【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚582.ショタエルフの休日

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 ジュリウスが率いる世界樹の番人には大きく分けて二種類のエルフがいる。
 ジュリウスのように仕事以外を全て捨て去るように教育された者とそうでない者だ。ジュリーニという小柄なエルフの男性は後者だった。
 世界樹の番人になったタイミングが良かったのかもしれない。
 周辺国との諍いや世界樹を狙う者たちが多い時代の者たちはジュリウスのように仕事以外は考えられない状況に追い込まれ、命を落としていった。
 だが、今は比較的平和な時代である。エルフの長い一生の中で、この平和な時がどのくらい続くのかは分からないが、少なくとも今はゆっくりと質を高める事ができる時代である。

「だとしても、我々に休暇は必要ないと思うが……」

 仮面をつけた誰かが言った。ジュリウスほどではないが、比較的古い時代から生きてきたエルフなのだろう。古傷だらけのその体からは過去に壮絶な体験をしてきた事が窺える。
 余計な事を言うなよ、とジュリーニは思ったが、すぐにジュリウスに睨まれたそのエルフは黙る事になった。

「シズト様が我々にはそれが必要だと仰せなのだ。お前たちもしっかりと休むように」

 そんなやり取りが深夜に行われてから数日が経った。ジュリーニの初めての休みの日でもある。
 その索敵能力を買われ、別館で寝泊まりをする事が許されていたジュリーニは朝日が昇る少し前の時間には目を覚ましていて身だしなみを整えていた。
 室内は魔道具の明かりによって照らされていて、彼が姿見の前でなにやら悩んでいるのが窓から覗き込んでいる真っ黒な肌のドライアドにも分かった。

「……これか、いや、こっちの方が良いかな」

 いつかどこかで使う事があるかもしれない、と考えて買い揃えていた人族用の服。それを一通り出した彼はどれを切るべきか考えているようだ。
 今までであれば潜入の時くらいしか私服を着る機会がなかったが、これからはこういう事もしっかりとリサーチしておかないといけないな、なんて事を反省しながら太陽が昇るまでさんざん悩んでいたジュリーニは、朝食の時間を報せる元気な声に反応して組み合わせを色々試すのを辞めるのだった。



「……なんでリーヴィアもいるんだ?」

 朝食を終えて先に別館を後にしたジュリーニは待ち合わせ場所に想定外の人物もやってきたのを見てついそう言ってしまった。
 彼の視線の先にはエルフの女の子がいた。ジュリーニと違ってまだ成長途中の彼女は小柄で、少しずつゆっくりと成長している。ジュリーニの背丈を越えるのも時間の問題だろう。
 そんな彼女は勝気そうな印象を与える緑色の目をいつも以上に吊り上げて、少し不機嫌そうに口を開いた。

「自分から誘っといてなによその言い方!」
「お前は誘ってない!」
「そうだったの? てっきりお休みを皆で合わせて一緒に行こうって話だと思ってたんだけど……どうしようか? やめとく?」

 間に入るように話に入ったのはジュリーニの想い人で、彼と同じく成長が途中で止まってしまい、エルフの標準的な体格にならなかったジューロだ。リーヴィアとお揃いの可愛らしい子ども用の服を着ているが成人済みのエルフである。
 ジュリーニが休日を貰った際、すぐに遊びに誘ったのだがジューロは異性として見られているとは全く思っていなかったようで「みんなで遊びに行こう」と解釈してしまったようだ。
 二人で行こう、と言わなかった自分も悪い、と反省をしつつも、せっかくこうしておしゃれをして街に出ているのに無駄にするわけにはいかない。
 リーヴィアが空気を読んで帰ってくれる事を期待したジュリーニだったが、彼女の想いを知っているからそれも望み薄だろう、と気持ちを切り替えた。

「仕方ない。じゃあ三人で回ろう。別にどこかを予約しているわけじゃないし……とりあえず、他の所から来た商人が持ってきた魔道具でも見て回るか」
「えー、もっと面白い所行きたいんだけど」
「だったら帰ればいいんじゃないか?」

 むしろそうしてくれた方が二人っきりで過ごせていいんだけど、とジュリーニが考えている事はリーヴィアには分かったようで「付き合うわよ! でもその後は私が行きたい場所にも付き合ってよね!」と言った。

「みんなが行きたい場所をそれぞれ回ろっか。……私が行きたいところから行ってもいいの?」
「もちろんさ」
「まあ、お昼ご飯にはちょっと早いから別にいいわ」

 話がまとまったところで三人は移動を開始した。
 ジュリーニを挟むようにジューロとリーヴィアが並んで歩く。
 三人並んで歩いても小柄なので通行の妨げにはなりそうもないのだが、小柄なエルフはこの街ではそこそこ有名なので周りも彼らを気にして進行方向を避けるように歩くため特に何も起きる事はなかった。
 結局ジュリーニは日が暮れるまでリーヴィアも連れて街を回る事になったのだが、ジューロが楽しそうにお喋りをしているのを見てこれはこれで悪くなかったかもしれない、なんて事を思うのだった。
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