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答えは三人で
聞く耳持たず
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土曜、実結は不安な気持ちで慣れない駅に降りた。ロータリーに出て見渡しても見覚えはあるような、ないような、曖昧なところだ。
和真は丁寧な道案内を送ってくれたが、慶はそうではなかった。拒否こそされていないようだが、連絡は全て無視されてしまっている。
それは一人で和真のところに行けと言われているということなのか。行けば良かったのかもしれない。行けたら良かったのかもしれない。
慶のことを忘れて和真の元に飛び込めるほどの勇気は実結にはない。
ただ慶と話したい。きちんと向き合わなければならない。その一心で実結はただ一度行っただけの慶の家を探そうとしていた。慶に半ば無理矢理連れてこられた時は周囲を見る余裕などなかったし、帰りには暗くなっていた。
既にどの道を通ったか自信がない。実結は方向音痴だ。勘だけで進んでしまえば戻れなくなるかもしれない。
道がわからないから駅で待ってるという旨のメッセージを送り、実結はスマートフォンを手に、ベンチに座った。返事が来なかったら、どうしたら良いのかわからない。不安を抱きながら待つしかなかった。
何度も新着がないか見てしまい、時計が進む度に溜息を吐く。十数分が経過すると泣きたくもなる。電話すれば良かったのかもしれない。
返事をくれると信じていた。否、勝手に信じたかったのかもしれない。声を聞いて話す勇気がなかった。だから、文字にした。
今からでも電話するべきか、実結は逡巡する。三十分経っても連絡がなかったら電話するべきだろうか。しなければならないのだろうか。
あるいは現状を和真に相談してみるべきなのか。実結がそう思った時だった。
「実結先輩……!」
息を切らしてやってきた慶は実結を見ると困ったような顔を見せる。自信ありげに笑むわけでもなく、実結の手を掴む。
「慶君……?」
返事をする間も惜しんで急いで出てきてくれたのだろうか。挨拶もなく手を引かれ、実結が立ち上がれば慶は無言で歩き出す。
まるで、一週間前のあの日のようだ。今日の実結は自分の意思でここまで来たが、何も言わない慶は今何を考えているのか。
やはり話し合いに応じる気などないのかもしれない。
彼が来てくれてホッとしているはずなのに、実結の胸の内にはまた別の不安があった。
家に着いても慶は黙ったまま逃がさないとばかりに実結の手を引く。
話をしに来たのだから逃げるつもりはない。
だが、二度目の慶の部屋を見る余裕もなく、実結の視界は大きく動いた。
「きゃっ!」
衝撃に思わず声が漏れる。まるで放り投げるように、乱暴にベッドに乗せられたのだ。スプリングに吸収されて痛みこそなかったが、ショックだった。
ギシリとベッドが軋み、逃すまいとするように慶がのし掛かってくる。話し合う気など微塵もないとぎらついた目が物語っている。
雄の顔だと実結は本能的に危険を感じた。ここへ来れば少しは話を聞いてくれるはずだというのは甘い考えだったのだろう。
「んっ! ぅ、ん……」
言葉を奪うような口づけはあまりに強引だ。慣れてない実結は長い口づけの中で上手に息をすることもできない。これほど急にされたら尚更だ。胸を叩いてみても無駄だった。
「は、ぁ……んんっ……ふ、ぅうっ」
息苦しさで意識が遠のきそうになるギリギリのところで解放され、酸素を取り込み、呼吸を整えようとするが、開いた唇の隙間に舌が差し込まれて蹂躙される。
あっという間に呼吸も抵抗力も奪われて体はただ震える。しかし、慶の手が胸元に移動して、ブラウスのボタンに手が掛かった時、はっと意識が浮上した。
「やっ、慶君、待って……だめっ!」
実結は必死に腕を突っ張って慶を制する。とにかく座って落ち着いて話をしたかった。
「俺を選んだんじゃないんですか?」
慶はなぜ、拒否されるのかわからないと言いたげに驚いた顔をしている。
「二人で話し合って、って先輩に言われたでしょ?」
「話し合うことなんてない」
はっきりと慶は言い切る。それでも尚実結は縋る。
「このままでいいから聞いて、お願い」
「嫌です」
付け入る隙などまるで与えないように慶は言う。
「俺にとっては先輩が来たことが答えです――だから、俺がしたいようにします」
有無を言わさず、慶はボタンを外し、実結の首筋に顔を埋める。舌が這い、下降していく。
「この辺なら付けてもいいですよね」
実結には何のことかわからなかったが、すぐに胸元に吸い付かれ、小さな痛みが走る。
「っ……」
「ふふっ、綺麗に付きました。俺のモノっていう証です。先輩にも見えますか?」
愛おしげに慶は先程吸い付いた部分を撫でる。痣ができているのが実結にも見えた。
「もっと付けてもいいですか? ちゃんと隠せるところにしますから」
「やめて……お願いだから、話を……」
自由に付けさせてやれば話を聞いてくれるだろうか。否、無駄だろうと実結の中に諦めが芽生えていた。
「待ちません。聞きません。だから、大人しく俺に抱かれてください」
「ゃっ……ぅ……」
するりと指先がブラジャーの上を滑り、狙いを定めて何度も擦り上げる。その刺激は実結の下腹部に直結するように疼いた。
布地越しに擦られた敏感な突起はすぐに硬くなり、慶もそれに気付くとブラジャーを捲り、直接弾く。
「ひ、ぁっ!」
びくんと実結の体は意思と無関係に跳ねる。こんなことを続けられてしまったら、本当に話ができなくなるのは目に見えている。慶もそのつもりでやっているのだろう。
「っふ、あぁっ!」
濡れた唇から赤い舌が覗いて、胸の先端をぺろりと舐め上げる。指とはまた違う感触に体は顕著に反応を示す。
「ほんと、敏感ですよね……こっちももう濡れてるんじゃないですか?」
足を開かされ、覗き込まれると実結は顔を覆いたくなった。
「いや……話……」
「まだ言ってるんですか。ここ、ぐしょぐしょに濡らしたら和真先輩のところになんていけないですよ」
下着越しに秘部に触れ、無理矢理快楽を引きずり出すように花芽を的確に擦られ、このままでは流されてしまうと実結は察した。同時にその行為に対する恐怖も限界点に達していた。
「聞いてって言ってるでしょ!」
「ぅぐっ!」
実結が必死に体を動かすと慶の呻きが聞こえ、離れていく。手応えはあったが、実結が理解したのは一拍遅れてからだった。
「あっ、ごめん……」
見れば慶が腹を押さえている。簡単には止められないことをわかっていたからこそ、咄嗟に渾身の力が籠もってしまった。
怒られると実結は思った。その怒りのままに手酷く犯されることさえ想像できた。
だが、実際はひどく傷付いた顔で呆然と実結を見ていた。
「痛かったよね……? ごめん……」
「痛いとか言うより先輩に蹴られたことが辛い……心が痛い……」
慶はがっくりとうなだれている。よほどショックだったのだろうか、初めて見る姿に実結は体を起こすとその頭に手を伸ばして撫でる。
「よしよし」
「なっ……! 何ですか、急に」
戸惑った様子ながらも慶は実結の手を振り払うことはしなかった。
「慶君、捨て犬みたい」
「じゃあ、拾って最後まで面倒見てくださいよ。捨てないで」
泣きそうな声をして慶はぎゅっと抱き着いてくる。
実結は犬を飼ったこともないし、幼少期に追いかけ回されたことがトラウマで今も苦手だが、慶の目は懸命に訴えている気がする。行かないで、と。
「捨てないよ」
そっと実結も抱き締め返す。慶は例えるならば大型犬だろうが、今は小さく見える。
「大好きな和真先輩に告白されて良かったじゃないですか。両想いなんだから抱かれに行けばいい」
ぎゅう、と力を込めながらそう言う慶は拗ねているのかもしれなかった。
和真は丁寧な道案内を送ってくれたが、慶はそうではなかった。拒否こそされていないようだが、連絡は全て無視されてしまっている。
それは一人で和真のところに行けと言われているということなのか。行けば良かったのかもしれない。行けたら良かったのかもしれない。
慶のことを忘れて和真の元に飛び込めるほどの勇気は実結にはない。
ただ慶と話したい。きちんと向き合わなければならない。その一心で実結はただ一度行っただけの慶の家を探そうとしていた。慶に半ば無理矢理連れてこられた時は周囲を見る余裕などなかったし、帰りには暗くなっていた。
既にどの道を通ったか自信がない。実結は方向音痴だ。勘だけで進んでしまえば戻れなくなるかもしれない。
道がわからないから駅で待ってるという旨のメッセージを送り、実結はスマートフォンを手に、ベンチに座った。返事が来なかったら、どうしたら良いのかわからない。不安を抱きながら待つしかなかった。
何度も新着がないか見てしまい、時計が進む度に溜息を吐く。十数分が経過すると泣きたくもなる。電話すれば良かったのかもしれない。
返事をくれると信じていた。否、勝手に信じたかったのかもしれない。声を聞いて話す勇気がなかった。だから、文字にした。
今からでも電話するべきか、実結は逡巡する。三十分経っても連絡がなかったら電話するべきだろうか。しなければならないのだろうか。
あるいは現状を和真に相談してみるべきなのか。実結がそう思った時だった。
「実結先輩……!」
息を切らしてやってきた慶は実結を見ると困ったような顔を見せる。自信ありげに笑むわけでもなく、実結の手を掴む。
「慶君……?」
返事をする間も惜しんで急いで出てきてくれたのだろうか。挨拶もなく手を引かれ、実結が立ち上がれば慶は無言で歩き出す。
まるで、一週間前のあの日のようだ。今日の実結は自分の意思でここまで来たが、何も言わない慶は今何を考えているのか。
やはり話し合いに応じる気などないのかもしれない。
彼が来てくれてホッとしているはずなのに、実結の胸の内にはまた別の不安があった。
家に着いても慶は黙ったまま逃がさないとばかりに実結の手を引く。
話をしに来たのだから逃げるつもりはない。
だが、二度目の慶の部屋を見る余裕もなく、実結の視界は大きく動いた。
「きゃっ!」
衝撃に思わず声が漏れる。まるで放り投げるように、乱暴にベッドに乗せられたのだ。スプリングに吸収されて痛みこそなかったが、ショックだった。
ギシリとベッドが軋み、逃すまいとするように慶がのし掛かってくる。話し合う気など微塵もないとぎらついた目が物語っている。
雄の顔だと実結は本能的に危険を感じた。ここへ来れば少しは話を聞いてくれるはずだというのは甘い考えだったのだろう。
「んっ! ぅ、ん……」
言葉を奪うような口づけはあまりに強引だ。慣れてない実結は長い口づけの中で上手に息をすることもできない。これほど急にされたら尚更だ。胸を叩いてみても無駄だった。
「は、ぁ……んんっ……ふ、ぅうっ」
息苦しさで意識が遠のきそうになるギリギリのところで解放され、酸素を取り込み、呼吸を整えようとするが、開いた唇の隙間に舌が差し込まれて蹂躙される。
あっという間に呼吸も抵抗力も奪われて体はただ震える。しかし、慶の手が胸元に移動して、ブラウスのボタンに手が掛かった時、はっと意識が浮上した。
「やっ、慶君、待って……だめっ!」
実結は必死に腕を突っ張って慶を制する。とにかく座って落ち着いて話をしたかった。
「俺を選んだんじゃないんですか?」
慶はなぜ、拒否されるのかわからないと言いたげに驚いた顔をしている。
「二人で話し合って、って先輩に言われたでしょ?」
「話し合うことなんてない」
はっきりと慶は言い切る。それでも尚実結は縋る。
「このままでいいから聞いて、お願い」
「嫌です」
付け入る隙などまるで与えないように慶は言う。
「俺にとっては先輩が来たことが答えです――だから、俺がしたいようにします」
有無を言わさず、慶はボタンを外し、実結の首筋に顔を埋める。舌が這い、下降していく。
「この辺なら付けてもいいですよね」
実結には何のことかわからなかったが、すぐに胸元に吸い付かれ、小さな痛みが走る。
「っ……」
「ふふっ、綺麗に付きました。俺のモノっていう証です。先輩にも見えますか?」
愛おしげに慶は先程吸い付いた部分を撫でる。痣ができているのが実結にも見えた。
「もっと付けてもいいですか? ちゃんと隠せるところにしますから」
「やめて……お願いだから、話を……」
自由に付けさせてやれば話を聞いてくれるだろうか。否、無駄だろうと実結の中に諦めが芽生えていた。
「待ちません。聞きません。だから、大人しく俺に抱かれてください」
「ゃっ……ぅ……」
するりと指先がブラジャーの上を滑り、狙いを定めて何度も擦り上げる。その刺激は実結の下腹部に直結するように疼いた。
布地越しに擦られた敏感な突起はすぐに硬くなり、慶もそれに気付くとブラジャーを捲り、直接弾く。
「ひ、ぁっ!」
びくんと実結の体は意思と無関係に跳ねる。こんなことを続けられてしまったら、本当に話ができなくなるのは目に見えている。慶もそのつもりでやっているのだろう。
「っふ、あぁっ!」
濡れた唇から赤い舌が覗いて、胸の先端をぺろりと舐め上げる。指とはまた違う感触に体は顕著に反応を示す。
「ほんと、敏感ですよね……こっちももう濡れてるんじゃないですか?」
足を開かされ、覗き込まれると実結は顔を覆いたくなった。
「いや……話……」
「まだ言ってるんですか。ここ、ぐしょぐしょに濡らしたら和真先輩のところになんていけないですよ」
下着越しに秘部に触れ、無理矢理快楽を引きずり出すように花芽を的確に擦られ、このままでは流されてしまうと実結は察した。同時にその行為に対する恐怖も限界点に達していた。
「聞いてって言ってるでしょ!」
「ぅぐっ!」
実結が必死に体を動かすと慶の呻きが聞こえ、離れていく。手応えはあったが、実結が理解したのは一拍遅れてからだった。
「あっ、ごめん……」
見れば慶が腹を押さえている。簡単には止められないことをわかっていたからこそ、咄嗟に渾身の力が籠もってしまった。
怒られると実結は思った。その怒りのままに手酷く犯されることさえ想像できた。
だが、実際はひどく傷付いた顔で呆然と実結を見ていた。
「痛かったよね……? ごめん……」
「痛いとか言うより先輩に蹴られたことが辛い……心が痛い……」
慶はがっくりとうなだれている。よほどショックだったのだろうか、初めて見る姿に実結は体を起こすとその頭に手を伸ばして撫でる。
「よしよし」
「なっ……! 何ですか、急に」
戸惑った様子ながらも慶は実結の手を振り払うことはしなかった。
「慶君、捨て犬みたい」
「じゃあ、拾って最後まで面倒見てくださいよ。捨てないで」
泣きそうな声をして慶はぎゅっと抱き着いてくる。
実結は犬を飼ったこともないし、幼少期に追いかけ回されたことがトラウマで今も苦手だが、慶の目は懸命に訴えている気がする。行かないで、と。
「捨てないよ」
そっと実結も抱き締め返す。慶は例えるならば大型犬だろうが、今は小さく見える。
「大好きな和真先輩に告白されて良かったじゃないですか。両想いなんだから抱かれに行けばいい」
ぎゅう、と力を込めながらそう言う慶は拗ねているのかもしれなかった。
応援ありがとうございます!
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