ダンジョンチケット

夏カボチャ

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20章 新なる幕開け

ダンジョンチケット320

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 人間界は既に拓武の生きていた時代へと入っていた。
 全てが始まった夏の日を思い起こさせるような真夏の太陽と強い日差し、拓武はその光景に知らぬ間に涙を溢していた。

「拓武よ、御主は今から春野和羽の運命をねじ曲げて貰う、よいな」

 かぐやの言葉の意味が分からず困惑する拓武。しかし直ぐ、かぐやの意を知ることになる。

 その日、和羽は命を奪われる、悲しくも和羽からそれは始まる、一日、和羽を守り抜ければ世界の流れが完全にリセットされる。それこそ、かぐやが拓武を人間界に連れてきた理由であった。

 拓武は只頷き、全ての神経を和羽に集中させた。
 簡単に考えれば一日を無事に過ごさせればいいだけだが、運命を決めるモノはそれを赦そうとはしなかった。
 即座に拓武は、かぐやの隣を離れると和羽に目掛けて坂を下る無人のトラック、拓武はトラックのタイヤを誰にもバレないようにパンクさせると反対側からトラックを横転させた。

 和羽の目の前ギリギリ停止するトラック、しかし横転した拍子に荷台のロープがちぎれ和羽を襲う。

「イヤァァァァッ!」

 眼を瞑り、両手を顔の前に出す和羽、そんな時目の前に赤と黒の羽を生やした一人の青年が姿を現した事に気づく。

「堕天使……?」と、印象から口を開いた次の瞬間、荷物は和羽の横に放られると姿は無くなっていた。

 その日、和羽が寝るまでの間に数件の事故と転落などといった命の危機に襲われたが全ては失敗に終わる。

 そして、日を跨ぐまで残り一時間となった時、和羽の家の頭上に顔の無い本を持った男が姿を現した。

「お前が和羽を狙ってる張本人なのか?」

「…………失礼した……口を作るのは、何世紀振りでな、如何にも我は運命を紡ぎし者、フェンリルよ。大人しく退くがよい、我が予言はハズレぬ、そして、予言の通りに運命を紡ぐのみ」

「悪いな、俺は大予言がハズレた時から予言は信じないんだ、それより見逃してくれないか? 和羽は今を生きているんだ」

 拓武の言葉に作られたばかりの口許が下品に歪む。

「春野和羽から何万の死が始まる……それが運命だ」
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