ダンジョンチケット

夏カボチャ

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19章 月界の長と凍結の支配者

ダンジョンチケット292

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 月界の兵士だけでなく、かぐやすら、その描かれた紛れもない時滑りの紋字を見つめていた。
 しかし、直ぐに、かぐやの表情は冷たく凍り付くような目を拓武に向けた。

「何故だ……何故人間のソナタがその証を時滑りの紋字を持っている!」

 その問いに答えられない拓武を見かねて、モシュネが前にでた。

「失礼だが話を割らせてもらう! 我名は、ムネモシュネ=ムニンイーター。主人、矢武拓武様の前世より遥か以前より忠義を注ぐものなり!」

「それが何故、妾と拓武の話を割るか!」

「主様はフェンリル襲来のおり、自ら食われる道を拒み自身の魂を肉体より解き放ったに過ぎぬと言っているのだ!」

「戯けが! その様な嘘を妾が通じると思うてか!」

「戯けは貴様だ。かぐや! 目の前の事実を受け入れよ! 紛れもなき真実は目の前にある。それに目を背けるなど戯けでしかない!」

「言うたな、小娘よ……」

 そんな中、キーメイスが一言口にした。

「本物か嘘か調べるなら? 羅針盤動かしてみたら良いのに?」

 単純な一言であったが、紛れもなく争う必要が無くなった瞬間でもあった。

 かぐやは羅針盤が動かなければ、拓武の命、つまり魂を封印すると言ってきたのだ。拓武はそれを了承し羅針盤が動いたならば、一世紀から月界が人間界と契約を破棄する前の年に時間を戻すのを手伝う事を約束させた。

 互いに条件を確認した二人は皆に見守られながら、羅針盤のある巨大なホールの中を歩いていく。

 余りに巨大なホールの中に堂々と置かれた羅針盤に互いに手を振れた瞬間。羅針盤に輝きが戻り、ゆっくりと全体が光出した。

「な、誠にソナタは時滑りの生き残りであったか……妾は……すまぬ……」

 拓武に謝るかぐや。その目には涙が浮かんでいた。
 同族を失い、月界にはかぐや以外の時滑りの民は居なくなっていた。永き孤独から解き放たれたかのように涙を流すかぐやは、その涙を拭うと再度羅針盤に手を伸ばした。

「約束じゃ、時を逆流させようではないか」
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