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答えは三人で
それぞれの恋
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「先輩、覚えてないですよね。去年、俺と文化祭で会ったことなんか」
「文化祭……?」
頭をフル回転させて、去年のことを思い出そうとするが、浮かぶのは少しだけ和真と回ったことばかりだ。
「ご、ごめん……わからないかも……」
嘘を吐けば傷付けてしまうだろう。だからこそ、実結は正直に言うしかなかった。
文化祭にはたくさんの来校者がいて、その中に彼がいたということなのか。何らかの接触はあったのだろうが、何も思い出せない。前日から普段話すことのない同級生や先輩達に声をかけられて実結はパンク寸前だったくらいだ。
「その時に買った先輩の写真、俺の部屋に飾ってあったのも気付いてないですよね?」
「……ごめん」
写真部の展示に来てくれたのか、と理解して実結はその辺りの記憶をもう一度思い返してみる。
毎年、写真部は教室を一つ借りて写真展を行っている。展示している写真やポストカードなどの販売をしているのだ。実結は主に接客をしていたが、慣れないことをするせいで半ばパニックになっていた。
自分の写真を買ってくれた男の子がいたのは覚えているが、確証がない。中学生だと思わずに、他校の生徒だと思っていた可能性もある。
慶の部屋を細かく見る余裕もなかった。
「友達につれられて行ったけど、うるさいのが嫌で、避難的な意味で写真部の展示に入ったんです。凄く静かだったんで」
写真部の展示は盛況とは言えないが、文化祭の喧噪の中にあっても騒ぐような人間が来るわけでもなく常に平和だ。
「一目惚れしたっぽいのは、その時。初対面で連絡先とか聞いていい感じじゃなかったし、一時的な気の迷いとも思ったんですけど、ずっと忘れられなくて……入学して部室に行って実結先輩を見て、やっぱり欲しいって思ったんです」
どうして、それを言ってくれなかったのか。そう思わずにはいられないが、実際、聞いたところで実結の和真への気持ちが変わるわけでもない。
去年からずっと自分を想ってくれていたと言っても、どうしてやることもできない。それは慶自身もわかっていたことなのだろう。
「ちなみに俺は実結ちゃんが文化祭に来てくれたの覚えてるよ」
「え……?」
「実結ちゃんも俺の写真、買ってくれたでしょ? その時に可愛い子だなって一目惚れしちゃって、俺も忘れられなくて、実結ちゃんが入部してくれた時は本当に嬉しかったよ。運命だと思った」
「え、あ……あれ、和真先輩だったんですか……?」
実結も文化祭に行ったのは事実だ。確かに写真も買ったし、優しい男子部員に説明してもらった記憶まではある。
「あっ、覚えてない? そっか……そうだよね……」
「うける」
「も、もしかして、入部した時、凄く親切に教えてくれたのって……?」
あまり人と接するのは得意ではなかったが、何となく写真部なら大丈夫のような気がして、勇気を持って見学に行った時に温かく迎えてくれたのが和真だった。
異性と接するのも苦手で、男子ばかりの写真部はハードルが高く思えたが、和真のおかげですぐに馴染むことができたのだ。他の部員達が歓迎してくれたのもあるが、和真の存在は大きかった。
「うわっ、下心丸出しじゃないですか!」
「文化祭の時、対応してくれた人が凄く優しかったのは覚えてます。あの写真に一目惚れしたので、もし、和真先輩だったら、って期待したことはあったんですけど、私のことなんて覚えてるはずがないと思ったので聞けなくて……」
「それで、実結先輩は下心丸出しで優しくしてくれた先輩に落とされちゃったんですか」
「だって、先輩達はみんな親切だったけど、和真先輩は本当によくしてくれて……だから、最初に顔と名前が一致するようになったの」
男子部員に囲まれて実結は名前を覚えるのに必死だった。焦らなくて良いと言ってくれたのも和真だ。
「実結ちゃんが人の顔と名前覚えるの苦手って言ってたの思い出した……本当に駄目なんだってよくわかった……」
「ですね……ちょっとだけ先輩に同情してあげてもいいです」
「笑いながら言うなよ」
慶はニヤニヤと笑っているが、実結は改めて申し訳なく思っていた。
「で、3Pがご褒美なんです? それって毎週末してくれるんです? 週二?」
露骨に言われて実結は固まった。今も疲労感から抜け出せないのに、週に二回もあんなことをしてしまったら月曜に起き上がれなくなるかもしれない。
「実結ちゃんに負担がかかるだろ。一番きついの実結ちゃんなんだからな」
「我慢してる方ですよ」
慶の我慢とは一体何なのだろうか。和真が言ってくれるおかげで実結は頷くだけだが、一人では何も言えなかっただろう。
「私は、普通に遊んだりしてみたいと思ってて……」
「俺は大賛成」
和真の賛成に実結はほっと胸を撫で下ろす。もっと穏やかで、お互いを知る時間を欲していた。あまり友人と出かけることがないだけに、この三人で楽しく過ごしてみたいと思ってしまうのだ。
恐る恐る慶の様子を窺えば、妖しげな笑みを浮かべている。
「俺は実結先輩と二人っきりで爛れた週末を過ごしたいです。ドロドロのグチャグチャになりたいです」
「お前は絶倫か」
「若いんで。って言うか、先輩はもう枯れてるんですか? 可哀想に」
「何とでも言え。お前こそ性欲魔人かよ。実結ちゃんが困ってるだろ」
最早、実結は苦笑いするしかない。二人の話が弾むとよくわからない卑猥な話になることは理解できた。
「多分、そういうことはしてあげられないけど……和真先輩が忙しい時は二人だけでデートじゃダメかな?」
「お家デートは?」
「変なことしなければ……多分、大丈夫……」
どこかに遊びに行くくらいなら問題ないはずだと実結は考えていた。恋人が出来たら、一緒にどこかに出かけたいと夢を見ていた。
「セックスは全然変なことじゃないです。俺、やばい性癖とかないですし」
そう言われてしまうと実結は何も言い返せなくなる。だが、助けを求める前に和真が動いた気配がした。
「痛っ!」
「ドSのくせに、ぬけぬけと……実結ちゃんの精一杯の譲歩を察してやれ。元々、お前が全面的に悪いんだから」
「やっぱり邪魔だ……どうやって消そう……」
和真に殴られて慶は頭を押さえ、ぶつぶつと物騒なことを呟いている。尤も、和真もそれほど力を込めていなかったように思える。
「文化祭……?」
頭をフル回転させて、去年のことを思い出そうとするが、浮かぶのは少しだけ和真と回ったことばかりだ。
「ご、ごめん……わからないかも……」
嘘を吐けば傷付けてしまうだろう。だからこそ、実結は正直に言うしかなかった。
文化祭にはたくさんの来校者がいて、その中に彼がいたということなのか。何らかの接触はあったのだろうが、何も思い出せない。前日から普段話すことのない同級生や先輩達に声をかけられて実結はパンク寸前だったくらいだ。
「その時に買った先輩の写真、俺の部屋に飾ってあったのも気付いてないですよね?」
「……ごめん」
写真部の展示に来てくれたのか、と理解して実結はその辺りの記憶をもう一度思い返してみる。
毎年、写真部は教室を一つ借りて写真展を行っている。展示している写真やポストカードなどの販売をしているのだ。実結は主に接客をしていたが、慣れないことをするせいで半ばパニックになっていた。
自分の写真を買ってくれた男の子がいたのは覚えているが、確証がない。中学生だと思わずに、他校の生徒だと思っていた可能性もある。
慶の部屋を細かく見る余裕もなかった。
「友達につれられて行ったけど、うるさいのが嫌で、避難的な意味で写真部の展示に入ったんです。凄く静かだったんで」
写真部の展示は盛況とは言えないが、文化祭の喧噪の中にあっても騒ぐような人間が来るわけでもなく常に平和だ。
「一目惚れしたっぽいのは、その時。初対面で連絡先とか聞いていい感じじゃなかったし、一時的な気の迷いとも思ったんですけど、ずっと忘れられなくて……入学して部室に行って実結先輩を見て、やっぱり欲しいって思ったんです」
どうして、それを言ってくれなかったのか。そう思わずにはいられないが、実際、聞いたところで実結の和真への気持ちが変わるわけでもない。
去年からずっと自分を想ってくれていたと言っても、どうしてやることもできない。それは慶自身もわかっていたことなのだろう。
「ちなみに俺は実結ちゃんが文化祭に来てくれたの覚えてるよ」
「え……?」
「実結ちゃんも俺の写真、買ってくれたでしょ? その時に可愛い子だなって一目惚れしちゃって、俺も忘れられなくて、実結ちゃんが入部してくれた時は本当に嬉しかったよ。運命だと思った」
「え、あ……あれ、和真先輩だったんですか……?」
実結も文化祭に行ったのは事実だ。確かに写真も買ったし、優しい男子部員に説明してもらった記憶まではある。
「あっ、覚えてない? そっか……そうだよね……」
「うける」
「も、もしかして、入部した時、凄く親切に教えてくれたのって……?」
あまり人と接するのは得意ではなかったが、何となく写真部なら大丈夫のような気がして、勇気を持って見学に行った時に温かく迎えてくれたのが和真だった。
異性と接するのも苦手で、男子ばかりの写真部はハードルが高く思えたが、和真のおかげですぐに馴染むことができたのだ。他の部員達が歓迎してくれたのもあるが、和真の存在は大きかった。
「うわっ、下心丸出しじゃないですか!」
「文化祭の時、対応してくれた人が凄く優しかったのは覚えてます。あの写真に一目惚れしたので、もし、和真先輩だったら、って期待したことはあったんですけど、私のことなんて覚えてるはずがないと思ったので聞けなくて……」
「それで、実結先輩は下心丸出しで優しくしてくれた先輩に落とされちゃったんですか」
「だって、先輩達はみんな親切だったけど、和真先輩は本当によくしてくれて……だから、最初に顔と名前が一致するようになったの」
男子部員に囲まれて実結は名前を覚えるのに必死だった。焦らなくて良いと言ってくれたのも和真だ。
「実結ちゃんが人の顔と名前覚えるの苦手って言ってたの思い出した……本当に駄目なんだってよくわかった……」
「ですね……ちょっとだけ先輩に同情してあげてもいいです」
「笑いながら言うなよ」
慶はニヤニヤと笑っているが、実結は改めて申し訳なく思っていた。
「で、3Pがご褒美なんです? それって毎週末してくれるんです? 週二?」
露骨に言われて実結は固まった。今も疲労感から抜け出せないのに、週に二回もあんなことをしてしまったら月曜に起き上がれなくなるかもしれない。
「実結ちゃんに負担がかかるだろ。一番きついの実結ちゃんなんだからな」
「我慢してる方ですよ」
慶の我慢とは一体何なのだろうか。和真が言ってくれるおかげで実結は頷くだけだが、一人では何も言えなかっただろう。
「私は、普通に遊んだりしてみたいと思ってて……」
「俺は大賛成」
和真の賛成に実結はほっと胸を撫で下ろす。もっと穏やかで、お互いを知る時間を欲していた。あまり友人と出かけることがないだけに、この三人で楽しく過ごしてみたいと思ってしまうのだ。
恐る恐る慶の様子を窺えば、妖しげな笑みを浮かべている。
「俺は実結先輩と二人っきりで爛れた週末を過ごしたいです。ドロドロのグチャグチャになりたいです」
「お前は絶倫か」
「若いんで。って言うか、先輩はもう枯れてるんですか? 可哀想に」
「何とでも言え。お前こそ性欲魔人かよ。実結ちゃんが困ってるだろ」
最早、実結は苦笑いするしかない。二人の話が弾むとよくわからない卑猥な話になることは理解できた。
「多分、そういうことはしてあげられないけど……和真先輩が忙しい時は二人だけでデートじゃダメかな?」
「お家デートは?」
「変なことしなければ……多分、大丈夫……」
どこかに遊びに行くくらいなら問題ないはずだと実結は考えていた。恋人が出来たら、一緒にどこかに出かけたいと夢を見ていた。
「セックスは全然変なことじゃないです。俺、やばい性癖とかないですし」
そう言われてしまうと実結は何も言い返せなくなる。だが、助けを求める前に和真が動いた気配がした。
「痛っ!」
「ドSのくせに、ぬけぬけと……実結ちゃんの精一杯の譲歩を察してやれ。元々、お前が全面的に悪いんだから」
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