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第6話 鬼聖女様のその駄目っぷりが凄く心強いです
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【オリオン】
A級冒険者を決める戦い。
帝都に16人いるA級冒険者に欠員が出た際に行われる。
B級冒険者の上位4名のパーティー戦で決定する。
【ファミリー】
帝都にいる16人のA級冒険者が作る事が出来る。
クエストの紹介は出来ない。
新人冒険者を育てる事を目的としている。
実績に応じて帝国からお金が支給される。
最大30名まで。内10名は初級となるF級冒険者としなければならない。
◇
夜空を覆う真っ黒な雲から帝都の街に雨がシトシトと落ち始めていた。
歓楽街は、帝都の地下に広がる迷宮から帰ってきた者、帝都へやってきた行商人達で溢れかえり、いつものように街がパワーでみなぎっている。
やれやれ。雨が降ろうが降るまいが何がなんでも歓楽街で騒ぎたいとは、ご苦労なことだ。
いつもと違うものと言えば、雨が地面に落ちる音色くらいだろう。
地下迷宮で聖戦士を置き去りにし帝都に戻ってくると夜になっていた。
最も尊敬されるJOBとされている聖女が雨に濡れて歩いていると、誰かしらが傘を差し出してくれる。
スキル『自己再生』の効果により異常耐性になる事もないため傘は必要ないのだが、人の好意を受け取らない方が面倒になることが多く、受け取った傘をさしながら濡れる舗装された道路を歩いていた。
いつも来ている酒場の入口前に来ると、酒場内からの異様な熱気が漏れてきている。
いつもにも増して、今日は騒がしいようだ。
迷宮の地下4階層で、聖戦士が忍者に敗北した話しで盛り上がっているのだと直感した。
400席あるホールは、5m近くある天井に吊り下げられた照明が明るく照らしている。
大判の石が敷き詰められているホール内は満席状態となっており、奥の壁に人だかりができていた。
そこに何かあるようだ。
派手な十字架がデザインされた聖衣をまとう聖女を見かけると、酔っ払い達が進路を開けてくれるので、進むぶんには苦労はない。
向こうの壁に等間隔で窓が配置されており、間の壁にある掲示板を見ながら酔っ払い達が騒いでいた。
―――――――地下迷宮内で土下座している聖戦士の頭を忍者が踏みつけている絵が張り出されていたのだ。
実際の映像よりもえげつなく書かれており、書いた者から悪意が感じられる。
掲示板の前に群がっている冒険者達が楽しげに交わしている会話があちらこちらから聞こえてくる。
「これで聖戦士の奴、A級冒険者は剥奪だな。」
「ジェットファミリーの解散確定だろ。」
「ジェットファミリーNo.2で影の実力者の忍者さんの時代が来たんじゃないか。」
「まだ忍者さんが聖戦士の後任になると決まった訳じゃないぜ。」
「オリオンだ。」
「オリオンの開催だな。」
「優勝候補は、やっぱりB級1位の忍者さんだろ。」
「結局、ジェットファミリーが、そのまま光太ファミリーに名前が変わるだけかよ。」
「だろうな。」
「だな。」
酒場にいる男共は、聖戦士がA級冒険者ランクを剥奪され、その後釜を決めるオリオンが開催されるものと予想しており、その話題で盛り上がっていた。
男って、本当にくだらない生き物だ。
店員が用意してくれた席に座りデザートを注文すると、忍者パーティーにいたロリ巨乳の神官メルンが同席を求めてきた。
聖戦士にもて遊ばれていた女の1人だ。
ちなみにこの酒場で私に対して、ちょっかいを出して来た命知らずが何人かいたが、その全員を制裁鉄拳にて病院送りにした過去があり、今はアプローチをして来る者はいなくなっていた。
「三華月様、同席してもよろしいでしょうか。」
「はい。構いませんよ。」
「無事にA級迷宮から戻られて安心しました。」
それは私を心配していたのかしら。
それとも聖戦士の方なのだろうか。
ロリ巨乳神官は私より年上であるが、見た目は20前に見える。
その容姿は可愛らしく、神官用の真っ白な服からも巨乳ということがよく分かる。
向かいの席に座ったロリ巨乳神官の重そうな乳がテーブルの上に乗ると、その姿にまわりで酒を飲んでいた野郎達の視線が釘付けになっていた。
まるで飢えた野良犬みたいな奴等だな。
一応、ロリ巨乳神官には聖戦士のことを報告しておこうかしら。
「地下4階層で別れたあとのことですが、聖戦士ですが、帝都へは戻ってはおりませんよ。」
「えっ。聖戦士様がダンジョンから戻っていないって、どういうことなのでしょうか。」
ロリ巨乳神官の表情が曇っていく。
聖戦士は1人で下層に向ってしまったので置いてきた事を告げると、ロリ巨乳神官は「自業自得ですよ」とつぶやき、両手を合わせ聖戦士のために祈り始めた。
その様子を見ると、未練があるように感じられる。
奴はそんなにいい仕事をしていたのかしら。
ひと通り勇者の死に対する祈りが終わると、運ばれてきたアルコール度数が50%を超える酒をガブガブと飲み始めていた。
ヤケ酒かしら。
聖戦士を自殺に追い込んだ事に対するダメージを、お酒で誤魔化そうとしている感じでしょうか。
お酒がまわっていくとロリ巨乳神官はボロボロに泣き始め、実は聖戦士は優しかったという全然興味が無い話しを延々と聞かされてしまった。
「ところで三華月様は、どうして、お酒を飲まれないのですか。」
「アルコールは、スキル『自己再生』の効果により毒効果のある飲み物と判定されるため、摂取しても浄化治癒されるからです。」
「え、自己再生ですか!」
「はい。お酒を飲んでも、意味がないと言いますか酔うことが出来きません。」
「『自己再生』って神スキルじゃないですか。さすが、最高神アルテミス神の大聖女様は、私とは何もかも違うんですね。」
「神官は無駄に乳がでかいし、男の煩悩を刺激するのでしょう。」
私の言葉に酔いがまわっている様子のロリ巨乳神官が机を両手で叩き付けて勢いよく立ち上がった。
周りで楽しく飲んでいた男達の視線が集まってくる。
無駄によく揺れている乳に釘付けになっているようだ。
激怒している様子のロリ巨乳神官が、すわっている目で乳を擁護する発言をしてきた。
「乳は関係無いでしょう。それに無駄ってどういう事ですか!」
「それにしても、無駄によく揺れる乳なのですね。」
「三華月様。乳を敵視しないで下さい!」
「その煩悩の塊ともいえる無駄によく揺れる乳に、あの聖戦士は夢中だったというわけですか。」
「なんでそんな事を知っているのですか。そもそも乳は関係ありません。聖戦士様にとって、私は都合のいい1人の女だっただけのことですよ。」
その後、ロリ巨乳神官から聖戦士について、再び取り留めのない眠たい話しを延々に聞かされてしまった。
ロリ巨乳神官は、聖戦士がハーレム王である事を知らずに真剣に付き合っていたそうだ。
本日、迷宮へ潜る前に忍者から、聖戦士がギルド内の複数の女と関係を結んでいた話しを聞き、ギルドから追放する計画に加わり、聖戦士の追放が成功した現在は、忍者が後任の役目をつとめているらしい。
社会的抹殺をされたことは自業自得かもしれないが、忍者は相当に腹黒である可能性が高い。
―――――――私は忍者が気に入らない。
それは私の獲物を横取りして、A級冒険者に成り上がろうとしているからだ。
私の心は小さな水溜まりよりも狭いのだ。
正面の席からいつの間にか、隣の席に移動してきたロリ巨乳神官がグダグダになりながら、自身がとった行動について呟く声が聞こえてきてきた。
「三華月様。私は一体どうしたらよかったのでしょうか。」
「本当に神官は、聖戦士に愛されていなかったのでしょうか。」
「どういうことですか。」
「忍者の言葉を鵜呑みにするのではなく、聖戦士と向き合って話しをするべきだったように思えますが、実際には、どうするべきかなんて神官にしか分からないことだと思います。」
◇
ロリ巨乳神官を置いて酒場から出ると、少し雨足が強くなっていた。
歓楽街の賑わいは衰えておらず、雨の影響なく深夜0時までは街のボルテージが上がり続けていく感じがする。
歓楽街を抜け、街の外れにある親子4人で経営している古い木造2階建ての宿屋に戻ると、受付カウンターの前にあるテーブルに黒装束に身を包んだ小柄な男が座っていた。
強斥候の吹雪月だ。
「三華月様。待っていたっす。」
「私をストーカーしたい気持ちは理解して差し上げます。ですが、制裁鉄拳の餌食になりたくないのなら、このまま何も言わずお帰りください。」
「三華月様にストーカーだなんて、そんな度胸は僕にはないっす。」
「そうですか。それではお帰り願います。」
その時、注意が散漫な様である強斥候が、不穏な視線をどこかに送っていることに気が付いた。
その先には宿屋の爆乳女将がいる。
酒場に続きこちらの宿屋でも無駄に揺れる乳のパワーを見せつけられてしまった。
注意がそれている強斥候へ『隠密』を発動させながら気配なく近づくと、鼻の下を伸ばしてあほづらをしている黒装束の男の側頭部へ鉄拳を振り下ろした。
『ボコ』
強斥候の体が床に叩きつけられ、白目をむきながらバウンドした。
意識を失いながらも受け身をとっている。
戦闘力はないが、さすがと言える。
宿屋内の者は気が付いていない。
黒装束の男が即座に意識を戻すと、そのままうめき声をあげながら狭い宿屋のロビーの床を機敏に転がり始めた。
私がいうのもなんだが、相当痛そうにしている。
床をのたうち回っている強斥候へ近寄ろうとしている女将を手で制していると、床を転がりながら抗議を言い始めてきた。
「まじで、当たり所が悪かったら痛いじゃ済まないくらい痛いんですよ!」
「いやらしい目で爆乳女将を、見ていた強斥候を成敗させてもらいました。」
「だから、爆乳への嫉妬はやめて下さいよ!」
『ボコボコ』
「ず、び、ば、ぜ、ん、でした。」
雨足が更に強くなってきたようだ。
古い木造建築の中にいても、雨が落ちる音が聞こえてくる。
現在この宿屋は私の貸し切り状態になっているため、お客さんはいないが、宿屋を経営している家族が建物内を清潔に掃除してくれていた。
宿屋の玄関ホールの床をのたうち回っていた強斥候が、芋虫が床を滑るようにテーブル席に戻り始めている。
「それで私に何の御用ですか?」
「三華月様。A級冒険者を決める『オリオン』についてご存知ですか。」
「聖戦士が、もうすぐB級冒険者に降格する噂を聞いています。」
酒場で盛り上がっていたくだらない話しだ。
上位4位までのB級冒険者がそれぞれパーティーを組み、ギルドが指定したA級迷宮を最速で攻略した者がA級冒険者へ昇格するルールだったかしら。
強斥候が前がかりに身を乗り出してきた。
「勇者パーティーを改めて、美人賢者パーティーに変更したんですけど、僕達も『オリオン』へ参加する予定なんです。」
「そうですか、頑張って下さい。」
「もちろんです。だが美人賢者は現時点でB級5位なんです。」
「それでは『オリオン』に出られないじゃないですか。」
「問題ないっす。トップ4に入るために明日、A級迷宮を攻略しようと思います」
「健闘を祈らせてもらいます。」
「えっ。何を言っているんすか。健闘を祈るって、三華月様って、そんな真面目な言葉を口にする聖女様でしたっけ?」
真面目な聖女という基準が意味不明だ。
そもそも世界で最も神格の高い聖女だし。
それに性格はともかく、見た目だけなら聖女の中の聖女だろ。
自身が無茶苦茶失礼な発言をしたことに気づいていない強斥候は、恥ずかしげもなく堂々と協力を求めるお願いをしてきた。
「三華月様。力を貸して下さい。僕達だけでA級迷宮突破は無理です。」
「全く興味がないので、お断りします。」
「忍者に勝てるのは、三華月様以外しかいません。」
強斥候が気持ちいい感じでたたみかけてきた。
忍者か。
地下迷宮で信仰心が下がったときの映像が蘇ってくると、怒りがぶり返してきた。
このままだと、忍者の目論み通り事が運んでしまうというわけか。
「忍者が私の信仰心を下げた時の出来事を思い出しました。」
「三華月様、やり返しましょう。でないと、鬼聖女様らしくないです!」
「私を踏み台にして、一人勝ちしようとしている忍者を、私は地獄に叩き落としたい!」
「うわぁ、鬼聖女様のその駄目っぷり。凄く心強いです。」
『ボコボコボコ』
「ず、び、ば、ぜ、ん、で、し、た。」
A級迷宮攻略の話しを聞いて、地下ダンジョンへ置き去りにしてきた聖戦士の姿が頭に浮かんできた。
理由の無い同族殺しは出来ないし、危害も与えられないため、『オリオン』に参加したとしても、私自身が忍者と戦うことは出来ない。
私の憂さ晴らしをするためには、誰かが代行し忍者と戦ってもらわなければならない。
勇者と強斥候は力不足というか論外だ。
消去法となるが、その役目を果たせるのは聖戦士しかいないだろう。
美人賢者パーティーには席の空きがある。
聖戦士を迷宮に置きざりにして約6時間が経過しているが、まだ生きているかもしれない。
「いいでしょう。美人賢者に力を貸しましょう。」
「有難うございます。これで鬼に金棒以上っす。」
「今からすぐA級迷宮の攻略を開始します。」
「い、今からですか?」
「6時間前、A級迷宮の地下4層に、聖戦士を置き去りにしてしまいました。生きていたらパーティーに入れようと思います。」
「今からすぐは無理っすよ。」
「無理とはやる前に言う言葉ではなく、やった結果、無理だったというものですよ。」
「うわぁ。また真面目なことを言われてしまった。残念ですが、僕には全く響きません。」
「なるほど。言っている意味がご理解頂けないようなら、拳で分からせてあげましょうか。」
「拳を叩きこむのだけは、やめて下さい。承知しました。今すぐ美人賢者と勇者に声を掛けてきます。」
「それでは単独で先行していますので、後から追いついてきて下さい。」
A級冒険者を決める戦い。
帝都に16人いるA級冒険者に欠員が出た際に行われる。
B級冒険者の上位4名のパーティー戦で決定する。
【ファミリー】
帝都にいる16人のA級冒険者が作る事が出来る。
クエストの紹介は出来ない。
新人冒険者を育てる事を目的としている。
実績に応じて帝国からお金が支給される。
最大30名まで。内10名は初級となるF級冒険者としなければならない。
◇
夜空を覆う真っ黒な雲から帝都の街に雨がシトシトと落ち始めていた。
歓楽街は、帝都の地下に広がる迷宮から帰ってきた者、帝都へやってきた行商人達で溢れかえり、いつものように街がパワーでみなぎっている。
やれやれ。雨が降ろうが降るまいが何がなんでも歓楽街で騒ぎたいとは、ご苦労なことだ。
いつもと違うものと言えば、雨が地面に落ちる音色くらいだろう。
地下迷宮で聖戦士を置き去りにし帝都に戻ってくると夜になっていた。
最も尊敬されるJOBとされている聖女が雨に濡れて歩いていると、誰かしらが傘を差し出してくれる。
スキル『自己再生』の効果により異常耐性になる事もないため傘は必要ないのだが、人の好意を受け取らない方が面倒になることが多く、受け取った傘をさしながら濡れる舗装された道路を歩いていた。
いつも来ている酒場の入口前に来ると、酒場内からの異様な熱気が漏れてきている。
いつもにも増して、今日は騒がしいようだ。
迷宮の地下4階層で、聖戦士が忍者に敗北した話しで盛り上がっているのだと直感した。
400席あるホールは、5m近くある天井に吊り下げられた照明が明るく照らしている。
大判の石が敷き詰められているホール内は満席状態となっており、奥の壁に人だかりができていた。
そこに何かあるようだ。
派手な十字架がデザインされた聖衣をまとう聖女を見かけると、酔っ払い達が進路を開けてくれるので、進むぶんには苦労はない。
向こうの壁に等間隔で窓が配置されており、間の壁にある掲示板を見ながら酔っ払い達が騒いでいた。
―――――――地下迷宮内で土下座している聖戦士の頭を忍者が踏みつけている絵が張り出されていたのだ。
実際の映像よりもえげつなく書かれており、書いた者から悪意が感じられる。
掲示板の前に群がっている冒険者達が楽しげに交わしている会話があちらこちらから聞こえてくる。
「これで聖戦士の奴、A級冒険者は剥奪だな。」
「ジェットファミリーの解散確定だろ。」
「ジェットファミリーNo.2で影の実力者の忍者さんの時代が来たんじゃないか。」
「まだ忍者さんが聖戦士の後任になると決まった訳じゃないぜ。」
「オリオンだ。」
「オリオンの開催だな。」
「優勝候補は、やっぱりB級1位の忍者さんだろ。」
「結局、ジェットファミリーが、そのまま光太ファミリーに名前が変わるだけかよ。」
「だろうな。」
「だな。」
酒場にいる男共は、聖戦士がA級冒険者ランクを剥奪され、その後釜を決めるオリオンが開催されるものと予想しており、その話題で盛り上がっていた。
男って、本当にくだらない生き物だ。
店員が用意してくれた席に座りデザートを注文すると、忍者パーティーにいたロリ巨乳の神官メルンが同席を求めてきた。
聖戦士にもて遊ばれていた女の1人だ。
ちなみにこの酒場で私に対して、ちょっかいを出して来た命知らずが何人かいたが、その全員を制裁鉄拳にて病院送りにした過去があり、今はアプローチをして来る者はいなくなっていた。
「三華月様、同席してもよろしいでしょうか。」
「はい。構いませんよ。」
「無事にA級迷宮から戻られて安心しました。」
それは私を心配していたのかしら。
それとも聖戦士の方なのだろうか。
ロリ巨乳神官は私より年上であるが、見た目は20前に見える。
その容姿は可愛らしく、神官用の真っ白な服からも巨乳ということがよく分かる。
向かいの席に座ったロリ巨乳神官の重そうな乳がテーブルの上に乗ると、その姿にまわりで酒を飲んでいた野郎達の視線が釘付けになっていた。
まるで飢えた野良犬みたいな奴等だな。
一応、ロリ巨乳神官には聖戦士のことを報告しておこうかしら。
「地下4階層で別れたあとのことですが、聖戦士ですが、帝都へは戻ってはおりませんよ。」
「えっ。聖戦士様がダンジョンから戻っていないって、どういうことなのでしょうか。」
ロリ巨乳神官の表情が曇っていく。
聖戦士は1人で下層に向ってしまったので置いてきた事を告げると、ロリ巨乳神官は「自業自得ですよ」とつぶやき、両手を合わせ聖戦士のために祈り始めた。
その様子を見ると、未練があるように感じられる。
奴はそんなにいい仕事をしていたのかしら。
ひと通り勇者の死に対する祈りが終わると、運ばれてきたアルコール度数が50%を超える酒をガブガブと飲み始めていた。
ヤケ酒かしら。
聖戦士を自殺に追い込んだ事に対するダメージを、お酒で誤魔化そうとしている感じでしょうか。
お酒がまわっていくとロリ巨乳神官はボロボロに泣き始め、実は聖戦士は優しかったという全然興味が無い話しを延々と聞かされてしまった。
「ところで三華月様は、どうして、お酒を飲まれないのですか。」
「アルコールは、スキル『自己再生』の効果により毒効果のある飲み物と判定されるため、摂取しても浄化治癒されるからです。」
「え、自己再生ですか!」
「はい。お酒を飲んでも、意味がないと言いますか酔うことが出来きません。」
「『自己再生』って神スキルじゃないですか。さすが、最高神アルテミス神の大聖女様は、私とは何もかも違うんですね。」
「神官は無駄に乳がでかいし、男の煩悩を刺激するのでしょう。」
私の言葉に酔いがまわっている様子のロリ巨乳神官が机を両手で叩き付けて勢いよく立ち上がった。
周りで楽しく飲んでいた男達の視線が集まってくる。
無駄によく揺れている乳に釘付けになっているようだ。
激怒している様子のロリ巨乳神官が、すわっている目で乳を擁護する発言をしてきた。
「乳は関係無いでしょう。それに無駄ってどういう事ですか!」
「それにしても、無駄によく揺れる乳なのですね。」
「三華月様。乳を敵視しないで下さい!」
「その煩悩の塊ともいえる無駄によく揺れる乳に、あの聖戦士は夢中だったというわけですか。」
「なんでそんな事を知っているのですか。そもそも乳は関係ありません。聖戦士様にとって、私は都合のいい1人の女だっただけのことですよ。」
その後、ロリ巨乳神官から聖戦士について、再び取り留めのない眠たい話しを延々に聞かされてしまった。
ロリ巨乳神官は、聖戦士がハーレム王である事を知らずに真剣に付き合っていたそうだ。
本日、迷宮へ潜る前に忍者から、聖戦士がギルド内の複数の女と関係を結んでいた話しを聞き、ギルドから追放する計画に加わり、聖戦士の追放が成功した現在は、忍者が後任の役目をつとめているらしい。
社会的抹殺をされたことは自業自得かもしれないが、忍者は相当に腹黒である可能性が高い。
―――――――私は忍者が気に入らない。
それは私の獲物を横取りして、A級冒険者に成り上がろうとしているからだ。
私の心は小さな水溜まりよりも狭いのだ。
正面の席からいつの間にか、隣の席に移動してきたロリ巨乳神官がグダグダになりながら、自身がとった行動について呟く声が聞こえてきてきた。
「三華月様。私は一体どうしたらよかったのでしょうか。」
「本当に神官は、聖戦士に愛されていなかったのでしょうか。」
「どういうことですか。」
「忍者の言葉を鵜呑みにするのではなく、聖戦士と向き合って話しをするべきだったように思えますが、実際には、どうするべきかなんて神官にしか分からないことだと思います。」
◇
ロリ巨乳神官を置いて酒場から出ると、少し雨足が強くなっていた。
歓楽街の賑わいは衰えておらず、雨の影響なく深夜0時までは街のボルテージが上がり続けていく感じがする。
歓楽街を抜け、街の外れにある親子4人で経営している古い木造2階建ての宿屋に戻ると、受付カウンターの前にあるテーブルに黒装束に身を包んだ小柄な男が座っていた。
強斥候の吹雪月だ。
「三華月様。待っていたっす。」
「私をストーカーしたい気持ちは理解して差し上げます。ですが、制裁鉄拳の餌食になりたくないのなら、このまま何も言わずお帰りください。」
「三華月様にストーカーだなんて、そんな度胸は僕にはないっす。」
「そうですか。それではお帰り願います。」
その時、注意が散漫な様である強斥候が、不穏な視線をどこかに送っていることに気が付いた。
その先には宿屋の爆乳女将がいる。
酒場に続きこちらの宿屋でも無駄に揺れる乳のパワーを見せつけられてしまった。
注意がそれている強斥候へ『隠密』を発動させながら気配なく近づくと、鼻の下を伸ばしてあほづらをしている黒装束の男の側頭部へ鉄拳を振り下ろした。
『ボコ』
強斥候の体が床に叩きつけられ、白目をむきながらバウンドした。
意識を失いながらも受け身をとっている。
戦闘力はないが、さすがと言える。
宿屋内の者は気が付いていない。
黒装束の男が即座に意識を戻すと、そのままうめき声をあげながら狭い宿屋のロビーの床を機敏に転がり始めた。
私がいうのもなんだが、相当痛そうにしている。
床をのたうち回っている強斥候へ近寄ろうとしている女将を手で制していると、床を転がりながら抗議を言い始めてきた。
「まじで、当たり所が悪かったら痛いじゃ済まないくらい痛いんですよ!」
「いやらしい目で爆乳女将を、見ていた強斥候を成敗させてもらいました。」
「だから、爆乳への嫉妬はやめて下さいよ!」
『ボコボコ』
「ず、び、ば、ぜ、ん、でした。」
雨足が更に強くなってきたようだ。
古い木造建築の中にいても、雨が落ちる音が聞こえてくる。
現在この宿屋は私の貸し切り状態になっているため、お客さんはいないが、宿屋を経営している家族が建物内を清潔に掃除してくれていた。
宿屋の玄関ホールの床をのたうち回っていた強斥候が、芋虫が床を滑るようにテーブル席に戻り始めている。
「それで私に何の御用ですか?」
「三華月様。A級冒険者を決める『オリオン』についてご存知ですか。」
「聖戦士が、もうすぐB級冒険者に降格する噂を聞いています。」
酒場で盛り上がっていたくだらない話しだ。
上位4位までのB級冒険者がそれぞれパーティーを組み、ギルドが指定したA級迷宮を最速で攻略した者がA級冒険者へ昇格するルールだったかしら。
強斥候が前がかりに身を乗り出してきた。
「勇者パーティーを改めて、美人賢者パーティーに変更したんですけど、僕達も『オリオン』へ参加する予定なんです。」
「そうですか、頑張って下さい。」
「もちろんです。だが美人賢者は現時点でB級5位なんです。」
「それでは『オリオン』に出られないじゃないですか。」
「問題ないっす。トップ4に入るために明日、A級迷宮を攻略しようと思います」
「健闘を祈らせてもらいます。」
「えっ。何を言っているんすか。健闘を祈るって、三華月様って、そんな真面目な言葉を口にする聖女様でしたっけ?」
真面目な聖女という基準が意味不明だ。
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自身が無茶苦茶失礼な発言をしたことに気づいていない強斥候は、恥ずかしげもなく堂々と協力を求めるお願いをしてきた。
「三華月様。力を貸して下さい。僕達だけでA級迷宮突破は無理です。」
「全く興味がないので、お断りします。」
「忍者に勝てるのは、三華月様以外しかいません。」
強斥候が気持ちいい感じでたたみかけてきた。
忍者か。
地下迷宮で信仰心が下がったときの映像が蘇ってくると、怒りがぶり返してきた。
このままだと、忍者の目論み通り事が運んでしまうというわけか。
「忍者が私の信仰心を下げた時の出来事を思い出しました。」
「三華月様、やり返しましょう。でないと、鬼聖女様らしくないです!」
「私を踏み台にして、一人勝ちしようとしている忍者を、私は地獄に叩き落としたい!」
「うわぁ、鬼聖女様のその駄目っぷり。凄く心強いです。」
『ボコボコボコ』
「ず、び、ば、ぜ、ん、で、し、た。」
A級迷宮攻略の話しを聞いて、地下ダンジョンへ置き去りにしてきた聖戦士の姿が頭に浮かんできた。
理由の無い同族殺しは出来ないし、危害も与えられないため、『オリオン』に参加したとしても、私自身が忍者と戦うことは出来ない。
私の憂さ晴らしをするためには、誰かが代行し忍者と戦ってもらわなければならない。
勇者と強斥候は力不足というか論外だ。
消去法となるが、その役目を果たせるのは聖戦士しかいないだろう。
美人賢者パーティーには席の空きがある。
聖戦士を迷宮に置きざりにして約6時間が経過しているが、まだ生きているかもしれない。
「いいでしょう。美人賢者に力を貸しましょう。」
「有難うございます。これで鬼に金棒以上っす。」
「今からすぐA級迷宮の攻略を開始します。」
「い、今からですか?」
「6時間前、A級迷宮の地下4層に、聖戦士を置き去りにしてしまいました。生きていたらパーティーに入れようと思います。」
「今からすぐは無理っすよ。」
「無理とはやる前に言う言葉ではなく、やった結果、無理だったというものですよ。」
「うわぁ。また真面目なことを言われてしまった。残念ですが、僕には全く響きません。」
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これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
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宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
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そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
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ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
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第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
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崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
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