【R18】Hide and Seek

Nuit Blanche

文字の大きさ
4 / 37

猛獣に狙われて4

しおりを挟む
「マジかよ……あいつ、イケメンのくせに下手なのか。残念なやつ」

 ぽつりと光希は零すが、希彩は彼がそんな風に言われるのが嫌だった。恐らく遼もそういったことが嫌だったのだと希彩は考えていた。

「お互い初めてだったから……だから、仕方なかったんだよ」

 初めては痛いと聞いていたから希彩も覚悟していた。
 遼もそれこそ先程の光希のように『優しくする』『努力する』と言って希彩を気遣ってくれた。けれど、我慢しようと、受け入れようと思っていたのに希彩は泣いて彼を困らせてしまった。互いに未熟だったのだ。否、自分が悪いのだと希彩は今でも遼に対して申し訳なく思い続けていた。

「でも、それで終わっちゃったんでしょ?」

 体を重ねて数日、急に冷たくなって、一方的に別れようと言われて、何も言えずに希彩は終わりを受け入れるしかなかった。

「ってか、それ、いつのこと?」
「中学の時……」
「そんな話聞いたことないな。俺、この前、あいつの前で希彩ちゃんの話ししたけど、無反応だったし」

 光希が何を言ったのか気になるものの、希彩は聞くのが怖かった。遼の反応にしてもそうだ。
 きっと彼は自分の存在を忘れようとしているのかもしれない。同じ学校を選んだことを後悔しているのかもしれない。そうは思っても、もう過去のことだ。

「みんなに隠れて付き合ってたから……長く続かなかったし……」

 当時から遼は人気者で、いつも周りを女子が取り囲んでいた。希彩はそこに加われるはずもなく、彼と関われたのは偶然だった。そんな状況で希彩がいじめられないようにと遼は配慮して内緒の付き合いをしていた。だから、デートもどこかに遊びに行けるわけでもなく、家で映画を観たり話をしたりをするぐらいだった。それでも、希彩は幸せだったのだ。あの時までは。

「あのさ、まさかと思うけど、キスも歯が当たった?」

 全部見抜かれてしまうのかと思いながら希彩は頷く。あと、どれだけ質問に答えれば良いのか。

「そっか、知らなくて怖い思いさせたね」

 ごめんね、とようやく指が抜かれ、頭が撫でられる。
 それは不思議と嫌ではなく、けれど、やはりこんな状況が終わることを希彩は願っていた。もうこんなことしないでくれるのなら、また関わりのないクラスメートに戻れるなら、それで良かった。

「お詫びに俺が本当のキスと気持ち良いってこと、教えてあげる」

 光希が優しく微笑み、顔が近付く。その目に吸い込まれてしまいそうで、希彩は反応ができないまま唇が重なった。
 一度離れてもう一度、何度も唇が触れる。香水の匂いが頭を麻痺させて、酸素を取り込もうとした唇の隙間から舌が入り込み、まるで生き物のように、翻弄される。
 こんなキスを希彩は知らなかった。藁に縋るように光希のシャツを掴んでも彼はやめようとしない。
 どうしたら良いのかわからず、希彩は目を閉じてされるがままになる。その目に滲む涙は先程までとは違い、生理的なものだ。
 やっと唇が離れ、涙を舐められた時には希彩はもうわけがわからない状態だった。
 そんな中、光希がもぞりと動く。

「な、何して……!」

 力なく開かれた足の間、花弁を指で開き、顔を近付ける光希に希彩は驚く。

「気持ち良いこと教えてあげる」
「み、見逃してくれるって……」
「うん。だから、希彩ちゃんがイッたら終わり」
「そんな……!」
「じゃないと、辛いと思うよ?」

 そう言って笑って、光希は蜜に濡れた秘部に舌を這わせる。

「汚い、から……!」

 そんな場所を舐められるなど信じられない。しかし、力の抜けた希彩の体はビクビクと震えるばかりで光希を拒む事ができない。

「希彩ちゃん、ちゃんと声抑えてね」
「え……あっ、んぅっ!」

 言われた意味がわからなかった希彩だが、次の瞬間、花芽に舌先が触れ、咄嗟に掌を口に当てる。

「ふっ、んっ、んぁっ」

 再び指も挿入され、襲いかかってくる容赦のない感覚はこれまで希彩が感じたことのない強い快楽だった。

「ほら、こっちは我慢しないでイッて」
「んんぅっ!!」

 花芽に吸い付かれ、何かが駆け上がるような、暴発する感覚に恐怖しながら、それを止めることはできなかった。

「はぁ……んっ!」

 ビクビクと体が震え、荒い呼吸を繰り返す間、指が抜かれ、それさえ絶頂の余韻に飲まれる希彩には強い刺激だった。

「今のがイクってこと。大丈夫、希彩ちゃんの体は悪くない。気持ち良くないのは男の方の問題」

 ぼんやりと光希の声を聞きながら希彩はただ天井を見上げる。ひどく恐ろしい感覚だった。
 ほっとしたような、悲しいような気分に浸るところ視界に光希の顔が入り込む。

「今度する時は、もっといっぱいイかせてあげるからね」
「今度なんて……」

 もう二度と彼とこんなことはしたくない。そう希彩は思うのに光希は笑む。それが優しく見えてしまうのはなぜだろうか。

「俺、希彩ちゃんのこと、好きになっちゃったみたい」

 さらりと衝撃的な告白は爆弾が投下されたかのようだった。

「冗談はもうやめてよ……」

 声を上げて泣き出したくなるほどに希彩は混乱していた。頭はパンク寸前だ。処理能力の限界を超えようとしている。

「冗談じゃない。本気。だから、今、君を抱くのをやめることにする」

 ティッシュで濡れた秘部を拭われ、下着を履かされ、乱れた制服を直されるのは恥ずかしかったが、希彩はただされるがままだった。
 しかし、本当にこれ以上の行為をされることがないのだと、ほっとしていた。

「必ず落とすから覚悟してね」
「そ、そんなの困る……!」
「抱くのは希彩ちゃんの心を手に入れた時でいいから」

 じゃあね、と額にキスを落とされ、希彩は呆然とする。

「必要ないものは没収するね」

 これ以上の抗議は聞かないとばかりに離れる光希の手の中には希彩の眼鏡があった。

「か、返して!」

 眼鏡をちらつかせながら光希は笑って保健室から出て行く。
 追いかけるどころか、慌てて起こした希彩の体はまたベッドに倒れていく。

 結局、その日、希彩は早退することになり、眼鏡をしてないことを指摘されると寝惚けて落として壊してしまったと言い訳するしかなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

交際マイナス一日婚⁉ 〜ほとぼりが冷めたら離婚するはずなのに、鬼上司な夫に無自覚で溺愛されていたようです〜

朝永ゆうり
恋愛
憧れの上司と一夜をともにしてしまったらしい杷留。お酒のせいで記憶が曖昧なまま目が覚めると、隣りにいたのは同じく状況を飲み込めていない様子の三条副局長だった。 互いのためにこの夜のことは水に流そうと約束した杷留と三条だったが、始業後、なぜか朝会で呼び出され―― 「結婚、おめでとう!」 どうやら二人は、互いに記憶のないまま結婚してしまっていたらしい。 ほとぼりが冷めた頃に離婚をしようと約束する二人だったが、互いのことを知るたびに少しずつ惹かれ合ってゆき―― 「杷留を他の男に触れさせるなんて、考えただけでぞっとする」 ――鬼上司の独占愛は、いつの間にか止まらない!?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...