双子の姉の身代わりという人生から逃げるため、空飛ぶ絨毯作ります

ねり梅

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48 サバラン視点

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手紙には正式名称で署名されていた。嘘を書いていないことを示す証だ。嘘を書けば契りとしてそれ相応の報いを受けなければならない。


「サバラン様、どうなさいました?お顔が険しいですが」
「あぁ。ハニーニ国の王は既に逝去しているという。が原因だそうだ」
「「「え?」」」


3人とも声を失った。国王が病で臥せっていることさえも知らなかったのだから当たり前だ。ハニー二国の中では珍しく反戦の立場だった王。彼のおかげでここ十数年は攻め込まれることがなく平和だった。


「本当に病とは思えませんね」
「国王の改革に反対の者も大勢いたでしょうら、何者かの仕業かもしれません」
「反戦の立場を貫かれた王は貴重な存在でしたのに。我らにとっては大変な痛手になるでしょう」


国王は、鉱山資源の発掘量が減少していることを突き止め、10年から20年で枯渇すると予測していた。鉱山資源に変わる産業として魔法の研究や冬の手仕事であった織物業に力を入れている。他国から綿や絹を購入し、服飾品に加工して売るというのはな容易に浸透していった。商人の出入りが増え、山道や橋を整備する必要が出てきた。仕事の無くなった男達をその工事に割り当てれば丁度いいと考えたのだ。が、現実はそううまくいかなかった。



嘆く3人に唸るように頷いて肯定する。


「あぁ。ともかく、突然の事態に備えて守りを固めなければならんな。魔物の襲撃を警戒して準備していたが回復薬の量も備蓄も足りないだろう。国境の守りも怪しまれ無い程度に手厚くしないといけないな」    


3人の表情が引き締まるのを見ながら、やらなければならないことがどんどん増えていくな、と思わず苦笑いしてしまう。


あれこれと役割分担を相談するのを聞き流しながら、手紙に目を落とす。相変わらず耳が早い。一体どこから情報を集めてくるのか。


旧ブラウニ国に関する話なんて初耳だ。ブラウニ国が我が国に併合されたのは、確か70年から80年前だ。当時、黒い花が咲いていたというのが気になる。


すぐにでも調べたいが、時間的に厳しい。溜息をついてると、マシューがおずおずと話し始めた。


「あの、私からも報告をさせて頂きます。裁判前日の深夜に逃亡する時にサミュエルの提案で人払いのために、鐘を鳴らすのを早めて貰えるよう担当の男に交渉しました。囮の方も準備が出来ており、背格好のよく似た女に港から船に乗るよう指示しております。あとは当日上手くいくことを祈るだけかと」


自信満々らしく誇らしげな顔をしているマシュー。上手くいっている時ほど不安が押し寄せてくるのは心配性な性分だからだろうか。


そもそもなぜドレーン伯爵は、シエルを犯人にしたてあげて放置しているのだろうか。ずっと考えていたが、ビオレソリネス公爵との繋がりが明るみになったことで、狙いが読めてきている。私と取引するためか、罠にかけるためかのどちらかだろう。


後者だとすると、あえて泳がせて逃亡したシエルと私が対面している、言い逃れ出来ない場面で、声をかけてくるはずだ。それはどこか。会合に忍び込めば何か掴めるだろう。


「マシューご苦労だった。引き続き頼んだ。さて、ジルバと私でドレーン伯爵達の会合する店に忍び込むぞ」
「しかし、そうするとザラメ村まで戻れるかぎりぎりになるかと思います」


ジルバが机に地図を広げ始めた。近くに寄り地図を覗き込む。赤で印をつけられたルートが逃走用のルートだろう。この青い線は何だろう。


「青い線は、風の影響でズレた場合のルートです。どれほどの精度で向きを調整できるのか定かではなかったので、パブで別れた後、船乗り達に風読みを教えて貰いに行ったんです。明日の夜は普段と違って、海風が強烈に吹きつけるそうです」
「んー、信憑性はどうなんだ?」
「海に出た時の潮の流れ、渡り鳥の様子から嵐の前触れで強風になると判断しているとのことでした」
「そうか。それで、青い線のルートの方へズレるとすると、シエルと合流することもザラメ村に朝までに辿り着くのも難しいということか」
「サミュエルから風の魔道具スクパを用意して欲しいと頼まれていたんですが、シエルお嬢様も風を考慮されているのではないですか?」


スクパか。弱い巻き風を起こしてどうするつもりなんだ。カマロンも同じ考えだったらしく、困惑した表情で言った。


「スクパでは航路を変えられるほどの威力はないでしょう。シエルお嬢様の意図は別ににあるのでは?」
「どちらにせよ、朝までにザラメ村に到着する方法を検討しなければなりませんね・・・・・・。マシュー、スクパはすぐに用意できそうですか?」
「えぇ、多少お金を弾めば確実に入手出来ます」


サバランは深く頷く。マシューはすぐに残金を確認し始めた。サバランも、ポケットから袋を取り出し中をあらためる。


「ジルバ、フォニで移動したら間に合うのではないか?」
「フォニって、あの巨大鳥で移動されるおつもりですか!?」


顔を上げると、予想通りジルバがぎょっとした表情をしている。フォニは愛称で、国王と次期国王のみに仕える巨大な鳥のような魔獣だ。鳥の王様として語り継がれているスパルナである。


「次期国王は誰かはっきり示せる上に、時間も魔力も消費せずに済む。効率的だと思わないか?」
「はぁ。いえ、そうですが・・・・・・」
「フォニなら、風も起こすことができる。シエルの空飛ぶ絨毯の軌道修正も可能だろう」
「それは大変心強いでしょう。ジルバ、何を躊躇っている?これほど好条件な魔獣をなぜ使いたがらない?」


珍しくカマロンがジルバにまともなことを物申している。武術以外にも興味を持ってくれたのかと感心していたが、違った。肩がガックリと落ちる。


「それに、鳥の王様なら手合わせしてみたくなるであろう?はやくお目にかかりたいものだ!」
「カマロン、貴方は国の守護獣、宝ともいえるスパルナを何だと思っているんです!」
「そうですよ!それに巨大鳥と手合わせして怪我でもしたらどうするんですか!」


ジルバとマシューの説教が延々と続く。口を挟もうにも、タイミングが掴めない。一言でも発したら何倍にもなって返ってきそうな空気に頭が痛くなってきた。


サバランはこめかみを押え、料理人に合図を送り、朝食を運ばせることにした。まだまだ今日が始まったばかりだというのに、どっと疲れが肩にのしかかる。


カマロンが給仕の途中で食べ始めたことで、2人の小言が更に長引いたのは言うまでもない。


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