ダンジョンチケット

１７章 魔王と冥王

ダンジョンチケット２１１

「気安く呼びな！外道が今すぐ因縁の鎖を断ち切りルシファー様の前にお前の首を晒してくれるわ！」 

そう口にしたバティーンは車椅子に乗った小さな女性であった。
その車椅子を押すプレマディウスが拓武に頭を下げる。

「プレマディウス！私に足を貸しなさい！あの老害に引導をくれてやるわ」

「そう言われると思い、用意は出来ております。バティーン様」

そう言うとバティーンの両足に直ぐ装具がつけられた。

「バティーン様、御時間の事だけはお忘れなく」

「わかっておる！なぁに、老人にキツい仕置きをするだけの話、時間は掛からぬ！」

拓武は状況がわからなかったが１つ分かるのはプレマディウスとバティーンの両名がフルカッスと敵対していると言う事実であった。

拓武はその隙にベルゼに向けて走り出した。

「冥界王！止まってください！危ない」
ピレマディウスが叫んだ。
拓武は即座に後ろに後退する。
その時、拓武の目の前に黒い刃が突き立てられていた。
「残念だ、あと半歩前にいたなら全てが終わったんだがな」

拓武の目の前に現れたのは獅子の顔をした戦士であった。

「くっ、お前は誰だ！」
拓武の問いに獅子の戦士が真っ直ぐ拓武を見て答えた。

「俺はサブナック、今はベルゼ様の騎士なり！」

そう言うと突き立てた剣を抜くと後ろに向けて高く跳んだ。
サブナックは後方に止まっていた蒼い馬の上に着地した。

バティーンはサブナックを見るなり目をひきつらせた。

「サブナック！魔神でありながらベルゼに付きし裏切り者が騎士を語るか！」

「これは懐かしい、バティーンではないか、お前の部下はどうした？」

「キサマァァァ！よくもそんな口を！」

怒りに任せ声をあげるバティーンをプレマディウスが必死に止める。
そんなバティーンを嘲笑うようにフルカッスが笑みを浮かべた。

「バティーン、どうだ？ベルゼ様の下につけ、賢いお前なら理解してるだろう、変革の時だ！」

「その口を閉じろ…… 我が主は大魔王ルシファー様のみ！初代ベルゼブブのように偽りの魔王は我らが手で葬るのみ！」

フルカッスとバティーンの睨みあいの中で拓武とサブナックも互いの距離を保ちつつ武器を構え、その時を待っていた。