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後日譚
後日譚584.元侯爵令息は三つ目を授かった
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ダンジョン国家とも呼ばれるほど無数のダンジョンがあるドラゴニア王国は他国と比べても冒険者にはなるのは簡単だ。
一獲千金の夢がある分、危険もあるため常に人手不足である事に加え、ドラゴニア王国特有の問題もあるからだ。ダンジョンからの魔物の氾濫と言われる事もあるスタンピードである。
管理を怠ればいつかは発生してしまうため、冒険者は常時募集常態である。
そんな国だからこそ、地位も金も女も何もかも失ったユウトは冒険者ユートとして成り上がる事が出来た。
誓いを交わしてしまったから他者を恨む事も呪う事もできなかった彼に残されたのは悔しさをばねにして成り上がる事くらいだったのかもしれない。
神々から授かった二つの加護を使う事で魔物の討伐依頼に苦労した事はなかったし、犯罪者を殺すのも抵抗は全くなかったので護衛依頼でも活躍できた。
また、以前は侯爵令息だったため王侯貴族や豪商との会話も問題なくする事ができる。
そんな彼の欠点を強いてあげるとしたら、顔と名前が知られ過ぎている事だろう。特にドラゴニア王国の貴族に。
黒い髪に黒い瞳という目立つ風貌を変えるだけでも状況は改善されるかもしれないが、今まで自慢してきた物を自ら手放すのは名残惜しく、自分から関わりに行かなければいいから、と言い訳して髪の色や目の色を変える魔法は使う事はなかった。
その代わり彼は昇格に必要な分の依頼しか護衛依頼や王侯貴族からの依頼は受けていなかった。
「ねぇ、ユート。いい加減指名依頼を拒否するのやめるか、国を出ようよ。じゃないといつまで経ってもAランクに上がれないよ?」
「そうですね。そうしたらAランクパーティーに格上げされますし、最難関のダンジョンにも挑戦する事が出来ます」
「お前たちの誰かがAランクになればパーティー的には問題ないだろ」
「最短で行けるルートが分かり切ってるのにわざわざ遠回りするわけ?」
「急がば回れって言葉があるみたいだぞ」
「回り道すぎる気がするのですが……」
「パーティーリーダーは俺だ。文句は受け付けん。嫌なら抜ければいいだろ」
「抜けろって言われてもねぇ。ユートよりも腕っぷしがあって偉い人との交渉を問題なくできる人なんて数えるくらいしかいないし、そういう人は既にパーティーを組んでるかソロである事にこだわりを持ってる変人くらいだよ」
「だったら諦めろ」
これまで何度も繰り返したユートは話を切り上げて逃げるようにその場を離れた。
彼らがいるのはパーティーメンバーで共同生活をするために借りた屋敷の一室だった。そこから出て自分の部屋へと向かうとすぐに到着した。屋敷とは名ばかりの狭い建物であるが、一度すべてを失ったユートはこれでも十分だと感じるようになっていた。
「……別に上を目指し続けなくてもBランクでも十分じゃないか?」
自室のベッドに腰かけた彼は独り言ちる。ベッドは以前と比べると質素になったし小さくもなった。だが、必要な睡眠をとるのには十分である。
安定して十分な金額を得る事ができる狩場を確保し、将来の蓄えも溜まりつつある。
「ランクが上がればその分命の危険も増えるわけだけど……あいつらそこんところ分かってんのか? 面倒事も間違いなく増えるだろうし……それはあいつらも薄々感づいているんじゃないか?」
直接聞く事はできないが、きっと自分の素性はとっくの昔にバレているんだろう。
それなら、今もなお影響力を拡大し続けている人物とトラブルを起こした事も知っているはずだ。
それは明確な弱点として、他者から舐められる原因となるだろう。少なくとも以前の自分が依頼を出すとしたらそこを上手く活用して自分に有利な話に持って行こうとしただろう。
ベッドに寝転がり、天井を見上げた彼はまた口を開いた。
「和解すればあるいは……って、和解も何もないか」
以前出場した大会で好成績を収めれば関わる機会もあっただろうが、今はもう雲の上の存在である。自分から関わろうとしても周囲を警護している者たちに捕まって引き離されるのがオチだろう。それは以前参加した大会の無関心っぷりから容易に想像できた。
取り返しがつかない事も、どうしようもない事も人生に無数にある事を知っているユートは無駄な思考をするのをやめて目を閉じた。
そうしてしばらく微睡んでいた彼だったが、唐突に勢いよく起き上がった。
「………………いったい何を考えているんだ、あの神様は」
ユートの部屋には彼以外誰もいない。
彼の心底不思議そうな声音で呟かれた言葉は誰の耳にも届く事はなかった。
一獲千金の夢がある分、危険もあるため常に人手不足である事に加え、ドラゴニア王国特有の問題もあるからだ。ダンジョンからの魔物の氾濫と言われる事もあるスタンピードである。
管理を怠ればいつかは発生してしまうため、冒険者は常時募集常態である。
そんな国だからこそ、地位も金も女も何もかも失ったユウトは冒険者ユートとして成り上がる事が出来た。
誓いを交わしてしまったから他者を恨む事も呪う事もできなかった彼に残されたのは悔しさをばねにして成り上がる事くらいだったのかもしれない。
神々から授かった二つの加護を使う事で魔物の討伐依頼に苦労した事はなかったし、犯罪者を殺すのも抵抗は全くなかったので護衛依頼でも活躍できた。
また、以前は侯爵令息だったため王侯貴族や豪商との会話も問題なくする事ができる。
そんな彼の欠点を強いてあげるとしたら、顔と名前が知られ過ぎている事だろう。特にドラゴニア王国の貴族に。
黒い髪に黒い瞳という目立つ風貌を変えるだけでも状況は改善されるかもしれないが、今まで自慢してきた物を自ら手放すのは名残惜しく、自分から関わりに行かなければいいから、と言い訳して髪の色や目の色を変える魔法は使う事はなかった。
その代わり彼は昇格に必要な分の依頼しか護衛依頼や王侯貴族からの依頼は受けていなかった。
「ねぇ、ユート。いい加減指名依頼を拒否するのやめるか、国を出ようよ。じゃないといつまで経ってもAランクに上がれないよ?」
「そうですね。そうしたらAランクパーティーに格上げされますし、最難関のダンジョンにも挑戦する事が出来ます」
「お前たちの誰かがAランクになればパーティー的には問題ないだろ」
「最短で行けるルートが分かり切ってるのにわざわざ遠回りするわけ?」
「急がば回れって言葉があるみたいだぞ」
「回り道すぎる気がするのですが……」
「パーティーリーダーは俺だ。文句は受け付けん。嫌なら抜ければいいだろ」
「抜けろって言われてもねぇ。ユートよりも腕っぷしがあって偉い人との交渉を問題なくできる人なんて数えるくらいしかいないし、そういう人は既にパーティーを組んでるかソロである事にこだわりを持ってる変人くらいだよ」
「だったら諦めろ」
これまで何度も繰り返したユートは話を切り上げて逃げるようにその場を離れた。
彼らがいるのはパーティーメンバーで共同生活をするために借りた屋敷の一室だった。そこから出て自分の部屋へと向かうとすぐに到着した。屋敷とは名ばかりの狭い建物であるが、一度すべてを失ったユートはこれでも十分だと感じるようになっていた。
「……別に上を目指し続けなくてもBランクでも十分じゃないか?」
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安定して十分な金額を得る事ができる狩場を確保し、将来の蓄えも溜まりつつある。
「ランクが上がればその分命の危険も増えるわけだけど……あいつらそこんところ分かってんのか? 面倒事も間違いなく増えるだろうし……それはあいつらも薄々感づいているんじゃないか?」
直接聞く事はできないが、きっと自分の素性はとっくの昔にバレているんだろう。
それなら、今もなお影響力を拡大し続けている人物とトラブルを起こした事も知っているはずだ。
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