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諦めが悪い先輩
いい思い出の終わり
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「お疲れ様」
かけられる優しい声を実結はただぼんやりと聞いた。
絶頂の余韻から抜け出せずにいるのだ。和真が動く気配がしても、体は沈み込んでいくかのようだ。
「あ……」
秘部に触れる感触に実結は体を動かそうとするが、制される。
「休んでていいよ。俺がやるから」
和真の言葉に実結は従うが、状況を正しく理解していたとは言い難い。
異性に秘部を拭われるなど恥ずかしくてたまらないはずなのに、何も考えられなかった。慶にされた時は意識を失っていたのだ。
「本当にそこでやめられるんですか、紳士ですね。そんなにしておいて」
後始末をして、実結の身なりを整える和真を慶が揶揄する。
慶の言葉によって、やっと本当に終わったのだと安堵と同時に実結は寂しさを覚えた。
夢は終わってしまったのだ。それなのに、体を起こすことも億劫で和真に甘えている。まるで余韻を楽しむかのように。
「じゃあ、もっとしたいって言ったらさせてくれるのか?」
「まさか、全力で止めますよ。イかせられるかどうかだけの約束ですし」
それが約束だった。実結の同意があった行為ではないが、二人の間では話がついていた。実結の体であるのに権利は慶が握っていて、本人の許可など関係ない。
「素股でも?」
「先輩が変態なのはよくわかりましたけど、往生際が悪いです」
「擦るだけだ。先っぽだけって言ってるわけじゃない」
「どっちにしろ、それだけじゃすまないですよね」
「まあな。本音を言えば挿れたい」
二人だけで進められる会話を実結は意味もわからないまま聞いていたが、ふと空気が凍り付いた気がした。冷気を発しているのは慶である。
「怖い顔だな。わかってるよ」
肩を竦めて和真は笑うが、実結には慶の表情は見えない。
「別にお前が怖いわけじゃない。時間もないし、実結ちゃんはこんなところじゃ嫌だろ? 次はちゃんとしたところでする」
「気遣ってるつもりでしょうけど、次があると思ってるんですか? いい思い出で終わりでしょう」
「実結ちゃん、混乱してるだろうけど、俺のことも試してみたくない?」
何を言われているのか、実結はわからなかった。先程からずっとそうだ。しかし、今は自分に言われているはずだ。
実結もまたこの行為によって、和真のことを諦めなければならないはずだった。自分にとっても『いい思い出』だと言い聞かせるつもりだった。
それなのに、和真は何を言っているのか。試すとは彼とのセックスを意味するのか。
「何ふざけたこと言ってるんですか。潔く諦めてくださいよ」
慶は淡々としているようだが、どこか焦りを感じるのは気のせいか。
「ふざけてないし、イかせられなかったら諦めるって言ったけど、イかせたら諦めるとは言ってない」
「いい思い出にして綺麗さっぱり諦めてください。俺のモノですから」
諦めてほしくないし、本当は諦めたくない。そんな我が儘な自分に気付いて実結は消えてしまいたくなる。
やはり苦しくなるほど和真のことが好きなのだ。彼もまた冗談のつもりで触れてきたわけではあるまい。
そっと実結が体を起こせば慶に支えられ、拒むこともできなかった。まだ頭がぼんやりしている。
「遠間は卑怯だ。でも、実結ちゃんの体を支配してる」
「俺達、体の相性いいんで」
慶に肩を抱き寄せられて振り払うこともできない。肯定できないが、否定もできなかった。
「でも、俺とも相性いいかもしれないだろ?」
「どうだか」
性的な話に実結は困惑するばかりだが、二人は構わず話を進める気らしい。当事者であるはずなのに、睨み合う二人をただ交互に見るしか実結にできることはなかった。
「お前は気持ちでは俺に勝てないから、実結ちゃんから選ぶ権利を奪った」
「先輩は気持ちでは俺に勝ってるって自惚れてるくせに、自分が選ばれるって思ってたくせに勝負しなかった。結局は負け犬だ」
「部内恋愛を禁止してるわけじゃないけど、部長として部の空気をおかしくするわけにはいかないだろ」
「言い訳ですね」
「お前や河西のせいで実結ちゃんが居辛くなるのは可哀想だ」
和真が自分のことを考えていてくれたことを嬉しく思いながらも実結の胸は切なさできりきりと痛む。
「俺は悪者ですか。河西なんかと一緒にされたくないんですけど」
「でも、お前ら、グルだろ」
「協力しろとは言われましたけど、俺は了承してないし、お互い勝手にやってるだけですよ。利害は一致しますしね」
「わ、私も言われました……」
「辛かったですよね。俺が慰めてあげますからね」
こめかみにキスをされて実結は一瞬ときめきを覚えてしまった自分を恨めしく感じた。
慶は真悠子だけを悪者にしたがっているようだが、彼女は直接手を出してきたわけではない。
「河西さんが先輩に告白するって慶君が言ったから……」
協力して欲しいとは言われたが、実結は真悠子からそんな話を聞いていなかった。部内にたった二人の女子だからと言っても仲が良いわけではない。同級生だからこそ慶とも仲が良く見える。
「で、子供っぽすぎて無理とか、ロリコンだと思われたくないとか、大嘘まで吹き込んでくれたわけか」
「でも、実結先輩は信じてくれましたよ?」
「だって……」
実結だって無条件に信じたわけではない。信じざるを得ないほど慶に追い詰められたのだ。それを上手く言葉にして和真に訴えることもできないまま見詰めていると和真にそっと手を取られる。そして、甲に口づけられ、実結は心臓が跳ねた気がした。
それに気付いたかのように肩に置かれたままだった手に力が籠められた。
かけられる優しい声を実結はただぼんやりと聞いた。
絶頂の余韻から抜け出せずにいるのだ。和真が動く気配がしても、体は沈み込んでいくかのようだ。
「あ……」
秘部に触れる感触に実結は体を動かそうとするが、制される。
「休んでていいよ。俺がやるから」
和真の言葉に実結は従うが、状況を正しく理解していたとは言い難い。
異性に秘部を拭われるなど恥ずかしくてたまらないはずなのに、何も考えられなかった。慶にされた時は意識を失っていたのだ。
「本当にそこでやめられるんですか、紳士ですね。そんなにしておいて」
後始末をして、実結の身なりを整える和真を慶が揶揄する。
慶の言葉によって、やっと本当に終わったのだと安堵と同時に実結は寂しさを覚えた。
夢は終わってしまったのだ。それなのに、体を起こすことも億劫で和真に甘えている。まるで余韻を楽しむかのように。
「じゃあ、もっとしたいって言ったらさせてくれるのか?」
「まさか、全力で止めますよ。イかせられるかどうかだけの約束ですし」
それが約束だった。実結の同意があった行為ではないが、二人の間では話がついていた。実結の体であるのに権利は慶が握っていて、本人の許可など関係ない。
「素股でも?」
「先輩が変態なのはよくわかりましたけど、往生際が悪いです」
「擦るだけだ。先っぽだけって言ってるわけじゃない」
「どっちにしろ、それだけじゃすまないですよね」
「まあな。本音を言えば挿れたい」
二人だけで進められる会話を実結は意味もわからないまま聞いていたが、ふと空気が凍り付いた気がした。冷気を発しているのは慶である。
「怖い顔だな。わかってるよ」
肩を竦めて和真は笑うが、実結には慶の表情は見えない。
「別にお前が怖いわけじゃない。時間もないし、実結ちゃんはこんなところじゃ嫌だろ? 次はちゃんとしたところでする」
「気遣ってるつもりでしょうけど、次があると思ってるんですか? いい思い出で終わりでしょう」
「実結ちゃん、混乱してるだろうけど、俺のことも試してみたくない?」
何を言われているのか、実結はわからなかった。先程からずっとそうだ。しかし、今は自分に言われているはずだ。
実結もまたこの行為によって、和真のことを諦めなければならないはずだった。自分にとっても『いい思い出』だと言い聞かせるつもりだった。
それなのに、和真は何を言っているのか。試すとは彼とのセックスを意味するのか。
「何ふざけたこと言ってるんですか。潔く諦めてくださいよ」
慶は淡々としているようだが、どこか焦りを感じるのは気のせいか。
「ふざけてないし、イかせられなかったら諦めるって言ったけど、イかせたら諦めるとは言ってない」
「いい思い出にして綺麗さっぱり諦めてください。俺のモノですから」
諦めてほしくないし、本当は諦めたくない。そんな我が儘な自分に気付いて実結は消えてしまいたくなる。
やはり苦しくなるほど和真のことが好きなのだ。彼もまた冗談のつもりで触れてきたわけではあるまい。
そっと実結が体を起こせば慶に支えられ、拒むこともできなかった。まだ頭がぼんやりしている。
「遠間は卑怯だ。でも、実結ちゃんの体を支配してる」
「俺達、体の相性いいんで」
慶に肩を抱き寄せられて振り払うこともできない。肯定できないが、否定もできなかった。
「でも、俺とも相性いいかもしれないだろ?」
「どうだか」
性的な話に実結は困惑するばかりだが、二人は構わず話を進める気らしい。当事者であるはずなのに、睨み合う二人をただ交互に見るしか実結にできることはなかった。
「お前は気持ちでは俺に勝てないから、実結ちゃんから選ぶ権利を奪った」
「先輩は気持ちでは俺に勝ってるって自惚れてるくせに、自分が選ばれるって思ってたくせに勝負しなかった。結局は負け犬だ」
「部内恋愛を禁止してるわけじゃないけど、部長として部の空気をおかしくするわけにはいかないだろ」
「言い訳ですね」
「お前や河西のせいで実結ちゃんが居辛くなるのは可哀想だ」
和真が自分のことを考えていてくれたことを嬉しく思いながらも実結の胸は切なさできりきりと痛む。
「俺は悪者ですか。河西なんかと一緒にされたくないんですけど」
「でも、お前ら、グルだろ」
「協力しろとは言われましたけど、俺は了承してないし、お互い勝手にやってるだけですよ。利害は一致しますしね」
「わ、私も言われました……」
「辛かったですよね。俺が慰めてあげますからね」
こめかみにキスをされて実結は一瞬ときめきを覚えてしまった自分を恨めしく感じた。
慶は真悠子だけを悪者にしたがっているようだが、彼女は直接手を出してきたわけではない。
「河西さんが先輩に告白するって慶君が言ったから……」
協力して欲しいとは言われたが、実結は真悠子からそんな話を聞いていなかった。部内にたった二人の女子だからと言っても仲が良いわけではない。同級生だからこそ慶とも仲が良く見える。
「で、子供っぽすぎて無理とか、ロリコンだと思われたくないとか、大嘘まで吹き込んでくれたわけか」
「でも、実結先輩は信じてくれましたよ?」
「だって……」
実結だって無条件に信じたわけではない。信じざるを得ないほど慶に追い詰められたのだ。それを上手く言葉にして和真に訴えることもできないまま見詰めていると和真にそっと手を取られる。そして、甲に口づけられ、実結は心臓が跳ねた気がした。
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