ダンジョンチケット

夏カボチャ

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19章 月界の長と凍結の支配者

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 アースの登場は誰も予想しなかった。ゲートを使わず世界を移動するその力は、かぐやも予想はしていたのだろうが、その表情は険しいものであった。

「アース……まさか、月界に足を運ぶとは正直驚いたぞ。妾は月界以外ならソナタの存在に干渉しないと誓ったが月界ならば話は違う!」

 かぐやがそう語ると、室内のあらゆる影から武装した兵士達が姿を現しアースの周囲を囲み槍と剣が向けられた。広い室内に緊張が走る。

 拓武は全員に手を出さないように合図を送り隊長達も指示を皆に伝える。

「参ったなぁ? 僕は拓武に力を貸して欲しくてお願いに来たんだけど、戦いたいの?」

 アースの一言に月界の兵士に再度緊張が走った。事態が理解できない拓武を他所に話は続いていく。

「なぁ、かぐや。僕は別に構わないんだよね。喧嘩したいなら相手になるさ、でも拓武の為に今も我慢してるんだ……拓武は頑張って来たんだ助けてやってよ」

「アース……主だけは得体が知れぬ! だからこそ! 主の願いは聞けぬ。今すぐ立ち去るがよい!」

 涼やかな笑顔を浮かべるアースと輪としたキツい表情を浮かべるかぐや。互いに譲らぬと言う意思が交差する中、先に動いたのはアースであった。

「なら帰るよ。言いたいことは伝えたからね。僕が帰るんだから拓武の力にはなってあげてよ? じゃないと僕は怒っちゃうかも、何てね? アハハハハ」

 アースは笑いながら姿を消した。そして全ての矛先は拓武達に集中する。

「拓武……アースとはどういう繋がりか!」

 真っ直ぐな瞳が拓武の方に向けられた。

「アースは俺が目覚めた時に目の前にいたってだけで詳しくは知らないんだけど、色々と力を貸してくれたり助けてくれた恩人です」

「アースが人助け、解せない……月の羅針盤を戻したいといったな拓武よ」

 かぐやからの言葉に頷く拓武。

「済まぬが出来ぬ、もし出来たのならば、力を貸さなくもないが妾一人では出来ぬのだ」

 かぐやは、一人では出来ないと語り訳を語った。月の羅針盤は、一度動かせば一世紀の時を待たねば使えない代物であり、時滑りの力を要した物が二人居なければ動かせないと口にした。

「時滑りの民は妾を覗き皆、北欧の悪気神達により滅び去った。今は単なる羅針盤にすぎない」

 拓武はかぐやをじっと見つめ、上着を脱ぎ腕に刻まれた時滑りの証をかぐやに見せたのだ。
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