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64 サバラン視点
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サバランが大聖堂で司教から話を聞いていると、ジルバから風の便りの魔法で連絡が届いた。至急城へ戻ってきて欲しいという。
もう少し聖典について調べたかったが、知りたいことは全て知れたので戻ることにした。移動しながら、考えを巡らせる。移動中は考えが捗るのだ。
ロー司教は品行方正で信心深いことが買われて名家の貴族の養子となり、最年少で司教になった。壮麗な顔でミトラを頭に被り、ローブを纏った姿は聖典に出てくる英雄のようだった。最も頭のキレの良さも英雄に負けず劣らずの評判の良さだった。
実際、その通りだった。彼に、聖典の黒い月の日という記載について尋ねてみた。かつては紫と黒を同一視していたという説があることや、数ヶ月に1度紫の月になる要因と考えられていることを端的に話してくれた。
紫の月は、自然にある魔力が高まった時にその影響を受けるから、精霊祭りが行なわれるからといった理由が考えられているという。
(精霊祭りか・・・・・・)
急ぐか。ゆったりと羽を動かしているフォニに、合図した。緩慢な動きに苛立っていたらしく、振り落とさんばかりに急にスピードをあげた。慌てて手綱を握る。
巨大な鳥の魔獣が強く羽ばたいたことで突風がおこり、近くにいた小鳥たちがぎょっとしたように離れていった。
「まったく、」
フォニは不満気に低く唸った。背中をそっと撫でてやる。これでも十分速いと感じるが、フォニはまだまだ速度を上げたいようだった。いいでしょう?というように数度羽をばたつかせ、嘴をカタカタさせる。
「分かったよ、全速力で頼む」
サバランは声を張り上げると、鞍にピッタリと身体をよせた。合図するまでもなく、フォニは羽を全て広げ、大きく羽ばたいた。そして真っ直ぐ飛翔する。疾風のごとく速さで景色は一瞬で流れ去る。日中だというのに、肌寒く感じ、震えが止まらなくなった頃、ようやくフォニがゆったりと滑翔しはじめた。羽を広げてスーッと風に乗るのは気持ちが良いのかご機嫌だ。
庭に降り立つようにフォニに指示して、サバランは身体を起こした。空はどこまでも青く綺麗だった。ふっと口元が緩む。視線を街並みに向ける。
「あれは?」
フォニに指示して、高度を下げてもらった。近づくとやはり、大勢が集まっていた。全員武装しているようだ。しかも南へ向かって進んでいる。
胸がざわついた。武装集団が向かう先には、西の国境門か港しかない。何が起きているのか。きょろきょろと集団を観察していると、中に駐屯兵が混じっていることに気がついた。
「まさか、万霊の森近くの駐屯所から?」
誰の指示なのか、どうして南へ向かっているのか。疑問ばかり浮かんでくる。焦る気持ちを抑え、とりあえずジルバと合流すべく城に戻ることにした。
(くそ、空中に長居しすぎたな)
フォニに、高度を一気に上げさせ、雲を潜り抜ける。ホバリングで疲れている中で無理をさせたくなかったが、急を要するから仕方あるまい。
サバランはフォニに全速力で城へ向かわせた。庭に辿り着き、フォニから飛び降りると、森へ向かって飛んでいってしまった。きっと水浴びして餌を探しに行くのだろう。
話をするとしたら自室だろうと廊下へ足を踏み入れたところ、ジルバが誰かを伴ってそこに立っていた。年老いた老婆だった。
もう少し聖典について調べたかったが、知りたいことは全て知れたので戻ることにした。移動しながら、考えを巡らせる。移動中は考えが捗るのだ。
ロー司教は品行方正で信心深いことが買われて名家の貴族の養子となり、最年少で司教になった。壮麗な顔でミトラを頭に被り、ローブを纏った姿は聖典に出てくる英雄のようだった。最も頭のキレの良さも英雄に負けず劣らずの評判の良さだった。
実際、その通りだった。彼に、聖典の黒い月の日という記載について尋ねてみた。かつては紫と黒を同一視していたという説があることや、数ヶ月に1度紫の月になる要因と考えられていることを端的に話してくれた。
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「まったく、」
フォニは不満気に低く唸った。背中をそっと撫でてやる。これでも十分速いと感じるが、フォニはまだまだ速度を上げたいようだった。いいでしょう?というように数度羽をばたつかせ、嘴をカタカタさせる。
「分かったよ、全速力で頼む」
サバランは声を張り上げると、鞍にピッタリと身体をよせた。合図するまでもなく、フォニは羽を全て広げ、大きく羽ばたいた。そして真っ直ぐ飛翔する。疾風のごとく速さで景色は一瞬で流れ去る。日中だというのに、肌寒く感じ、震えが止まらなくなった頃、ようやくフォニがゆったりと滑翔しはじめた。羽を広げてスーッと風に乗るのは気持ちが良いのかご機嫌だ。
庭に降り立つようにフォニに指示して、サバランは身体を起こした。空はどこまでも青く綺麗だった。ふっと口元が緩む。視線を街並みに向ける。
「あれは?」
フォニに指示して、高度を下げてもらった。近づくとやはり、大勢が集まっていた。全員武装しているようだ。しかも南へ向かって進んでいる。
胸がざわついた。武装集団が向かう先には、西の国境門か港しかない。何が起きているのか。きょろきょろと集団を観察していると、中に駐屯兵が混じっていることに気がついた。
「まさか、万霊の森近くの駐屯所から?」
誰の指示なのか、どうして南へ向かっているのか。疑問ばかり浮かんでくる。焦る気持ちを抑え、とりあえずジルバと合流すべく城に戻ることにした。
(くそ、空中に長居しすぎたな)
フォニに、高度を一気に上げさせ、雲を潜り抜ける。ホバリングで疲れている中で無理をさせたくなかったが、急を要するから仕方あるまい。
サバランはフォニに全速力で城へ向かわせた。庭に辿り着き、フォニから飛び降りると、森へ向かって飛んでいってしまった。きっと水浴びして餌を探しに行くのだろう。
話をするとしたら自室だろうと廊下へ足を踏み入れたところ、ジルバが誰かを伴ってそこに立っていた。年老いた老婆だった。
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