ダンジョンチケット

１６章 人間界にて

ダンジョンチケット２００

「主様、御気づきとは思いますが、観られていますね」

「ああ、間違いなく観られてるな、敵意を感じないんだ、多分？大丈夫だと思う」

「そんな事まで分かるのですか？」

「何となくだけどね！」

拓武は幾多の戦いの中で過去の自分つまり、クリュメノスやルーダガンの頃に経験した感覚が覚醒していた。
其れはまさに歴戦の記憶であり今を生きる何人にも辿り着けない感覚の極致と言えるだろう。

拓武達は其れから更に魔族達と戦闘を続けていた。
プレマディウスの件もあり、極力魔族を生かしたままで捕らえる事にした拓武達に対して、人間との溝は更に深まるば かりであった。
そして、魔族を拘束し次に向かう度に拓武達のあとを追うように人間達が拓武達の襲撃後の魔族を襲うようになっていた。

拓武はこの事態を重く受け止めていた。
自分達が魔族を生かしても、その後に人間が攻めて滅ぼすのでは意味がないからである。

そして、今日も拓武達は戦闘を開始する何時もの様に倒した魔族を拘束し全てが終わるとその場をあとにする。

其れを確認したかの様に人間達が姿を現し魔族を襲撃すら。
しかし、人間達に予想外の行動が起きたのだ。

「全員、その場を動くなぁぁぁ！」

大気を震わせるような大声が魔族の集落に響き渡る。
人間達が声のする方を一斉に振り向く。
そこには、太陽を背に此方に向かい移動してくる集団があった。

人間達が武器を力強く握る。
そして恐怖にかられた一人の人間が銃を拓武に向けて発射した。
其れをキーメイスが時間魔法、“デスタイム”を使い塵にかえる。

其れを合図に拓武が手を天高く掲げる。

「話し合いは無しだ！全員掛かれェェェ！」

拓武の掛け声と共に一斉に人間に襲い掛かるリザードマンや竜人、そしてボーンナイツの大軍、更に拓武は以前戦った烈火隊の隊長を見つけると一気に空から急降下すり。

「残念だ！出来れば人間同士で戦いたくはなかったんだがな！」
拓武の言葉は既に戦う事を前提に進められていた。
其れを理解した烈火隊、隊長はただ銃を構えた。
「この距離なら外れんぞ！悪魔が！」