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後日譚
後日譚534.聖女はいつもの結論に至った
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茶木姫花は聖女である。多くの勇者の特徴である黒髪黒目という特徴を持っていないが、紛れもなく神々から直接加護を授かった『勇者』である。
以前は悪い意味で有名だったのだが、最近は加護を用いた仕事も順調で、その結果良い意味で名が広まっていた。
そんな彼女だが、溜まったお金で家を買った。
前世はそこそこ裕福な家庭に生まれたので、同じ屋根の下で知らない人と一緒に寝泊まりする宿暮らしにはストレスが溜まっていたようだ。
結婚相手であるシルダーは元々兵士だった事もあり、そういうのには慣れている様だったが、姫花の希望を聞き入れてある程度お金も出していた。
ファマリアに新居を構える事が出来たら楽だったが、流石にそれは叶わなかったので利便性と仕事の需要を考えた結果ダンジョン都市ドランに家を建てた彼女は、朝早くに目を覚ますとまだ見慣れない室内を見渡した後、視線を扉の方へと向けた。
「…………昨日も遅かったのに、ちゃんと寝てんのかな」
大きく欠伸をした姫花は、こだわって作らせた風呂で体を清める事にしたらしい。
昨夜の内に用意しておいた着替え一式を両手で持つと、部屋を後にして向かった先はお風呂場である。
そこまで大きくない家に風呂があるのはドランでも珍しいのだが、これだけは譲れないという事でわざわざ作らせた浴室である。魔法によっていろいろな処置が施されている。だが、見た目は普通の浴室だった。
前世のお風呂よりも少し手狭だが、肩まで浸かる事ができるくらいの浴槽があれば十分だ、と姫花は自分に言い聞かせながら体を清める。
どこかの街にある公衆浴場とは違って『魔動シャワー』なんて便利な物はない。だが、廉価版の沸騰魔石や入浴魔石は大量にあるので少し不便だな、程度で済んでいた。
「……今度、報酬として求めて見るのもあり? いや、でもめっちゃ高いだろうし、しばらくタダ働きさせられるかもしれないし……やっぱなしかなぁ。いや、でもいちいち魔石買うのめんどいしなぁ」
贅沢な悩みについて思考している間もファマリア産のシャンプーとリンス、それからボディーソープを使って体を清める手は止めない。
体を洗い終わる頃には沸騰魔石と入浴魔石のおかげで浴槽にお湯が溜まり、溢れていた。排水溝からどんどん流れているお湯を見て慌てる様子もなく二つの魔石を止めた彼女は肩までお湯に浸かった。
お湯に浸かっているといろいろな事が頭に浮かんでは消えていく。だが、ふと引っかかった事が口から出た。
「子ども、か」
静人は既に十人以上の子どもがいる。明もまた、お嫁さんが子どもを身籠ったという相談があった。陽太からの手紙でも子どもを授かったという話がほんの少しだけ出てきていた。
一緒に転移してきた者たちの中で唯一子どもがいないからか、最近は特に子どもについて考える。
「……前世だったらこんな事考えなかったんだろうけど」
日本であれば初産の年齢はもう少し先だったはずだ。だが、この異世界では成人になるのも早ければ結婚するのも早い。そして、第一子を出産する年齢もまた早かった。
神様から授かった『聖女』の加護を理由に出産に立ち会う事が多いからこそ、それをより実感していた彼女は、自分がだいぶ遅れている事に気付いていた。
「別に、誰かと競う訳じゃないけど……。シルダーも何も言ってこないし、気にする事はないんだろうけど……」
子どもが欲しいかと問われれば人並みには欲している姫花である。
だが、子どもを産むという事は一定期間働く事が出来なくなるという事である。
欲しかったから買った家は一括払いだったので問題はないが、維持するのにもお金がかかるし、生活するのにもお金がかかる。
贅沢を止めればいい話なのだが、一度上げてしまった生活水準を下げるのは難しい。姫花の性格だと猶更だ。
シルダーの収入だけでは正直心許ない。だが、ダンジョンで稼ぐために危険を冒してほしいとは思っていない。
そうなると必然的に自分が稼ぐしかなくなる。
「……やっぱりしばらくは子どもはしばらく無しかな」
結局いつもの結論に達したところで彼女は風呂から出た。
体のケアをするためにファマリア産の各種化粧品もどきを体に塗ってから服に袖を通した彼女は、シルダーがいるであろう場所へと足を向けた。
家を建てる際にシルダーから唯一要望があった鍛錬をするスペースである庭に、やはり彼はいた。
寡黙なその男は姫花に気付いた様子もなく、半裸で一心不乱に武器を振っていた。
「……体力どんだけあんのよ」
昨夜の事を思い出してついつい本音がこぼれてしまったが、姫花はしばらくの間、彼の筋肉の動きを何となく眺め続けるのだった。
以前は悪い意味で有名だったのだが、最近は加護を用いた仕事も順調で、その結果良い意味で名が広まっていた。
そんな彼女だが、溜まったお金で家を買った。
前世はそこそこ裕福な家庭に生まれたので、同じ屋根の下で知らない人と一緒に寝泊まりする宿暮らしにはストレスが溜まっていたようだ。
結婚相手であるシルダーは元々兵士だった事もあり、そういうのには慣れている様だったが、姫花の希望を聞き入れてある程度お金も出していた。
ファマリアに新居を構える事が出来たら楽だったが、流石にそれは叶わなかったので利便性と仕事の需要を考えた結果ダンジョン都市ドランに家を建てた彼女は、朝早くに目を覚ますとまだ見慣れない室内を見渡した後、視線を扉の方へと向けた。
「…………昨日も遅かったのに、ちゃんと寝てんのかな」
大きく欠伸をした姫花は、こだわって作らせた風呂で体を清める事にしたらしい。
昨夜の内に用意しておいた着替え一式を両手で持つと、部屋を後にして向かった先はお風呂場である。
そこまで大きくない家に風呂があるのはドランでも珍しいのだが、これだけは譲れないという事でわざわざ作らせた浴室である。魔法によっていろいろな処置が施されている。だが、見た目は普通の浴室だった。
前世のお風呂よりも少し手狭だが、肩まで浸かる事ができるくらいの浴槽があれば十分だ、と姫花は自分に言い聞かせながら体を清める。
どこかの街にある公衆浴場とは違って『魔動シャワー』なんて便利な物はない。だが、廉価版の沸騰魔石や入浴魔石は大量にあるので少し不便だな、程度で済んでいた。
「……今度、報酬として求めて見るのもあり? いや、でもめっちゃ高いだろうし、しばらくタダ働きさせられるかもしれないし……やっぱなしかなぁ。いや、でもいちいち魔石買うのめんどいしなぁ」
贅沢な悩みについて思考している間もファマリア産のシャンプーとリンス、それからボディーソープを使って体を清める手は止めない。
体を洗い終わる頃には沸騰魔石と入浴魔石のおかげで浴槽にお湯が溜まり、溢れていた。排水溝からどんどん流れているお湯を見て慌てる様子もなく二つの魔石を止めた彼女は肩までお湯に浸かった。
お湯に浸かっているといろいろな事が頭に浮かんでは消えていく。だが、ふと引っかかった事が口から出た。
「子ども、か」
静人は既に十人以上の子どもがいる。明もまた、お嫁さんが子どもを身籠ったという相談があった。陽太からの手紙でも子どもを授かったという話がほんの少しだけ出てきていた。
一緒に転移してきた者たちの中で唯一子どもがいないからか、最近は特に子どもについて考える。
「……前世だったらこんな事考えなかったんだろうけど」
日本であれば初産の年齢はもう少し先だったはずだ。だが、この異世界では成人になるのも早ければ結婚するのも早い。そして、第一子を出産する年齢もまた早かった。
神様から授かった『聖女』の加護を理由に出産に立ち会う事が多いからこそ、それをより実感していた彼女は、自分がだいぶ遅れている事に気付いていた。
「別に、誰かと競う訳じゃないけど……。シルダーも何も言ってこないし、気にする事はないんだろうけど……」
子どもが欲しいかと問われれば人並みには欲している姫花である。
だが、子どもを産むという事は一定期間働く事が出来なくなるという事である。
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