【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
1,383 / 1,408
後日譚

後日譚571.エルフの休日『一日目』

しおりを挟む
 元々世界樹の番人は、世界樹の使徒と世界樹を守るために組織された。
 それがいつからか番人の私利私欲にも使われるようになり、労働環境は組織された頃よりもさらに悪化の一途を辿って行った。
 そんな状況でも疑問に思わなかったのはそういう風に教え込まれていたからだろう。

「休暇、ですか?」
「うん、そう。ほら、ジュリウスって休みなくずっと働いているでしょ? 定期的にお休みを用意しようかなって」
「お気持ちは有難いのですが、必要ありません。残りの人生は贖罪と、布教、それからシズト様のサポートに費やす事を神に誓いましたので」
「いや、でもお休みは必要だよ。ファマ様もそう言ってるよ。ねえ、育生?」
「……! うん。ファマさまがいってたよ。やすむのもしごとって」
「常人であればそれは間違いではないでしょう。ただ、私たち――いえ、私は休みなく働く事ができるように訓練を積んできましたから休みは必要ないのです」
「必要なかったとしても、ファマリアで暮らす人たちは全員週休二日制にしてるから。それはジュリウスも適用されるからね? だって、首に同じ物を着けているでしょ?」
「…………シズト様のご命令であれば休みを頂きますが、ご命令ですか?」
「うん、命令」

 極端な程『命令』を嫌がる主がそこまで言うのなら仕方がない、とジュリウスは折れた。
 そうして、ジュリウスは毎週二回、お休みを貰う事になったのだが――。

「ジュリウス、今日はおやすみのはずだよね……?」
「はい。ですから、鍛錬をしているのです」

 お休みを貰った早朝から彼は自室から出て外で鍛錬をしていた。彼の今の守るべき対象であり、主でもあるシズトが話しかけた時には素振りをしていたのだが、それを止めてシズトに向き直った。

「えっと……おやすみなのに鍛錬するの?」
「休みだからこそ鍛錬をするのです。シズト様が安全な場所にいる間は手が空いているのでその時にできる鍛錬を行っておりますが、どうしても偏りが出てしまうので」
「…………えっとさ、鍛錬は何のためにするのかな?」
「強くなるためですね。私の場合は強さを維持するため、な気がしますが」
「要は仕事の時に困らないためだよね? 仕事の準備って事はそれはつまり休んでないって事じゃないかな?」
「休み中は鍛錬禁止、という事でしょうか?」
「いや、お休み中にジムに行って体を鍛える人とかいるだろうし、禁止とまでは言わないけど…………なんというか、想像していたお休みの過ごし方と違ったから……」
「左様でございますか。では、別の事をする事にします」



「……ジュリウス、もしかして午前中からずっとここにいたの?」
「はい、そうですが何か?」

 日が沈み始め、周囲を夕日が橙色に染めている時刻に再び話しかけられたジュリウスは祈りを捧げるのをやめて立ち上がると、シズトを真っすぐ見てから答えた。

「いや、なんというか……思っていたお休みの過ごし方とまた違ったからちょっと気になっただけなんだけど……。出かけたりしないの? 僕は約束通りファマリアから出ないよ?」
「特に用事がありませんから。……出かけた方がよろしいでしょうか?」
「いや、別にそういう訳じゃないけど……」

 シズトが何か言いたそうだったが口を閉ざして去っていったのを見送ったジュリウスはしばらく考え込んでいたが、結局祈りを捧げる事はやめて立ち上がった。ジュリウスの体に纏わりついて日向ぼっこをしていたドライアドたちを振り払い、別館へと戻ったジュリウスは、珍しく他の者と一緒に食卓を囲んだ。

「ジュリウスが一緒に食事するなんて……なんか変な物食べた?」
「ジュリーニくん、そんな事を言うのは失礼だよ。ジュリウスさん、盛り付けはどのくらいが希望ですか?」
「多めに頼む」
「分かりました」

 ニコニコしながら台所の方へと向かって行ったアンジェラ。
 それを見送る事なく、ジュリウスは目の前に座って未だに胡散臭そうに自分を見ていたジュリーニに問いかけた。

「お前は今日、何をしていた?」
「聞かなくてもわかるんじゃない? ジューロの所でのんびり魔道具作りの手伝いをしてたよ」
「シズト様はその事を?」
「知らないんじゃない? 別館になんてほとんど来ないし、魔力探知ができる訳でもないからさ。小難しい顔してるけど、シズト様になんか言われたの?」
「いや。シズト様は何も仰らなかった。それが問題だ」
「気になるならシズト様に聞けばいいじゃん」
「シズト様が言わないという事を選択したという事に何かしらの意味があるはずだ。それを無理矢理聞くのは失礼な事だ。命に関わるような事であればあるいは聞いたかもしれんが……」
「ジュリウスさん、お待たせしました。みんなの準備が整ったし、頂きましょう」

 アンジェラと共に戻ってきた彼女の両親も席に着いた所で食前の挨拶を唱和し、食事が始まった。
 ジュリウスとジュリーニの話を静かに見守っていたジューロやリーヴィアが他愛もない雑談をし始めたが、アンジェラは「先程のお話の事なんですけど……」と食事をしながら話に加わった。

「シズト様は何か仰っていませんでしたか?」
「想定していたお休みの過ごし方と違った、と仰っていたな」
「その言葉の通りなんじゃないですか? お休みなのに休んでいるように思えなかった、とか……」
「……やはり、前後の話からだとそう考えるのが妥当か。だが、休みなんてものは世界樹の番人になってから貰った事はない。いきなり休めと言われても、暇な時間にする事しか思いつかん」
「で、鍛錬と祈りをするだけの日になった、と。遊びに出かけたり趣味に興じたりして欲しかったんじゃない?」
「ふむ」
「きっとシズト様は遊びを強制するのは違うって思って何も言わなかったんですよ」
「……シズト様であれば、そうお考えになるか」

 深読みしすぎるのは自分の悪い癖だな、と思いつつも他の可能性があるかもしれない事を頭の片隅に残したジュリウスはとりあえず食事をするのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...