2 / 46
第2話 vsオークキング①
しおりを挟む
舞い降りてきた地上世界の空を見上げると太陽が輝いている。
つい先ほど消滅した私の生まれ育った世界の太陽と、同様のものだ。
私のために造られた世界には夜がなく雨が降らなかったため、太陽は生き物を死滅させる存在であったが、舞い降りた地上世界での太陽は生物にとっては重要な働きをしている。
森林は太陽の光をあびて酸素を出し、二酸化炭素を吸収する。
空気中に酸素があるのも太陽のおかげであり、地球上のありとあらゆる生物を生かすエネルギーとなっているのだ。
初めて降り立った地上世界の大地は一面の草原地帯で、降り注ぐ日差しの中、緩やかに吹いている風になびく草の音が聞こえていた。
これが涼しいという感覚か。
息を深く吐き、思いっきり空気を吸うと酸素の濃度が濃いい。
地上世界の情報はミランダから教えてもらっていたが、想像以上に気持ちいい。
初めて見る山脈が向こうに見える。
0種族が支配するこの地上世界では多種多様な種族が共存し、大きな都市をつくり生活していると聞く。
種族間で殺し合いをする『千年戦争』が既に始まっているのだが、新しい体験や未知なるものに出会えると思うと、すごくときめいてしまう。
とりあえず、上空から見えた川の方へ行ってみようかしら。
川の方へ歩き始めようとした時、
—————何か見えない力に引っ張られた。
星に引力があるように、何かが私を引きずり込もうとしている。
あの個体だ。
100m向こうから歩いて来る16種族のオークキングが見えない力で私を引っ張っているようだ。
体長は5m程度あり体格がよく、全身をフル装備し、全長10m程度ある斧が印象的な個体である。
ミランダから16種族は好戦的であると教えられていたが、もしかして私に戦いを挑むつもりなのかしら。
だが、先入観で物事は判断するべきではないし、私を引き寄せる何か仕方がない理由があるのかもしれない。
でもやはり地上世界での初コンタクトがオークキングだというのは残念だ。
――――――その時、100m向こうにいるオークキングの声が響いてきた。
「空から舞い降りた人間よ、『千年戦争』の参加者だな。いずれの種族か我に答えよ。」
私が空から降りてきたところを視認していたのか。
私の種族を聞いてどうするつもりなのかしら。
上からものを言うような言葉遣いが気になるが、まぁ種族くらいは教えても問題ないだろう。
「はい。私は19種族で、『千年戦争』の参加者です。」
返事をしたものの、100m程度の距離がありますし、私の声が届くはずもないか。
大きな声も出したくないし、近づきたくもない。
というか出会っていない事にしたい。
どうしたものかしら。
オークキングば歩みを止め、大斧を草原に突き立て大きな声で笑い始めた。
なぜ笑っているのでしょうか。
「がははは。19種族は種族最強だと聞いていたが、なんてひ弱な人間なんだ。我に出会ってしまったのは不運だったな。か弱き19種族の人間よ、お前は我のFIELDSKILL『キャッスル』内に捕らえられている。もう逃がれる事は出来ないぞ。」
フィールドスキルとは、一定の領域に関して属性の変更を行うスキルだ。
つまり私はオークキングが展開しているフィールドスキル内にいるものだと読み取れる。
何かに引っ張られ、距離があるにもかかわらず会話が出来るのはその影響なのかしら。
それはそうと、オークキングは相当お馬鹿なようだ。
太陽の加護を受けている19種族である者が弱いはずがないだろ。
それに美少女は正義で最強である法則を知らないのかよ。
ただ、オークキングの話しを聞いてあなたに一つ興味といいますか疑問がわきました。
「私からも質問があるのですが、もしかして、あなたは16種族を代表として『千年戦争』に参加されている者なのですか?」
「我は『千年戦争』の参加者では無い。種族内の戦いに敗れたただの一兵卒として、16種族以外の全種族を皆殺しにする者だ。」
『千年戦争』は、参加している種族の代表同士が直接戦って、勝敗を決めるものでは無い。
最後まで生き残った者が勝者であり、各種族は全力で種族の代表をサポートするのである。
オークキングが16種族の一兵卒と言っていたのは、種族内では特別な立場ではなく、大勢の中にいる捨て駒の一つという事なのだろう。
ちなみに私に関しては、現存している19種族は私しかいないため、21種族であるミランダからしかサポートを受ける事は出来ない。
なんたって私は才色兼備の最強美少女なので、当然に一人でも超余裕である。
さて、クソ雑魚のオークキングであるが、私からすると戦闘をする理由といいますか必要性はない。
「16種族でも超雑魚であるあなたが、美少女最強の私に勝てるはずがないじゃないですか。見逃してあげますから、今すぐに私の前から消えて下さい。」
「いまなんと言った。人間ごときが我を雑魚と言ったのか!」
雑魚では無くて、超雑魚ですよ。
しかし今は、激怒しているオークキングの事よりも気になる事がある。
足元にいるアルマジロの姿をしたミランダが、黄色い声を上げて体を球体形状に丸め、草原を縦横無尽に転がっているのである。
オークキングとのやり取りには『我関せず』という感じではなく、はしゃぎ過ぎて気が付いていないようだ。
私はね、他人が楽しそうにしていると気分が落ち着かなくなるのよ。
なので、事故に見せかけてミランダをキックしてみた。
通常の物理攻撃を受け付けないくらいに硬いアルマジロの外殻を蹴った感触はというと…、うん、気持ちいいです。
草原の上をバウンドしながら「何をする!」と激怒しているミランダを見て、気持ちが落ち着いてきました。
有難うございます。
また転がして遊んでやるぜ。
私が気分が上がってきたところで、オークキングがふざけた事を言ってきた。
「なるほど。人間ではあるが19種族はそれなりに力を持っているという事か。そのか弱き容姿に侮っていたのかもしれん。それではFIELD SKILL『キャッスル』を全開させて、我の強さを教えてやろう。驚嘆するがよい。」
何だか凄い自信だな。
驚嘆はしないと思いますが、まぁいいでしょう。
そのFIELD SKILL『キャッスル』とやらの全貌を拝見させてもらいましょう。
つい先ほど消滅した私の生まれ育った世界の太陽と、同様のものだ。
私のために造られた世界には夜がなく雨が降らなかったため、太陽は生き物を死滅させる存在であったが、舞い降りた地上世界での太陽は生物にとっては重要な働きをしている。
森林は太陽の光をあびて酸素を出し、二酸化炭素を吸収する。
空気中に酸素があるのも太陽のおかげであり、地球上のありとあらゆる生物を生かすエネルギーとなっているのだ。
初めて降り立った地上世界の大地は一面の草原地帯で、降り注ぐ日差しの中、緩やかに吹いている風になびく草の音が聞こえていた。
これが涼しいという感覚か。
息を深く吐き、思いっきり空気を吸うと酸素の濃度が濃いい。
地上世界の情報はミランダから教えてもらっていたが、想像以上に気持ちいい。
初めて見る山脈が向こうに見える。
0種族が支配するこの地上世界では多種多様な種族が共存し、大きな都市をつくり生活していると聞く。
種族間で殺し合いをする『千年戦争』が既に始まっているのだが、新しい体験や未知なるものに出会えると思うと、すごくときめいてしまう。
とりあえず、上空から見えた川の方へ行ってみようかしら。
川の方へ歩き始めようとした時、
—————何か見えない力に引っ張られた。
星に引力があるように、何かが私を引きずり込もうとしている。
あの個体だ。
100m向こうから歩いて来る16種族のオークキングが見えない力で私を引っ張っているようだ。
体長は5m程度あり体格がよく、全身をフル装備し、全長10m程度ある斧が印象的な個体である。
ミランダから16種族は好戦的であると教えられていたが、もしかして私に戦いを挑むつもりなのかしら。
だが、先入観で物事は判断するべきではないし、私を引き寄せる何か仕方がない理由があるのかもしれない。
でもやはり地上世界での初コンタクトがオークキングだというのは残念だ。
――――――その時、100m向こうにいるオークキングの声が響いてきた。
「空から舞い降りた人間よ、『千年戦争』の参加者だな。いずれの種族か我に答えよ。」
私が空から降りてきたところを視認していたのか。
私の種族を聞いてどうするつもりなのかしら。
上からものを言うような言葉遣いが気になるが、まぁ種族くらいは教えても問題ないだろう。
「はい。私は19種族で、『千年戦争』の参加者です。」
返事をしたものの、100m程度の距離がありますし、私の声が届くはずもないか。
大きな声も出したくないし、近づきたくもない。
というか出会っていない事にしたい。
どうしたものかしら。
オークキングば歩みを止め、大斧を草原に突き立て大きな声で笑い始めた。
なぜ笑っているのでしょうか。
「がははは。19種族は種族最強だと聞いていたが、なんてひ弱な人間なんだ。我に出会ってしまったのは不運だったな。か弱き19種族の人間よ、お前は我のFIELDSKILL『キャッスル』内に捕らえられている。もう逃がれる事は出来ないぞ。」
フィールドスキルとは、一定の領域に関して属性の変更を行うスキルだ。
つまり私はオークキングが展開しているフィールドスキル内にいるものだと読み取れる。
何かに引っ張られ、距離があるにもかかわらず会話が出来るのはその影響なのかしら。
それはそうと、オークキングは相当お馬鹿なようだ。
太陽の加護を受けている19種族である者が弱いはずがないだろ。
それに美少女は正義で最強である法則を知らないのかよ。
ただ、オークキングの話しを聞いてあなたに一つ興味といいますか疑問がわきました。
「私からも質問があるのですが、もしかして、あなたは16種族を代表として『千年戦争』に参加されている者なのですか?」
「我は『千年戦争』の参加者では無い。種族内の戦いに敗れたただの一兵卒として、16種族以外の全種族を皆殺しにする者だ。」
『千年戦争』は、参加している種族の代表同士が直接戦って、勝敗を決めるものでは無い。
最後まで生き残った者が勝者であり、各種族は全力で種族の代表をサポートするのである。
オークキングが16種族の一兵卒と言っていたのは、種族内では特別な立場ではなく、大勢の中にいる捨て駒の一つという事なのだろう。
ちなみに私に関しては、現存している19種族は私しかいないため、21種族であるミランダからしかサポートを受ける事は出来ない。
なんたって私は才色兼備の最強美少女なので、当然に一人でも超余裕である。
さて、クソ雑魚のオークキングであるが、私からすると戦闘をする理由といいますか必要性はない。
「16種族でも超雑魚であるあなたが、美少女最強の私に勝てるはずがないじゃないですか。見逃してあげますから、今すぐに私の前から消えて下さい。」
「いまなんと言った。人間ごときが我を雑魚と言ったのか!」
雑魚では無くて、超雑魚ですよ。
しかし今は、激怒しているオークキングの事よりも気になる事がある。
足元にいるアルマジロの姿をしたミランダが、黄色い声を上げて体を球体形状に丸め、草原を縦横無尽に転がっているのである。
オークキングとのやり取りには『我関せず』という感じではなく、はしゃぎ過ぎて気が付いていないようだ。
私はね、他人が楽しそうにしていると気分が落ち着かなくなるのよ。
なので、事故に見せかけてミランダをキックしてみた。
通常の物理攻撃を受け付けないくらいに硬いアルマジロの外殻を蹴った感触はというと…、うん、気持ちいいです。
草原の上をバウンドしながら「何をする!」と激怒しているミランダを見て、気持ちが落ち着いてきました。
有難うございます。
また転がして遊んでやるぜ。
私が気分が上がってきたところで、オークキングがふざけた事を言ってきた。
「なるほど。人間ではあるが19種族はそれなりに力を持っているという事か。そのか弱き容姿に侮っていたのかもしれん。それではFIELD SKILL『キャッスル』を全開させて、我の強さを教えてやろう。驚嘆するがよい。」
何だか凄い自信だな。
驚嘆はしないと思いますが、まぁいいでしょう。
そのFIELD SKILL『キャッスル』とやらの全貌を拝見させてもらいましょう。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる