ダンジョンチケット

１６章 人間界にて

ダンジョンチケット１９５

拓武はナノに、今ある情報を整理して貰い、大体の今の現状を推測してもらう。

人間達が戦い続けた少なくとも５年の内にどれ程の被害が出たのかを改めて計算してもらう。

結果は散々な物であった。
ハッキリ言えば、人類はあと２年足らずで、完全に魔族に滅ぼされれだろう。
人間達に其れを伝えても仕方ないので、取り合えず彼等の情報を頼りに近隣の魔族を一気に狩っていく。
被害がなるべく出ない様に拓武やバーダ達が戦闘の際には先に出た。
全体を判断する軍師をモシュネに任せることで、作戦は順調に進んでいく。

その間、ナノが敵、魔族を観察し、特徴などを書いていき、種族などを調べていく。
実際にこれ程上手く戦えるとは思っていなかった拓武は、次々に勝利したと言う報告を喜びながら聞いていた。

その日、拓武達は倒した魔族達の住みかを探索し、一日目の人間界を終了した。

しかし、その日の夕食時に、人間からの使者を名乗る者が拓武達を訪ねてきたのだ。
男は礼儀を知らないのか、いきなり軽い挨拶をしたかと思えば、自分達の味方をしろと言う内容の話をし始めた。

「なあ？アンタさ、いきなり夕食時に来て好き勝手言い過ぎだ、食い終わるまで待っててくれ」

そう言うと拓武達は食事を再開した。
しかし、其れを見た人間の男が小さな舌打ちをしたのが拓武には、わかった。

その途端、拓武が立ち上がる。
其れを見て全ての兵が食事を中断した。

「すまないが、御前の上司に伝えてくれ、話し合う気は無いとな、元より俺達は俺達の為に戦うのみ！」

「ふざけるな！同じ人間なら、助けるのが当たり前だろう！」
其れを聞き男達は激怒したが拓武からしたら関係無いことだった。
更に声を荒げた男に対しモシュネが口を挟んだ。
「思い上がりだな、主様と貴様らの立場が同じ訳があるまい！本来ならば、今すぐその口を縫い付けて２度と主様にその口を開けないようにしたいが、お優しい主様は、其れを望まない…… よかったな！人間」

モシュネの本気の眼と、他の者達の表情が男に突き刺さる。

男達は悔しそうに、とぼとぼ歩いて帰っていく。
拓武達は、人間界の悲惨な現状を目の当たりにしたのだった。