【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚618.第一王子は次善策で進める事にした

 シグニール大陸でも有数の武力を誇るドラゴニア王国の国王は、代々金色の髪に青い瞳の特徴を持つ者が選ばれてきた。
 その外見的特徴を持つ者の多くが特定の加護を授かっていたからなのだが、それが原因で第一王子という立場だったが次代の王として自他ともに認められてこなかったのがガント・フォン・ドラゴニアという男だった。
 その男性は母親から淡い赤髪と鋭い眼差しを継承し、父親からはドラゴニアの象徴ともいえる『龍神の加護』と呼ばれる加護を受け継いでいた。
 加護については歴史を紐解いても金髪碧眼の者以外に継承された事がなかったので、彼が誕生した時には大いに荒れる事になったのだが、彼自身も思う所があるようで未だに戴冠式を行う決心がついていなかった。

「何をそんなに悩む事があるんだか……そんなに髪と目の色が気になるのなら魔法で帰ればいいじゃないか。それこそ、義弟殿は変装用の魔道具も持っているんだろう?」
「見た目を変えたところで元々が違うものだという事実は覆らんだろう?」
「そうだな。それに、加護を授かっているという紛れもない事実も変わらんな」

 最近、ドラン公爵家の次期当主と目されている人物であるフィンブル・フォン・ドランと会う度に行っているいつものやり取りをし終えた二人は苦笑を浮かべて肩を竦めた。

「神々の悪戯に振り回される身にもなってほしいな。授けるならばしっかりと見た目も整えてくれればいいのに」
「なんというか、今代の王家の者は神々に試練が与えられる事が多いな。お前も、王女殿下も」
「三人目には特にそういうのはなかったのが唯一の救いだな」
「ああ、しっかりと王家の血筋の特徴を引き継いだラピスの事か。……案外、これから試練を与えられるのかもしれんぞ」
「そうなったらさらに結婚が遅れそうだなぁ」
「お前は人の事言えないだろう。相手はもう決まったんだろう? いつ式を挙げるんだ」
「……いっその事、戴冠式の時と同じタイミングにするか、という話は出ているな」

 あまり乗り気ではない様子のガントに対してただ「そうか」とだけ返したフィンブルは話題をすぐに変えた。

「それで? 政務の引継ぎなどで忙しいはずの王子様がこんな所まで何しに来たんだ?」
「息抜きだ」
「……本気で言ってるのか?」
「半分な。もう半分は、フィンブルが推進している魔道具開発部隊の状態を見に来た。王都でも人員を集めようとはしているが、魔力を豊富に持った一般人なんてそうそういないからな。その点、ドランでは魔道具が普及しているおかげで若者を中心に平均以上の魔力を持った者たちがいるから順調に集まっているのかと思ってな」

 フィンブルは背もたれに体を預けながらしばし考えこむ様子を見せたが、結局話す気になったようだ。魔道具で淹れられた紅茶を口に含んでいたガントに向けて「ある程度は分かってるだろうけど、順調だよ」と答えた。

「最初はファマリアから奴隷を派遣してもらうか、もしくは奴隷から解放された者を雇うかを考えたが、人材を取り合う相手があの国だから到底太刀打ちできないと思ったんでね。幸いな事にあの御方が最初に活動を始めてくれたおかげで他の都市と比べると魔道具は普及したおかげで、ドランの民が全体的に魔力を有するようになった。その中でも目覚ましいのが問題になっていた元浮浪児たちだな。裏の者たちも彼らを狙うようになっていたようだし、保護する名目でも丁度良かったんだ」
「順調に人を集める事が出来ているようで羨ましい限りだよ。……王都でも『浮遊台車』はある程度普及しているから、やはり魔力増加の要因は『なくならない飴』か?」
「おそらくな。我が子で試しているから間違いない。ただ、魔力欠乏で無防備になるから浮浪児たちはたまたま生き残っただけ、と見る事もできる」
「下手に広まったらそれこそ夜の治安が悪化しかねないな」
「そういった観点でもあまり広めていないんじゃないか?」
「かもしれないな」

 ガントはそこで話を区切ると、テーブルに並べられた甘味の一つに手を伸ばした。
 何事か考えているようで、焼き菓子を咀嚼しながら唸っている。
 その様子をフィンブルは気にする様子もなく、彼も焼き菓子に手を伸ばした。妻特製の物だからか、ゆっくりと味わうように時間を掛けて咀嚼していた。

「人材をこちらに融通する事はできるか?」
「いや、無理だ。順調ではあるが、元々全員雇い入れる算段で計画を組んでるからな。それに、わざわざ二手に分けて開発と研究を進める意味を感じられないからな」
「まあ、そうだな。一カ所に集めた方が効率的か。……魔道具関係はドランに任せる事になったと父上に報告する。必要な援助は惜しみなく行うから上手くやってくれ」
「ああ、分かった。仕事の話はこれでおしまいか?」
「ん? ああ、そうだな。特にこれといってない」
「じゃあ酒でも飲むか」
「まだ昼間だぞ?」
「昼間だからこそだよ」

 フィンブルはガントの返事を待たずに鈴を鳴らして部屋の外で待機していた侍女を呼び寄せると、酒とつまみを用意するように命じた。
 ガントはしばし逡巡したようだったが「息抜きできたんだろう?」と問われると確かにそう言ったな、と納得してフィンブルと酒盛りする事にしたのだった。
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