ダンジョンチケット

１５章 知界

ダンジョンチケット１８９

拓武は知界が人間界に介入していた事実に困惑した。 
人間界にある殆んどの知識が知界から贈られた物であり、それを人間は自身の構成気として次の世代に受け継いで来たのだなと感じると心なしか、寂しさに似た感情と情けなさが込み上げてきた。

それと同時にナノが拓武に謝りの言葉をかけたのだ。

「拓武、人間界の事、本当に申し訳無く思う、謝罪して済む問題では無いが本当にすまない」

拓武は其の言葉に息を飲んだ。

「どういう意味だ！説明してくれ」
そう問いかけると、ナノは教えてくれた。人間界に何が起きたのか出はなく、何が仕組まれたのか。

知界の王が前王、バルトライダに変わった際に、人間界との交流を再開する計画が建てられた事がナノの調査で解ったのだ。
そして、其の計画の裏で暗躍していたのがアインだった。

アインは、人間界に新たな知識を次々に与えていった。

中でも一番、人間が興味を示したのが宇宙開発における、人工衛星の基礎の設計の見直しであった。
従来の何倍ものステーションの建設に掛かる時間の短縮や、新しい宇宙服の技術提供、更には推進ロケットのブースターの設計における、バグの修正、人間界が何十年と取り組んできた問題を、意図も容易く解決していったのだ。

まさに神の様な存在に見えた事だろう、しかし、それは悪魔の囁きであった。

アインは人間の信頼を勝ち取り、地盤を築いていく。
そして、月への調査を進言したのだ。

アインの築いた信頼、その信頼が在ればこそ、誰もが月を目指すことになる。

人間界の絶望の秒読みがこの時既に始まっていたのだ。
全ての世界が月を独自に目刺し与えられた知識をフルに使い、新たな船を完成させる。

スペースシャトルの技術の進歩を促したアインの知識は、其ほどに人間の欲を掻き立てたのだ。

そして、人類が新たに月の裏側へと到達した。
アインの思い描く人間界と月との禁忌に触れる結果となった。

その出来事がきっかけで人間界の加護が無くなる。
その話を聞き、拳を握り締めた。

「つまり、人間界が滅んだのは…… 知界の介入があったからなのか…… 」

拓武にナノが頭を下げた。

拓武はナノを責める気はなかった。
「ナノ！頼むがある、アインが人間界を何で滅ぼしたかったのかを知りたいんだ、調べてくれないか」

ナノが頷き直ぐに拓武達は、アインの管理していたラボを目指した。