【R18】Hide and Seek

Nuit Blanche

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猛獣は我慢できない4

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 光希が触れる度に一度上昇していくかのようだ。彼の掌、指、唇、舌、その全てが希彩を熱くさせる。

「っん……んぁ……んんっ!」

 沸騰寸前のところで留まり、希彩は必死に声を我慢していた。
 手で口を押さえていなければ自分でないような声が漏れてしまいそうだった。

「希彩ちゃん、声出して平気だよ」

 誰が来るともわからなかった保健室とは違い、家の中だ。家族がいるわけでもないらしいが、だからと言って開放的な気分で声を上げることは希彩にはできない。

「みっ、光希くん……」

 見上げた光希の顔は滲んでいる。けれど、その涙は嫌だからというわけでもない。

「何?」

 きっと、光希は笑っている。彼の纏う空気がそうだと希彩は感じていた。

「は、はずかし……」

 既に服ははだけ、ブラジャーも既にホックが外されて胸が露わになっている。
 一度見られ、触れられたことがあるとは言っても羞恥がなくなるわけでもない。

「うん、すげーエロい」
「やだ……」
「嫌? 本当に?」
「だ、だって……」

 自分の体に自信があるわけでもない。むしろ、コンプレックスばかりだ。明るい場所で見られては、それこそ隠れたくもなる。

「この前は、じっくり見れなかったし」
「み、見なくていい……」
「見なきゃできないし、堪能させてよ」

 光希は異性の裸など見慣れているのだろう。そう思うと希彩は少し悲しくなる。

「もしかして、気にしてる?」
「ひ、あぁんっ!」

 見透かされたと思った瞬間、すっかり固く尖ってしまった乳首を弾かれて希彩はたまらず声を上げる。揉みごたえのないだろう胸を弄られて、こんなにも感じるとも思っていなかった。

「俺、別に巨乳好きじゃないし、ピンクで小さくてツンとしてて敏感で可愛いのに」
「そ、そんな、言わなくていい、から……!」

 見られて触れられているだけで十分に恥ずかしいと言うのに、口に出されれば耳を塞いで穴にでも入りたくなるものだ。

「ひゃっ……そっちは……!」

 光希の手が下へ降り、下着に触れ、希彩は足を閉じようとしたが、光希の体に阻まれてできなかった。
 くちゅ、と水音が響き、希彩は顔を手で覆う。
 しかし、すぐに掴まれ、優しい力で引き剥がされ、光希の手が頬に触れる。

「俺に全部見せて?」

 目が合う。また明るいブラウンの目が綺麗だと感じる。
 もしかしたら、その目に恋をしたのかもしれない。そう感じるほどには真っ直ぐな眼差しに囚われていた。
 答える代わりに希彩は抵抗しなかった。下着を脱がそうとする光希の手を助けるように腰を浮かせたような気もする。
 するすると下着が脱がされ、秘部を見られるのは恥ずかしく、視線をさまよわせる希彩の髪を光希が梳く。

「やっぱり、怖い?」

 不安げに窺う眼差しに希彩は首を横に振る。

「怖くない、とは言えないけど……でも、嫌ってわけでもなくて……」

 性行為に対する恐怖が全くないわけではない。それは痛みの記憶とは別に光希に与えられた快楽の未知さに対するものであるのかもしれない。
 あのゾクゾクする感覚を思い出すと体の奥が疼く。
 この先にすることを知っていて、それでも拒絶感はなく、希彩も戸惑っていた。あるいは、どこかで期待してしまっている自分の心を認められないのかもしれない。

「早すぎるかもしれない。でも、俺はやっぱり希彩ちゃんとこういうことしたいって思う」

 真っ直ぐに目を見つめられての素直な告白に嫌悪感はない。
 確かに今日付き合うと決めてすぐそういう行為に及ぶというのは希彩が考える健全な男女交際からはかけ離れている。そもそも、彼と話すようになったのも、ほんの最近のことだ。

「またサイテーだって言われるんだろうけど、最初は本当に、可愛いからヤってみたいと思ってた。それだけだった」

 希彩は黙って光希の言葉に耳を傾ける。今は非難するつもりもなかった。

「でも、怖がる希彩ちゃん見て胸が痛かったし、誰がひどいことしたんだってムカついたし、嫉妬もした。俺だったら絶対にそんな風に終わらせないって思った」

 あの時の光希は強引だったが、最後までされることはなかった。
 必ず落とすと宣言した彼に落ちることなどないと希彩は思っていたのに不思議なものだ。

「遼はモテるくせに彼女作らないけど、俺と違って特定の相手がいないってわけじゃなかったからさ、きっとお何か理由があったんだろうとは思ったけど……でも、許せなかった」

 人を見た目で判断するなとは言っても光希が軽薄だったということは事実だろう。出会い方は最悪だったが、今は彼は色々と考えて行動しているのだとわかっている。どこかでは友人思いな面がある。

「言わなかったけど、守ってあげたいって思ったの。この子を泣かせたくないな、って――そんなこと思ったの初めてでさ。他の女の子と違うって言うか……その時に俺、希彩ちゃんのことが好きなんだって思ったの」

 明かされる光希の思いに希彩の胸は高鳴る。心臓の音がうるさく感じて、光希にまで聞こえてしまうのではないかと思うほどだ。

「トラウマになってるなら早く消してあげたい。気持ちいいこと、全部俺が教えてあげたい。希彩ちゃんは悪くなかったって自信を持たせてあげたい。それが俺の愛情表現だから」

 笑む光希からは自信が感じられ、希彩の中でドキドキが加速していく。それはトキメキというものなのだろうか。
 こんなにも彼を好きになるとは思わなかった。心をあげることなどありえないと思っていた。
 けれど、今は全てあげてしまって構わないと思っている。それをなかなか言葉にすることはできなかったが。

「なんて、俺も緊張してるからさ……うまくできないかも」
「光希君が……?」

 はにかむ光希を希彩はじっと見上げる。ずっと自信と余裕に満ち溢れて見える光希が緊張しているようには見えなかった。

「すげー心臓バックバク。本当に好きな子とするの初めてだからさ……なんか童貞に戻った気分」

 光希も自分と同じようにドキドキしているのだろうか。そう思えばひどく嬉しくて、希彩は光希に腕を伸ばし、抱き寄せていた。

「き、希彩ちゃん……?」
「大丈夫だよ」

 光希は戸惑った様子だが、希彩は構わずぎゅっと力を込める。服越しの彼の体温を感じれば、希彩の体ももっと熱くなるかのようだった。

「い、いや、こんな可愛いことされちゃうと、俺の理性がプッツン的な……」
「大丈夫」
「大事にしたいと思ってるけど、滅茶苦茶にしたいとも思ってるんだよ? さっきのでわかったでしょ? 入れたら、俺、抑えられないかもだよ?」
「光希君のこと、信じるって決めたから大丈夫」

 踏み出す勇気は光希がくれたものだ。それによって他人を信じることもできる。
 与えてもらった分、返したい気持ちが希彩の中にもあった。

「ありがと、希彩ちゃん。俺みたいなやつ、受け入れてくれて」

 ぎゅっと抱き締め返されて、暖かく心が満たされていくのを希彩は感じていた。それは希彩こそ光希に感謝していることなのだから。

「ってことで、いただきます」

 耳元で響く声に希彩の体はビクリと反応を示す。光希を見れば、先程までの照れた表情が満面の笑みに変わっていた。
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