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第一章
プロローグ③
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7月6日午前零時
―――南アルプス天体観測所。
「まただ……。ったくぅ……。こんな数値あるわけない……」
「またかよ、キド。お前のスコープ、調子悪いんじゃないのか?」
「そんなことはないと思うんだけどなぁ……。でも、ここ最近よくあるんだよ」
「でも、継続的ではないんだろう? でもって、断続的って言うほどの規則性もないんだろう? なんらかのバグか、スコープがいかれているんだよ。ほら、ダンさんの測定システムもいかれてたって……。お前と同じように、X線とガンマ線だけがやたらと計測されたってコグレさん大騒ぎしていたけど、テスターにかけたら結局スコープがぶっ壊れていたんだと……。だいたい、古いんだよな……。こんな機械使ってっとこ、ほとんどないぜ……。まったくさぁ、注目されない星の観測部署には、予算つけてくれないもんなぁ……。俺たちにも、もっと近場の星や人気の流星群の観測させてほしいよ……、だいたい……」
「そうなのかなぁ……。でも、一応、テスターにはかけたんだよ、俺のも……」
「へー、そうなんだ⁉︎ で、正常だったのか?」
「あぁ、誤差に関しては、さすがに最新の機種に比べれば幅は大きけど、中央値を取るのに不足はないし、メンテナンスだけはちゃんとしているから、回路のどこ調べても、不具合ないって……」
「じゃあ、なんだ……? 本当に……、おかしいのか?」
「だから、よくわからないんだ……。ここの近隣で、放射線を発生させるような機械や施設があるか……、例えば、病院かなんか……」
「何言っちゃってんだよ、こんな山奥だぜ……。登山するほど身体が元気なら、病院なんか行かないし……」
「うおっ……。まただっ‼︎」
「えっ……⁉︎ なんだ? どうしたよ?」
「ほらっ、見てみろよ、ケイジ……。これ……」
「うげっ……。マジかよッ……。振り切ってんな針……」
「なっ……。言った通りだろう……」
「これはぁ……。スコープに異常がないのだとしたら、やばい数値だよな。自然界ではまずあり得ないだろう……。どのくらいの頻度なんだ? 記録装置には録ってあるのか?」
「ここ一週間は、毎日不規則に出てくるんだ。最初は俺もバグだと思っていたから記録は録っていなかったんだ。だが、一昨日からは録ってある……」
「一昨日からかぁ……。データとしては説得力に欠けるな……、まぁ、ないよりはましか……。キド、計測器に内臓の記憶装置じゃ4日分程度しか保存しておけないだろうから……、ほら、容量超えると上書きされちゃうから、外付けかサーバーに繋いで、これからの分もずっと、てか全部記録しておいた方がいいかもな……」
「そうだな……。オーケー、わかった……。なぁ、言った通りだろう……」
「一体、この広い宇宙のどこから放出されているんだ……?」
「おそらく……、おそらく、アルタイルからだと思うんだ……」
「アルタイルって……、あの、夏の大三角形のアルタイル……、七夕の彦星のことか?」
「あぁ……、このスコープは古いタイプだけど、やたらとピンポイントの指向性だけは強いんだよ。で、このスコープがアルタイルの方に向いたときにだけ、この強い電磁波を拾うんだ……」
「誤差も考えてみたか? 他に人口衛星含めて、疑わしい物体とか星はないのか?」
「あぁ……、他は考えにくい……。このスコープが拾うことのできる範囲内で、これだけの電磁波を放出することができるのは、太陽の2倍近い質量がありながら太陽の70倍近い速さで自転しているアルタイルぐらいしかないんだ……」
「アルタイル……か……」
「まだまだそんな時期じゃないはずだけど、ブラックホール化が進んでいるっていうことか……?」
「まぁ、時間の経過って観点からだと、俺たちの常識では測れないからな、宇宙に関しては……。ちょっと俺のスコープもそこに向けてみよう。キド、アルタイルの座標をくれっ!」
「あぁ……、今、送る……」
「あと……、大学や学会……、それに気象庁やらで、アルタイル関連の情報が流れていないか……、ちょっと見てみよう……」
「わかった、じゃ、俺はそっちを見るよ……」
「あぁ、頼む……。よしっ……、これで、アルタイルに向いた……」
「ケイジ……」
「ん? 何か、わかったか?」
「いや、ダメだな……。天体関連のどのホームページやチャットを見ても、わし座方面の異常については報告されていないなぁ……」
「JAXAはどうだ?」
「あぁ、そっちも見たけどな……。何もない……」
「ひょっとしたら、これは、大きな発見かもしれないぞ……。一番近い国の観測所はどこだっけ?」
「えーっと、野辺山に宇宙電波観測所があると思ったけど……」
「俺たちのような民間ではなく、国立がいいだろう……。連絡してみよう。おっ、来たっ……。キドッ! 俺のスコープでも異常値が受信されたっ! お前の機械がおかしかったわけじゃないっ! やっぱり、何か異変があるんだっ! 普通じゃない、普通じゃないぞぉ、ひょっとして、俺たちが世紀の大発見の第一号かもしれないぞぉ!」
―――南アルプス天体観測所。
「まただ……。ったくぅ……。こんな数値あるわけない……」
「またかよ、キド。お前のスコープ、調子悪いんじゃないのか?」
「そんなことはないと思うんだけどなぁ……。でも、ここ最近よくあるんだよ」
「でも、継続的ではないんだろう? でもって、断続的って言うほどの規則性もないんだろう? なんらかのバグか、スコープがいかれているんだよ。ほら、ダンさんの測定システムもいかれてたって……。お前と同じように、X線とガンマ線だけがやたらと計測されたってコグレさん大騒ぎしていたけど、テスターにかけたら結局スコープがぶっ壊れていたんだと……。だいたい、古いんだよな……。こんな機械使ってっとこ、ほとんどないぜ……。まったくさぁ、注目されない星の観測部署には、予算つけてくれないもんなぁ……。俺たちにも、もっと近場の星や人気の流星群の観測させてほしいよ……、だいたい……」
「そうなのかなぁ……。でも、一応、テスターにはかけたんだよ、俺のも……」
「へー、そうなんだ⁉︎ で、正常だったのか?」
「あぁ、誤差に関しては、さすがに最新の機種に比べれば幅は大きけど、中央値を取るのに不足はないし、メンテナンスだけはちゃんとしているから、回路のどこ調べても、不具合ないって……」
「じゃあ、なんだ……? 本当に……、おかしいのか?」
「だから、よくわからないんだ……。ここの近隣で、放射線を発生させるような機械や施設があるか……、例えば、病院かなんか……」
「何言っちゃってんだよ、こんな山奥だぜ……。登山するほど身体が元気なら、病院なんか行かないし……」
「うおっ……。まただっ‼︎」
「えっ……⁉︎ なんだ? どうしたよ?」
「ほらっ、見てみろよ、ケイジ……。これ……」
「うげっ……。マジかよッ……。振り切ってんな針……」
「なっ……。言った通りだろう……」
「これはぁ……。スコープに異常がないのだとしたら、やばい数値だよな。自然界ではまずあり得ないだろう……。どのくらいの頻度なんだ? 記録装置には録ってあるのか?」
「ここ一週間は、毎日不規則に出てくるんだ。最初は俺もバグだと思っていたから記録は録っていなかったんだ。だが、一昨日からは録ってある……」
「一昨日からかぁ……。データとしては説得力に欠けるな……、まぁ、ないよりはましか……。キド、計測器に内臓の記憶装置じゃ4日分程度しか保存しておけないだろうから……、ほら、容量超えると上書きされちゃうから、外付けかサーバーに繋いで、これからの分もずっと、てか全部記録しておいた方がいいかもな……」
「そうだな……。オーケー、わかった……。なぁ、言った通りだろう……」
「一体、この広い宇宙のどこから放出されているんだ……?」
「おそらく……、おそらく、アルタイルからだと思うんだ……」
「アルタイルって……、あの、夏の大三角形のアルタイル……、七夕の彦星のことか?」
「あぁ……、このスコープは古いタイプだけど、やたらとピンポイントの指向性だけは強いんだよ。で、このスコープがアルタイルの方に向いたときにだけ、この強い電磁波を拾うんだ……」
「誤差も考えてみたか? 他に人口衛星含めて、疑わしい物体とか星はないのか?」
「あぁ……、他は考えにくい……。このスコープが拾うことのできる範囲内で、これだけの電磁波を放出することができるのは、太陽の2倍近い質量がありながら太陽の70倍近い速さで自転しているアルタイルぐらいしかないんだ……」
「アルタイル……か……」
「まだまだそんな時期じゃないはずだけど、ブラックホール化が進んでいるっていうことか……?」
「まぁ、時間の経過って観点からだと、俺たちの常識では測れないからな、宇宙に関しては……。ちょっと俺のスコープもそこに向けてみよう。キド、アルタイルの座標をくれっ!」
「あぁ……、今、送る……」
「あと……、大学や学会……、それに気象庁やらで、アルタイル関連の情報が流れていないか……、ちょっと見てみよう……」
「わかった、じゃ、俺はそっちを見るよ……」
「あぁ、頼む……。よしっ……、これで、アルタイルに向いた……」
「ケイジ……」
「ん? 何か、わかったか?」
「いや、ダメだな……。天体関連のどのホームページやチャットを見ても、わし座方面の異常については報告されていないなぁ……」
「JAXAはどうだ?」
「あぁ、そっちも見たけどな……。何もない……」
「ひょっとしたら、これは、大きな発見かもしれないぞ……。一番近い国の観測所はどこだっけ?」
「えーっと、野辺山に宇宙電波観測所があると思ったけど……」
「俺たちのような民間ではなく、国立がいいだろう……。連絡してみよう。おっ、来たっ……。キドッ! 俺のスコープでも異常値が受信されたっ! お前の機械がおかしかったわけじゃないっ! やっぱり、何か異変があるんだっ! 普通じゃない、普通じゃないぞぉ、ひょっとして、俺たちが世紀の大発見の第一号かもしれないぞぉ!」
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