だって好きだから

オフィーリア

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朝宮莉子、失恋しました…

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 むむっ、てことはやっぱり…

 ピンク色の情報ノートを片手に思考を巡らせる。

 瑛斗の好きな人は、同級生で手芸部、だそうだ。中1の手芸部は私を入れて四人。そのうちの亜梨沙とけいは瑛斗の想い人を知ってるらしいから、多分この2人ではない。香苗は彼氏持ちだからない…うん。やっぱり瑛斗と私って両想い?

 え?そんなはずないよね?だって、瑛斗と仲良い女子なんていっぱ…私だけじゃん!!!
 えー、じゃあやっぱり??両想い??ええええええ…

 瑛斗に告られたらなんて返そう?
 『私も好き!』?それとも、顔を赤くして頷くだけのほうが可愛いかな?

 そしたら、瑛斗が私をぎゅっと抱きしめて、耳元で『じゃあ、今日から莉子は俺のものだよ』っとか!!!きゃあああ!!!

「おーい」

 ん?誰だか知らんが私の妄想の邪魔をしないでくれ。

「どした、莉子?目の焦点あってないぞ」

 あれ?この声は…

 見上げた先に瑛斗がいた。おおう…かっこいい…


「んーっと、考え事っ!!考え事してたの!!!」

 間違ってはいないだろう。妄想と言ったほうが正しいけど…

「ふーん。てことは暇なんだ?」

「ん、まーね」

 ま、そりゃそーなんだけど、瑛斗のこと考えるのに忙しかったってか…

ま、リアル瑛斗の方がいいんだけどね!!!

「なら、ちょうど良かった。ちょっとさ、相談聞いてくんね?こんなの話せんの莉子だけだからさ」

 っっっっ!!莉子だけだからさだって!!ううう…やばい…

「ほーう。なーに?相談て」

 はー、口ではどーにか平静を保てた…

「実はさ俺、好きな子いるんだけどよ…」 

 それは私ですか!私ですよね!私!私!

 あるよね、漫画とかで、恋愛相談されてて『で、結局好きな人誰なの?』、『っ、お、お前だよ…』みたいなみたいな!!!!

「その子、めっちゃ可愛くて、もう耐えらんなくてさ」

 私が?私が可愛すぎるのね!!!んもー!!

「そんで、勢いで告っちゃったんだ」

 照れながら言う瑛斗かわいいな…

 って、えええ?わ、私告白されていないけれど?

「え…」

「それでさ、なんどか返事してって言ってるんだけど、その度に逃げられるんだ…」

「その、好きな人って…」

 まさか、私の友達とかだったらやだよ?

「青島亜梨沙、お前の親友。だからお前に相談してんだ」 

 悪い予想って当たるよね…予想なんかしなきゃよかった…そうゆうことじゃないけどさ!

「あ、そうなんだ、うん。ご、ごめん、ちょっと私用事あるから…」

「え、ちょ、莉子!!」

 走り去る私を瑛斗が呼び止めた、が、無視して走る。ともかく走る、走り続ける。廊下を走り抜け、玄関を出てと、走り続けた。
 人気の無い裏庭まで来て、ようやく思考が復活した。

 ああ私、失恋したんだ。 

 知らず知らずに、涙が溢れて来た。


              ☆  ☆  ☆


「…莉子、泣いた?目が真っ赤」

 教室に戻って来たら、早速恵に気づかれた。

「うん…、私失恋した」

「っ…」

 なぜか恵の顔がひきつった。

「瑛斗の好きな人ね…」

「ごめん、知ってる」

 え?

「神代が亜梨沙に告白したことも、全部」

「っ、なんで?なんで言ってくれなかったの?私1人で両想いかもってはしゃいで、バカみたいじゃん!!それをなんでとなりで黙って見てたのよ!」

「ほんとは言ってあげたほうが良かったよね。でも、となりで神代の話しながら笑ってる莉子にそんなの言って、傷ついた顔見たくなかったんだ。ごめんね、莉子」

 恵の顔は辛そうだった。私のために、黙っててくれなんだもんね、攻めちゃいけないのはわかってる。ただの八つ当たりだ。でも…

「でも…なんで…やだ…」

 舌は理性を裏切って感情に従った。そして涙はさらに溢れて来た。

「恵が!恵が言ってくれてれば、期待する前にわかってれば!こんなに傷つかなかったのに!!」

 ああ、違う、違うよ。こんなこと言いたく無いのに…

「そうだよね。ごめんね!ごめんね!!」

 いつのまにか恵も泣いていた。私のせいで泣いている。ああ、やっと、感情が落ち着いた。

「ごめん恵」

 放課後の静かな教室に私達の泣き声ばかりが響いた。

                ☆  ☆  ☆


「あああああ!!!」

 やっと失恋の涙だからも抜け出し、冷静になってみて気づいた。明日から宿泊学習じゃん!しかも瑛斗と同じ組だし…ううっ

「失恋した直後に3日間ずっと顔を見なきゃいけないなんて、どんな試練だ、これ…」

 でも、瑛斗もそうだけど…

「亜梨沙にいつも通り接せられるかなー」

 どうしても、亜梨沙に嫉妬してしまう。そりゃ、亜梨沙はちっちゃくて、可愛くて…

 瑛斗が惚れるのもしょうがないけど…

「私だって自信あったのにぃーーー!!!」

 色白で目が大きく背が高くて華奢…自分が人から羨ましがられる外見をしているのは、知っていた。だからこそ自信があったのだし、それと…ううっ。瑛斗と一番仲良かったのは私なのにぃ…

「あーあ、頑張れるかなー…」

 荷物を詰めながら1人でぼやく…

「やーだなー…はあ…」
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