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4章.プレジュ王国

47.どうして

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「召喚契約って……ちょ、ちょっと待ってください……!」
「――待ちませんよ。こう見えて、私は怒っています。いいですね?」

 壁際に追い詰められ、大きな両手が俺を閉じ込めている。
 王様の黄金の瞳は、ひどく不機嫌そうに俺を見下ろしていた。
 
 俺と王様が召喚契約をする。
 つまり、最後の一枠が埋まってしまうということだ。
 ……どうしよう。頭が回らなくて判断ができない。壁に追いつめられて、逃げ場もなかった。
 王様は、黙っている俺を見下ろしたまま、呆れたように、ため息を吐いた。

「――あの三人が殺されてもいいのですか?」

 突然の脅しに身体がびくりと震える。
 ――それは絶対にだめだ。そこを脅されると、俺は何も逆らえなくなってしまう。
 ごくりと唾を飲んで、おそるおそるうなずくと、すぐに顎をとられて上向かせられる。

「ん……ッ」

 くちびるをふさがれる。
 触れるだけじゃない。まるで、噛みつくみたいなキスだった。
 俺が王様の召喚獣になったときもキスをされたけれど、そのときと全然違う。思わず顔を逃がそうとしたけれど、顎を掴まれて戻される。
 感情を滅多に露わにしないあの王様が、今は苛々しているように感じた。

「……あなた、拒絶しているでしょう」
「は? し、してない……」
「嘘です。契約できません。心の中で嫌だと思っているからできないのでしょう」
 
 そんなことを言われて戸惑ってしまう。
 もちろん嫌だと思ってる。当たり前だ。あの三人を人質にして、脅されているような奴と進んで契約なんてしたくないに決まってる。
 黙ってうつむくと、王様は小さく息を吐いた。

「こんなことで、あなたに手を出したくなかったのですが」
「え……?」
「あなたが言うことを聞かないのですから、仕方ありませんね」

 王様が怒ったように言ってすぐに、腕を強く捕まれる。

「は、なに……?」

 まばたきした瞬間に移動していた。
 ベッドに沈まされて、おそろしく整った顔が俺を見下ろしている。大きな手に頬を触れられて、びくりと身体が震える。
 まさか、と思う。そんなはずない。いくら俺の召喚契約の枠を潰したいからといって、王様が俺なんかを襲うはずがない。
 王様は俺をじっと見下ろしたまま、微笑んだ。
 それから、ゆっくりと口を開く。

「いい子にしていたら、終わりますから。ね?」
「は……?」
「なるべく痛くないように気をつけます。力を抜いていてくださいね」
「な、なに……っ、やめ」

 くちびるが塞がれる。
 固く口をつぐんでいたのに、強引にぬるりとしたものが口の中に入ってくる。
 驚いて暴れようとしたら、するりと手首をつかまれて押し付けられる。触れられている手は驚くほど冷たかった。
 なんで。どうして。
 王様が。あの王様が俺に、こんな。

「ん……っ、んんっ、やだ、ん……っ」

 俺の舌に合わさって吸い上げてくる。
 鼻をつままれて息ができず、口を開けるとさらに深く入ってきた。口の中を舐められ、強く吸い上げられて、飲みきれない唾液が頬を伝っているのが分かる。目尻には生理的な涙がじんわりと浮かんだ。
 どれだけそうしていたか分からない。
 やっとくちびるを離した王様は、顔を上げて微笑んだ。

「かわいい、ですね」
「も……っ、いい、やめて」
「駄目です。まだ契約できません」
「す、する……するから、やめて……」
「私も知りませんでしたが、この能力は心の中で拒絶をしている時点で、スムーズに契約は結べないようですね。ひどいことはしませんので、力を抜いていてください」
 
 話ができなくて、茫然とする。
 サリエニティでカルナさんに襲われたときよりも、ずっと怖い。だって、あのときは手段があった。奥の手があったのだ。
 でも今は、どうしたらこの状況を切り抜けられるのか、少しも分からない。
 漠然とした恐怖が襲ってきて、俺にのしかかっている王様を思い切り押す。けれど身体はびくとも動かずに、両手に布が巻き付いて頭上でベッドの支柱に拘束される。
 両手が使えなくなってしまった。
 もう、何もできない。

「かわいそうに。震えています。はじめてだから、怖いですよね」

 王様は眉を下げて、けれどどこか楽しそうに言いながら俺の頬に触れる。
 身体が勝手にがたがたと震えている。
 圧倒的な強者に拘束されているのだ。もう逃げられないって、悟ってしまった。

「こ、これ……嫌だ、とって」
「でもあなたが暴れると傷つくかもしれないでしょう。我慢してくださいね」
「すぐ治るから……いらない、とって……こわい、やだ」
「大丈夫ですよ。ゆっくりしますからね」

 話が通じなくてぞくりとする。何を考えているのか分からない黄金の瞳が恐ろしくて、俺は目を反らした。
 王様の細い指が俺の服に手をかける。ゆっくりとていねいに脱がされて、シャツを広げられる。
 ズボンに手をかけられたとき、悲鳴が漏れる。膝を閉じて首を振ったけれど、簡単に広げられて、脱がされてしまった。
 脱がされてすぐに、能力で服を消される。
 一糸まとわぬ姿にされて、王様が俺をじっと見下ろしていた。

「きれいな身体……傷もひとつもなくて……」

 絞り出すような声だった。
 確かめるように俺の身体に触れはじめる。くすぐったくて、身をよじった。

「ん……っ、んんっ」

 またくちびるをふさがれて、舌が入ってくる。
 大きな手のひらが俺の身体を撫でて、乳首に指が当たる。思わずびくんと反応すると、王様がそこばかり触ってきた。
 冷たい指が引っ掻いたりつまんだりしている。身体は勝手にびくびくと震えて、くぐもった声が王様の口の中に飲み込まれていく。

「さ、触らないで……っ、そこ、やだ」
「でも反応しています。ほら、ここ」
「あ……っ、あっ、やめ、さわんな……っ」

 性器を握られて擦られて、悲鳴じみた声が漏れた。
 どうしてこの人は、俺にこんなことができるのか。じんわりと浮かんだ涙で睨んだけれど、王様は楽しそうに笑うだけだった。

「もっとリラックスしてくださいね。そうだ、一回射精しましょうか」
「は……っ、あっ、ああ、っ、はなして、はなしてっ、やだ、あ」

 性器を握っている大きな手が、射精を促すような動きになる。
 上下に擦られて、先端をぐりぐりと刺激されている。俺の口からはまともな言葉が出てこずに、首を振るだけしかできない。
 先走りが漏れて、王様の美しい手を汚している。なぜこの人は男の性器なんかに触れられるのか。

「ほら、暴れないでください。一緒に触ってあげますからね」
「ひ……っ、あっ、あ……っ」

 乳首をがりがりと引っ掻かれて、身体が跳ねる。
 追い詰めるような動きをされて、情けないことに射精してしまった。
 ずいぶん抜いていなかったせいで、長い射精が続いている。精液が腹に落ちる感覚がした。
 力ががくんと抜けてベッドに沈む。荒い呼吸を整えていたら、俺を見下ろしている王様はどこか興奮したように笑っていた。

「よくできましたね。ではあと二、三回、抜きましょうか」
「は……? あっ、やめ、触らないで……っ、イった、イったばかりだから、あっあ」

 再び性器を擦られて、身体中を愛撫される。
 なんで、どうしてこんなことをするんだ。
 召喚契約を結ぶだけなら、こんなこと必要ないのに。早く俺を犯せばいい。こんな恥ずかしいことをされるぐらいなら、そっちの方がいいのに。
 あっという間に上り詰められて、またイきそうになってしまう。
 くちびるに飲み込まれて、キスをされ、手の動きを早くされる。耐えられなくて俺はまた、出してしまった。快感に身体がぶるぶると震えて、出した声は王様の口の中に飲み込まれていった。
 

 
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