無敵のツルペタ剣聖

samishii kame

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第6話 vsゴブリン②

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空からは太陽の光が燦々と落ちてきていた。
超音速の遠距離斬撃によりぶった斬られた岩地帯から粉塵が上がり、崩壊していく音が聞こえ始めている。
1000年に1度、種族間で行われる『千年戦争』が始まり、地上世界に舞い降りた私は、現在岩地帯を根城にしている16種族のゴブリン討伐を開始し、4個体目のゴブリン兵を仕留めたところであった。
初撃となる『紫電一閃』により斬り裂いた岩石の崩壊が始まり、岩地が崩れる音が聞こえてくる。
足場が崩れ始め混乱しながらも、装備しているボウガンで私に狙いをつけようとしている2個体のゴブリンを発見した。
判断速度も動作速度もノロマ過ぎだぜ。
矢を発射する前に切り刻んであげましょう。
腰を深く沈め、鞘に収まっている神剣クラスソラスに手を掛け力を溜め、インパクトに集中させていく。
その距離15m。
ゴブリン達はまだ私へ照準を絞りきれていない。
仕留めさせてもらいます。
溜めていた力を解放させた。
――――――――抜刀。

居合抜きの斬撃により1個体を仕留め、更に返す刀の斬撃がもう1個体を斬り裂いていた。
二閃の遠距離斬撃がゴブリン2個体を一刀両断していたにも関わらず、ゴブリン達はまだボウガンの照準を定めようとしている。
既に死んでしまった事実に気が付いていないようだ。
そして、脳天から真っ二つにされたゴブリンは、両手が左右に離れていく自分の様子に状況の理解が追い付かない顔をしながら絶滅していった。
これで6個体を仕留め終えた。
美少女ヒロイン最強説が正しければ、私はブッチギリで史上最強となるのだろうが、それでも手応えがなさ過ぎるというか弱すぎる。
ミランダから戦闘経験を積むようにゴブリン討伐を勧められたのだが、何のことはない、これでは暇つぶしにもならない。

周囲を確認すると見張り役のゴブリンの姿はなくなっていた。
奥に本拠地となる根城があるものと予測されるが、私は索敵SKILLを所持していないため、自身で動き回りその位置を把握しなければならない。
残りのゴブリン達も既に異変を感じているだろうし、罠を張るような対応する猶予を与えないため、敵から見つかるリスクはあるものの、ここは跳躍して見通しの良い上空から本拠地を索敵するべきところだろう。
できるだけ早く終わらせてやるぜ。
崩壊中の足場にて膝を曲げ、高く跳躍をした。

高く飛んだ空中から岩地を見下ろすと、岩地帯の奥にゴブリンを視認した。
あの赤色はゴブリンの上位種でスキルを使う個体だ。
ここは司令塔である可能性が高い赤色ゴブリンを優先して仕留めるのが定石である。
サクサクと順調に事が運んでいくのであるが、これは私の才能が規格外なのか、日頃の行いが良いのかといえば、もちろんその両方なのだろうな。
さて、私に見つかった事を認識した赤色ゴブリンであるが、岩地に隠れ奥の方へ逃走を開始していた。
もう、私からは逃げ切れないですよ。
あなたに出来ることは神に祈る事くらいではないでしょうか。

赤色ゴブリンが奥へ逃げた先に跳躍しトンネル状になっている通路へ走り込むと、奥に外へと繋がる明かりが見える。
万が一に備えて逃走通路を確保していたのかしら。
なるほど、用意周到なやつ等だな。
私の脚力なら赤色ゴブリンに追いつくまで10秒もかからない。
『無駄な努力』をしていただきお疲れ様です。

通路を抜け外に出ると――――――
小さな決闘場みたいなところに出てきた。
足を止めて周りを見渡すと観客席のようなところにボウガンを構えたゴブリン達が100個体以上いる。
あら、360度全方位を囲まれているではないですか。
奥に赤色ゴブリンが私を見てニヤリと笑っているのであるが、もしかして私は―――

罠にかかり、ここへ誘導されてしまったのかしら。

SKILL『危険予知』は発動していないのでヤバい状況に陥ったわけではないのだろうが、見事に出し抜かれた感じがする。
足を止め一瞬戸惑ってしまった私の姿が間抜けに見えたらしく、全包囲しているゴブリン達が勝利の雄たけびを上げ、岩地を打ち鳴らすようやにドンドンドンと足踏みをやり始めた。
空気が揺れて地鳴りがしている。
私を無力化したわけでもないのに、はしゃぎ過ぎだろ。
とうい事で、歓喜に満ちているところに水を差すようですが、サクッと赤色ゴブリンの処刑を行います。
腰の神剣ソラスクラスへ手を掛け、一瞬で溜めた力を解放させた。
――――――――紫電一閃

逆手からノーモーションによる遠距離斬撃を撃ち込んだ。
初撃のものと比べると、突きに近い一撃である。
雷が落ちたような音が轟き、『紫電一閃』による斬撃が、闘技場の奥にある巨大な岩石を突き破った。
続いて衝撃で地面が揺れ始め、粉塵が舞い上がっていく。
突き破った岩地はトンネル状にくり抜かれており、向こうには青空が見えていた。
そして、一番安全な場所にいた赤色ゴブリンの姿は肉片さへも残らず消滅をしている。
これでも本気の一撃では無いのだよ。

100個体以上いるゴブリン達は、『紫電一閃』によりくり貫かれた岩地に目が釘付けとなっていた。
そのゴブリン達は落雷のような轟音と、岩がくり貫かれている事に何が起きたのか理解出来ていないと言うか、自分達の力ではどうにもならないくらいの異次元な力を目の当たりにして金縛りになっているようだ。

その時、突然、足に激痛が走った。
『痛っ!』
私の足に矢が刺さっている。
背後の観客席にいたゴブリンが、とりあえず私の動きを止めるために射たようだ。
やってくれるじゃないか。
それも即効性の麻痺系の毒矢である。
次の瞬間————――――――
刺さった毒矢が燃えていた。
私の足から炎が上がっていたのである。


PASSIVESKILL『不死鳥』が発動していたのだ。


『不死鳥』とはその名のとおり、死んで復活できるほどの再生能力を持つSKILLである。
足から深紅の炎に舞い上がっていた。
熱い感覚はない。
刺さっていた毒矢は灰になり、傷口は再生していた。
その様子をゴブリン達がマジマジと私を見つめている。
何が起きているのか理解出来ていないのだろうご、そろそろ皆殺しの時間だ。
皆殺しの歌を聞かせてあげましょう。




初撃の『紫電一閃』から約60秒でゴブリン達の皆殺しが完了した。
単体としては戦闘力がオークキングより遥かに劣るゴブリンであるが、遥かに善戦したと言えるだろう。
ゴブリン達の死骸が横たわる闘技場に、球体となったアルマジロが足元に転がってきた。

「安杏里。力の弱い者達でも工夫をすればそれなりの脅威になるという事だ。何事も油断は禁物だ。その控えめな胸に刻んでおけ。」

ゴブリンとの戦闘を振り返ってみると、赤色ゴブリンは私にわざと見つかったのだろう。
逃走したと見せかけて私は誘い込まれたのだ。
なるほど、力の弱い者だからといって侮るなかれということか。
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