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諦めが悪い先輩
信じられない提案
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「俺にもチャンスが欲しい」
「俺よりもチャンスあったくせに」
「だから、俺も実結ちゃんの体に聞きたい。ねぇ、だめかな?」
真っ直ぐ見詰められて実結の胸は早鐘を打つ。欲情した雄の目をしている。そんな熱っぽい和真を見たのは初めてのことだった。好きな物を語る時の熱さとは違う。
穏やかさや爽やかさを持つ和真を今までセクシーだなどと感じたことはなかった。慶にだってそうだった。こういう時だからこそ色気を感じるのか。どちらにしても、実結には刺激が強くも思えるものだった。
恋をしていたはずだった。けれど、本当に男として意識していたかはわからなくなってしまう。実結こそ和真を兄と思っていたのかもしれない。
だが、体は確実に疼いている。慶しか知らない、先日まで処女だった体は快楽を知ってしまった。
「自分が何言ってるかわかってます? 脳味噌溶けてません?」
「俺は正気だ。でも、正気を失っているとしたら、それはお前のせいじゃないか?」
「人のせいですか」
「そもそも、俺にはお前が正気とは思えないからな」
慶は極めて冷静なようで狂気的な面を実結に見せてきた。今は和真がいるせいか、怖さが和らいでいるようだった。
だが、実結も自分が正気かどうかわからないくらいだ。皆、この異様な空気でおかしくなってしまったのかもしれない。
「実結ちゃん、強制はしない。君が本気で嫌がることは絶対にしない。だから、もし、俺にチャンスをくれるなら、明日俺の家に来て欲しい」
ぼんやりしたまま、実結は誘われるがまま頷いてしまいそうだった。頷けたら良かっただろうか。
夢を見ているようだった。和真に家に誘われるなどは思ってもみなかった。けれども、現実であり、隣には慶がいて、許すはずがないのだ。
「駄目ですよ。明日は俺とデートの約束があるんで」
実結ははっとする。忘れられていたら良かったのだろうが、忘れてしまえば慶に何をされるかわからない。
慶に抱かれて今日で一週間だ。どうせ、また抱かれるのだろうと実結は思っていた。嫌だと言ってもきっと無駄なのだろうと諦めていた。
和真に抱かれたいと思わないわけでもない。憧憬と恋慕の間で揺れている。それが浮気になるのかもわからない。
和真への心を残したまま体だけが慶に奪われてしまった。慶は心ごと奪うことができなかった。それが実結にとっての希望であり、絶望でもある。
「二人で来ればいい」
「は?」
「お前も一緒に判断すればいい」
「彼女が他の男に抱かれているのを見てろって? 悪趣味ですね」
「先に見せつけようとした奴が悪趣味とか言えるのか? それに、三人でするのもいいかもしれないだろ?」
進んでいく話に実結は何も言えず、また聞いているだけだ。口を挟む余地もなく、まともに考えられるわけでもない。自分を巡る話なのに、何度も置き去りにされている。
「いい加減見苦しいですよ、先輩」
冷たく慶は言い放つ。苛立ちが感じられる。
かもな、と和真は笑うが、動じた様子もない。
「住所は後で送るから、二人で話し合って。俺は明日ずっと待ってるから」
「無意味ですよ。寂しく待ち惚けしてればいい」
和真の言葉は自分に向けられていると実結は感じていたが、慶がはね除けてしまう。
きっと、慶の元へ行かなければならなくなるのだろう。和真のところへ行くことなどできない。それこそ、『お仕置き』をされるのかもしれない。何をされるのか、わかるわけではないが、恐ろしい予感に実結の体はぶるりと震えた。
「遠間、これ以上実結ちゃんの意思をねじ曲げるな」
穏やかな和真だが、厳しさも持ち合わせている。しかし、これは紛れもなく怒っているのだと実結は気付く。
自分のために怒ってくれていると思えれば幸せだっただろうか。救いにはならないと実結もわかっているのだ。
「それとも、俺に実結ちゃんの体まで奪われるのが怖いのか?」
どこか挑戦的に、捨て台詞を吐いて和真は出て行ってしまった。
慶との行為の事実はなくならない。慶のモノにされてしまったことは覆らない。本当は和真に奪ってほしかったのかもしれない。それなのに、選ぶことのできない選択肢を残して彼は行ってしまった。
「慶君……」
実結は恐る恐る慶を見る。和真に言われた通り話し合わなければならないと思った。
「明日、俺も待ってるから」
笑うことなく、慶は言い放つ。話し合いには応じないとその目が訴えている。
「俺との約束を守って実結先輩が来てくれるのを待ってる」
議論の余地などないようだったが、『約束』は実結の心を縛る言葉だった。約束は守らなければならない。そんな意識が働いてしまうからだ。
勝手に取り付けた約束だとは言っても、やはり約束は約束だった。
「和真先輩に抱かれたければ一人で行けばいい」
突き放す言葉に実結はどうしたら良いかわからなくなる。
好奇心なのか、恋情なのか、未練なのかわからないまま一人で行くことはできない。
それなのに、慶はそのまま実結を残して出て行ってしまった。
放課後の部活では慶も和真も特におかしな態度をとることもない。
何事もなかったかのようだった。昼休みのことが白昼夢のようだ。けれど、実結は覚えている。
帰りも慶は明日のことを持ち出そうとすれば話し合うことなどないとばかりに押し黙る。そして、その後もメールや通話にも一切応じることはなかった。
「俺よりもチャンスあったくせに」
「だから、俺も実結ちゃんの体に聞きたい。ねぇ、だめかな?」
真っ直ぐ見詰められて実結の胸は早鐘を打つ。欲情した雄の目をしている。そんな熱っぽい和真を見たのは初めてのことだった。好きな物を語る時の熱さとは違う。
穏やかさや爽やかさを持つ和真を今までセクシーだなどと感じたことはなかった。慶にだってそうだった。こういう時だからこそ色気を感じるのか。どちらにしても、実結には刺激が強くも思えるものだった。
恋をしていたはずだった。けれど、本当に男として意識していたかはわからなくなってしまう。実結こそ和真を兄と思っていたのかもしれない。
だが、体は確実に疼いている。慶しか知らない、先日まで処女だった体は快楽を知ってしまった。
「自分が何言ってるかわかってます? 脳味噌溶けてません?」
「俺は正気だ。でも、正気を失っているとしたら、それはお前のせいじゃないか?」
「人のせいですか」
「そもそも、俺にはお前が正気とは思えないからな」
慶は極めて冷静なようで狂気的な面を実結に見せてきた。今は和真がいるせいか、怖さが和らいでいるようだった。
だが、実結も自分が正気かどうかわからないくらいだ。皆、この異様な空気でおかしくなってしまったのかもしれない。
「実結ちゃん、強制はしない。君が本気で嫌がることは絶対にしない。だから、もし、俺にチャンスをくれるなら、明日俺の家に来て欲しい」
ぼんやりしたまま、実結は誘われるがまま頷いてしまいそうだった。頷けたら良かっただろうか。
夢を見ているようだった。和真に家に誘われるなどは思ってもみなかった。けれども、現実であり、隣には慶がいて、許すはずがないのだ。
「駄目ですよ。明日は俺とデートの約束があるんで」
実結ははっとする。忘れられていたら良かったのだろうが、忘れてしまえば慶に何をされるかわからない。
慶に抱かれて今日で一週間だ。どうせ、また抱かれるのだろうと実結は思っていた。嫌だと言ってもきっと無駄なのだろうと諦めていた。
和真に抱かれたいと思わないわけでもない。憧憬と恋慕の間で揺れている。それが浮気になるのかもわからない。
和真への心を残したまま体だけが慶に奪われてしまった。慶は心ごと奪うことができなかった。それが実結にとっての希望であり、絶望でもある。
「二人で来ればいい」
「は?」
「お前も一緒に判断すればいい」
「彼女が他の男に抱かれているのを見てろって? 悪趣味ですね」
「先に見せつけようとした奴が悪趣味とか言えるのか? それに、三人でするのもいいかもしれないだろ?」
進んでいく話に実結は何も言えず、また聞いているだけだ。口を挟む余地もなく、まともに考えられるわけでもない。自分を巡る話なのに、何度も置き去りにされている。
「いい加減見苦しいですよ、先輩」
冷たく慶は言い放つ。苛立ちが感じられる。
かもな、と和真は笑うが、動じた様子もない。
「住所は後で送るから、二人で話し合って。俺は明日ずっと待ってるから」
「無意味ですよ。寂しく待ち惚けしてればいい」
和真の言葉は自分に向けられていると実結は感じていたが、慶がはね除けてしまう。
きっと、慶の元へ行かなければならなくなるのだろう。和真のところへ行くことなどできない。それこそ、『お仕置き』をされるのかもしれない。何をされるのか、わかるわけではないが、恐ろしい予感に実結の体はぶるりと震えた。
「遠間、これ以上実結ちゃんの意思をねじ曲げるな」
穏やかな和真だが、厳しさも持ち合わせている。しかし、これは紛れもなく怒っているのだと実結は気付く。
自分のために怒ってくれていると思えれば幸せだっただろうか。救いにはならないと実結もわかっているのだ。
「それとも、俺に実結ちゃんの体まで奪われるのが怖いのか?」
どこか挑戦的に、捨て台詞を吐いて和真は出て行ってしまった。
慶との行為の事実はなくならない。慶のモノにされてしまったことは覆らない。本当は和真に奪ってほしかったのかもしれない。それなのに、選ぶことのできない選択肢を残して彼は行ってしまった。
「慶君……」
実結は恐る恐る慶を見る。和真に言われた通り話し合わなければならないと思った。
「明日、俺も待ってるから」
笑うことなく、慶は言い放つ。話し合いには応じないとその目が訴えている。
「俺との約束を守って実結先輩が来てくれるのを待ってる」
議論の余地などないようだったが、『約束』は実結の心を縛る言葉だった。約束は守らなければならない。そんな意識が働いてしまうからだ。
勝手に取り付けた約束だとは言っても、やはり約束は約束だった。
「和真先輩に抱かれたければ一人で行けばいい」
突き放す言葉に実結はどうしたら良いかわからなくなる。
好奇心なのか、恋情なのか、未練なのかわからないまま一人で行くことはできない。
それなのに、慶はそのまま実結を残して出て行ってしまった。
放課後の部活では慶も和真も特におかしな態度をとることもない。
何事もなかったかのようだった。昼休みのことが白昼夢のようだ。けれど、実結は覚えている。
帰りも慶は明日のことを持ち出そうとすれば話し合うことなどないとばかりに押し黙る。そして、その後もメールや通話にも一切応じることはなかった。
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