを戻してくれるはず。
隣国までの旅は辛いものだった。
休憩は少なく、安宿にしか泊まれないが、それでも宿に泊まれる日はよかった。宿のないところで、夜を迎えると野宿しなくてはならない。
馬車の中で身を縮こまらせ、朝まで耐える辛い日々。
食事は一日二食、補給が出来ない時は一食だけの日もあった。
馬車の乗り心地も悪く、着替えも滅多にできない。
そんな厳しい五日間を過ごし、やっと隣国に入った。だがそこから、予想外に時間がかかった。ブランシュがいる隣国の王都にたどり着く迄に、半年もかかったのだ。
「検問がしかれているんです」
不法入国している身なので、検問に引っかかるのは困る。ということで、検問を避けて旅をした結果、半年もかかった。
無事に王都にたどり着いてから、馭者が拠点となる宿をとった。旅の途中と同じく安宿だったが、
「高価な宿は身元保証人が必要ですし、公爵家が捜索隊を出していたらまっさきに探しに来ますから。その点、安宿に泊まっているとは考えないでしょうし、数も多いので」
馭者の言葉はもっともだった。
俺はそこで、ブランシュが夜会に参加するのを待った。
俺に婚約破棄を突きつけられたから、夜会に出席するのにためらいがあるんだろう。
そして俺は、協力者の手引きのもと、約一年ぶりにブランシュに会うことができた。
俺は自分が騙されていたこと、このままでは公爵家の嫡男ではなくなってしまうことを話した。
そして俺は会場から引きずり出された。
「俺は公爵家の嫡男だぞ!」
「ああ、はいはい」
そのまま粗末な馬車に押し込まれた。ブランシュの所へむかう馬車も乗り心地は良くなかったが、いま乗せられた馬車はそれよりも、ずっと酷くて酔ってしまった。
「しっかり働けよ」
その言葉と共に馬車から乱暴に降ろされた。
「こ、ここは……」
引きずり出され地面に体を打ちつけてしまった俺は、周りを見回す。そこには薄汚れた恰好をした者たちが、生気の無い顔で動き回っていた。
「強制労働施設だ」
俺を引きずり降ろした男の言葉に耳を疑った。
公爵家の嫡男である俺が、強制労働施設だと!
「どういうつもりだ!」
「さあ?連れていくように命じられただけだから」
男は俺の言葉を無視して馬車を走らせた。
「おい!まて!俺を乗せろ!」
叫びながら追いかけたが、当然追いつくことができず、俺はその場に残された。
「一体、なにが……きっとこれは、間違いだ……なにかの、間違いだ……きっと」
呆然と立ち尽くしていると、
「あ、お前!」
いきなり老け込んだ中年女性が指を指し、足を引きずりながらこちらへとやってきて、俺を叩きはじめた。
「なんだ?」
「お前のせいで!お前のせいで!おまえが!」
ずっと殴ってくる中年女性が鬱陶しく、手を払いのけたら体勢を崩し、石に頭をぶつけた。
中年女性は数回、大きく痙攣して、その後泡を吹き出した。
打ち所が悪くて死んだと、施設の責任者から聞かされた。
「痴情のもつれで殺害っと。刑期は十年くらい追加しておくか」
中年女性の殺害理由が事故ではなく、痴情のもつれと言われて、俺は抗議したのだが、
「マルロー伯爵令嬢アンジェリクだよ、あれ」
部屋の隅に粗末な布を掛けて置かれている中年女性が、アンジェリクだと聞かされた。
「え……」
「ここの労働で老け込んだだけ」
俺は責任者の言葉を理解するのに、時間がかかったが、働き始めてすぐに解った。あまりに過酷な労働で、老け込んでいくのを、身をもって知った。
「そういえば、あいつらは……」
労働を初めてすぐの頃、あの時邸から俺を脱出させてくれた召使いや、隣国まで連れていってくれた馭者、そして夜会会場へと手引きしてくれた者たちはどうなった?
俺がこうして捕まっているのだから、奴等もきっと捕らえられたここにいる筈だと探したが、ここにはいなかった。
どれだけの歳月が経ったのか解らないが、俺はまだ生きている。
何年か前に俺は作業中、事故に遭って片腕を失ったが、治療により生きながらえた。同じ事故に巻き込まれたヤツは、治療を受けられずに死んだ。
その時俺は、自分が公爵家の人間だから治療を受けられたのだと思っていた。だが、ある時気付いた。
ここには刑期があることを。
そして俺は、アンジェリクを殺害して刑期が十年追加されたことを。そしてこんなところで生きていても、苦しいだけであることを。
俺はここで、餓死することもなければ、凍死することもなく、病死もしなければ、大怪我を負ったが治療が施された。
俺はここで生き延びている。だが生き延びることは幸せなのか?
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