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後日譚
後日譚540.事なかれ主義者は聞こえなかった振りをした
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道づ……仲間が揃ったので転移陣を起動して目的の街であるオールスターへ移動した僕たちは、そのままジュリウスに案内されるがままに移動して馬車に乗り込んだ。
小雨が降っている中を馬車が進み、今回の目的地である迎賓館へと向かう中、ムートさんが口を開いた。
「今回の会談相手は誰でしたかな?」
「陽太です。今代のシグニール大陸の勇者と言えば分かりますか?」
「……ああ、あの男ですか。ラグナが不思議がっていましたよ。あまりいい印象を持っていないであろう人物の求めに応じてわざわざ私に声をかけるのはなぜだろうか、ってね。どっちの意味で言ったかは気になるところでしたが、シズト殿の反応を見る限り、ヨータとかいう男をなぜ助けるのか、という意味なんでしょうね」
「大した理由はないですよ。あまりにもしつこかったから対応するだけです。こっちで頑張っているマナブさんたちに迷惑もかけられないですから」
お爺さんというよりは渋いおじ様という感じの風貌のムートさんが不思議そうに首を傾げているけど、本当にそれくらいの理由しかない。
まあ、強いてあげるとしたら前世の知り合いが困っていて見捨てると寝覚めが悪そうだ、というだけの話なんだけど、陽太に関しては自業自得な気がするので放っておいてもいいような気もしなくもない。
そんな事を考えこんでいると、ムートさんは特に追及する事はなくただ一言「そうですか」というとそっと視線を窓の外に映した。
「こちらにはあまり魔道具が普及していないんですね」
「え? ああ、数に限りがあるからでしょうね。それぞれの大陸の魔法の研究が盛んな国に協力してもらって廉価版を大量生産して貰ったり、新たな魔道具を人の手で作ろうと研究していますけど、こちらの大陸では協力してくれる国をまだ見つける事が出来てませんから」
「なるほど。転移門の数が足りていないのであれば、ヨータ殿に懸け橋になってもらうしかない、という訳ですな」
全然そういう事は考えてなかったというか、これ以上面倒事を増やすなとしか思ってなかったんだけど、陽太が上手い事政略結婚とかで国々を繋げてくれたらそうなる可能性もあるのか。
オールダムの運営の中枢にいるマナブさんが今後協力してもらう国々のご令嬢と政略結婚をするのもアリなのかもしれないけど、余計な干渉を受けたくないからとしばらくは結婚とかは考えていないらしいし……。
いや、でも陽太だし、難しいか。
迎賓館の一室に通されたけれど陽太はいなかった。どうやら別室で待機させられているらしい。
「ここで待たせておけばよかったんじゃない?」
「あくまで向こうの立場が下ですから」
ギュスタンが端的にそう言った。きっと室内で出迎えさせた時の相手の態度が心配だったんだろう。
今回は全くかかわりのない先代のドラン公爵がいるので失礼な事はさせたくないし、これで良かったのかもしれない。
陽太が来るまでは座って待っていよう、という事になり、何人も机を囲めそうな大きな長机と一緒に置かれていた椅子に促されるがまま座る。
面接をする試験官はこんな気持ちだったんだろうか、なんて事を考えながら全員片側にまとまって座って談笑していると、扉が開かれた。
「おい、シズト! なんで夜に来るんだよ!」
「時差があるんだからしょうがないでしょ」
不機嫌そうに入ってきた陽太は、僕一人じゃない事に驚く様子もなく、一つだけ誰も使っていなかった椅子に腰かけた。
「……聞いていた以上に躾がなっていないようだ」
「はぁ? なんかいったか、爺さん」
「はて、何の事かさっぱりです。それよりもシズト殿、我々の事を紹介してもらえますかな?」
「あ、うん」
一瞬空気がひりついた感じがしたけど気のせい、ではないよな。
気にはなるけど、伝える前に陽太がこれ以上失言をしないように紹介しなければ。こうなるのなら事前に誰を連れて行くか伝えておけばよかったな。
「前回、一夫多妻でも家庭内に問題を起こさせない方法の相談に応えたわけだけど、それで納得しなかったみたいだから複数のお嫁さんを娶っている人に来てもらったんだよ。二人とも貴族だからくれぐれも不敬な事はしないでね」
「わーってるよ」
「…………アレはシズト殿が王族である事を理解しておるのか?」
「していないでしょうね。シズト様の許可が下りれば率先して首を落とすのですが……」
……なんだかぼそぼそとムートさんとジュリウスが話をしているけど聞かなかった事にして、まずはギュスタンさんを紹介する事にした。
「何回かあった事はあるよね? クレストラ大陸のファルニルって言う農業が盛んな国の辺境伯ギュスタンさんとその正室のサブリナさん。貴族の中でも上の方の位の人だから無礼な事はしないでね?」
「わーってるって」
「で、こっちの人はドラゴニア王国の先代ドラン公爵であるムートさん。……王族に次ぐ位の高い人だし、僕も今回初めて会う人だから庇ってあげられないからね。本当に気を付けてね」
「分かってるって言ってんだろ」
本当かなぁ。心配だけど、じろじろとサブリナさんの事は見ないからそこら辺は信じるしかないか。
小雨が降っている中を馬車が進み、今回の目的地である迎賓館へと向かう中、ムートさんが口を開いた。
「今回の会談相手は誰でしたかな?」
「陽太です。今代のシグニール大陸の勇者と言えば分かりますか?」
「……ああ、あの男ですか。ラグナが不思議がっていましたよ。あまりいい印象を持っていないであろう人物の求めに応じてわざわざ私に声をかけるのはなぜだろうか、ってね。どっちの意味で言ったかは気になるところでしたが、シズト殿の反応を見る限り、ヨータとかいう男をなぜ助けるのか、という意味なんでしょうね」
「大した理由はないですよ。あまりにもしつこかったから対応するだけです。こっちで頑張っているマナブさんたちに迷惑もかけられないですから」
お爺さんというよりは渋いおじ様という感じの風貌のムートさんが不思議そうに首を傾げているけど、本当にそれくらいの理由しかない。
まあ、強いてあげるとしたら前世の知り合いが困っていて見捨てると寝覚めが悪そうだ、というだけの話なんだけど、陽太に関しては自業自得な気がするので放っておいてもいいような気もしなくもない。
そんな事を考えこんでいると、ムートさんは特に追及する事はなくただ一言「そうですか」というとそっと視線を窓の外に映した。
「こちらにはあまり魔道具が普及していないんですね」
「え? ああ、数に限りがあるからでしょうね。それぞれの大陸の魔法の研究が盛んな国に協力してもらって廉価版を大量生産して貰ったり、新たな魔道具を人の手で作ろうと研究していますけど、こちらの大陸では協力してくれる国をまだ見つける事が出来てませんから」
「なるほど。転移門の数が足りていないのであれば、ヨータ殿に懸け橋になってもらうしかない、という訳ですな」
全然そういう事は考えてなかったというか、これ以上面倒事を増やすなとしか思ってなかったんだけど、陽太が上手い事政略結婚とかで国々を繋げてくれたらそうなる可能性もあるのか。
オールダムの運営の中枢にいるマナブさんが今後協力してもらう国々のご令嬢と政略結婚をするのもアリなのかもしれないけど、余計な干渉を受けたくないからとしばらくは結婚とかは考えていないらしいし……。
いや、でも陽太だし、難しいか。
迎賓館の一室に通されたけれど陽太はいなかった。どうやら別室で待機させられているらしい。
「ここで待たせておけばよかったんじゃない?」
「あくまで向こうの立場が下ですから」
ギュスタンが端的にそう言った。きっと室内で出迎えさせた時の相手の態度が心配だったんだろう。
今回は全くかかわりのない先代のドラン公爵がいるので失礼な事はさせたくないし、これで良かったのかもしれない。
陽太が来るまでは座って待っていよう、という事になり、何人も机を囲めそうな大きな長机と一緒に置かれていた椅子に促されるがまま座る。
面接をする試験官はこんな気持ちだったんだろうか、なんて事を考えながら全員片側にまとまって座って談笑していると、扉が開かれた。
「おい、シズト! なんで夜に来るんだよ!」
「時差があるんだからしょうがないでしょ」
不機嫌そうに入ってきた陽太は、僕一人じゃない事に驚く様子もなく、一つだけ誰も使っていなかった椅子に腰かけた。
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「あ、うん」
一瞬空気がひりついた感じがしたけど気のせい、ではないよな。
気にはなるけど、伝える前に陽太がこれ以上失言をしないように紹介しなければ。こうなるのなら事前に誰を連れて行くか伝えておけばよかったな。
「前回、一夫多妻でも家庭内に問題を起こさせない方法の相談に応えたわけだけど、それで納得しなかったみたいだから複数のお嫁さんを娶っている人に来てもらったんだよ。二人とも貴族だからくれぐれも不敬な事はしないでね」
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