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第121話 亜弐羅、突撃!
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淀みない空気が流れる風の音が聞こえてくる。
岩地帯をトンネル状にくり貫いた迷宮は、凹凸がなく綺麗に仕上げられていた。
商店街からは人の気配が感じられないものの、まだ朽ちているようには見えない。
正面に立っている小柄な少女が、顔を歪ませて私を睨みつけていた。
伐折羅海賊団の1人。亜弐羅と名乗る少女だ。
身長は155cm程度。
可愛いらしい衣装にまとめたボブカットの少女である。
少女からは並々ならぬ殺意が発せられていた。
自身よりも遥かに可愛い聖女の存在が、気に入らないらしい。
現れた当初はキラキラした笑顔をつくりながら可愛いポーズを決め、猫なで声を出していたが、裏の顔というか本性を曝け出してきていた。
その少女の変貌ぶりが受け入れられない少年神官は、動揺しながらも最後の言葉を絞り出してきた。
「これは、僕の知っている亜弐羅ちゃんじゃない。」
表と裏の顔を使い分けることに抵抗のない者は結構多くいる。
いわゆる本性を見せないというやつだ。
人は、良い顔をしながら信頼を勝ち得ようとする。
本来の姿を曝け出してくる場面は、追い込まれ時、優位な立場になった際と様々であるが、今回の亜弐羅の場合は、口封じができる環境が揃っていると判断してのことだろう。
亜弐羅の本性が受け入れられないでいる様子の少年神官に対し、親友である土竜が精一杯な感じのフォローをしてきていた。
「簾簾君。人というものは少なからず表と裏の2面性を持っているものです。あれも亜弐羅の姿なのです。受け入れて下さい。」
「いや違う。あんなの、絶対に亜弐羅ちゃんなはずがない!」
「人には裏の顔があることなんて、よくある話しじゃないですか。」
「だから、笑顔が素敵な女の子に裏の顔なんてあるはずない。亜弐羅ちゃんは心が綺麗な女の子なんだ!」
「例えばなんですが、世界にいる魔法少女の優しい両親は、娘が世界の平和のために戦うために、派手な衣装へ変身していることは知らないと聞きました。」
「そうか。つまり亜弐羅ちゃんは悪の組織に精神をのっとられて操られている可能性が高いと考えられるんだな!」
土竜と少年神官の会話は、全く噛み合っていないのではなかろうか。
見当違いのことを言っている土竜の話しを捻じ曲げて、少年神官は無理やり自分の気持ちを納得しようとしているようだ。
そんな訳の分からないやりとりをよそに、亜弐羅は鋭い眼光を私に向けながら戦闘準備をとり始めていた。
羽織っているアウターの内ポケットより護符を出してきた。
「まず『武術家』の魂を私に付加するぞ!」
少女の張りのある声と共に握られていた護符がピンと立ち上がった。
そして、その護符が燃え始め灰になっていく。
合わせて亜弐羅の体が闘気のようなものに包まれていた。
護符の効果により、武闘家の技術が使用可能な状態になったのだろう。
少女は、更に続けて残りの2枚の護符を抜き取ると、再び宣言をしてきた。
「私は更に『身体超強化』と、『メガトンパンチ』の魂を付与するぞ!」
宣言と共に、2枚の護符が燃えると、へそ出し衣装の腹筋が割れ始めていく。
体全体の筋肉があからさまに隆起し、華奢な少女がマッチョな体付きになっていた。
闘志心と殺意をむき出しにした瞳は、獰猛な獣のように鋭く私を睨んでいる。
緊張感が高まっていく中、少年神官と土竜は和気あいあいと謎の会話を続けており、少女の変貌した姿に気が付いていない。
凶悪な表情を浮かべている亜弐羅は、両手を地面へ付き背筋を伸ばしながら徐々に体を前で倒し、クラウチングスタートの姿勢をとり始めた。
最短で距離をつめ、『メガトンパンチ』とやらを打ち込んでくるつもりのようだ。
身にまとう闘気が臨界点を超えたのだろう。
一歩目の足が出ると、一気に推進力を増しながら距離を縮めてきた。
一般の者なら反応出来ないくらい少女の動きら速い。
――――――亜弐羅は、ゼロ距離まで詰め寄ってきたタイミングで、片足に荷重を乗せ、体を捻りながら右手をグイっと引き溜めをつくってきた。
渾身の右ストレートを叩きこもうとしてくるようだ。
常人では有り得ないスピードと、洗練された動きではあるのだが、私からすると遅すぎる。
脳内処理速度が上がり、亜弐羅の動きがスローモーションのように見えていた。
同族殺しは大罪だ。
だから殺しはしない。
亜弐羅の方は、この行動を見る限り、これまで多く人を殺してきたのかもしれない。
少女から渾身ともいえる右ストレートが繰り出されてきた。
私は、その攻撃を軽く回避しながら、伸びきった少女の腕を掴んだ。
同時に亜弐羅の肩から首を同時にしっかり固定させていく。
瞳孔が開いた亜弐羅の視点は私からズレており、自身が何をされているか見えていない。
亜弐羅の肩を軸にして、体を回転させるように力を少し加えると、突進してきた勢いのままに少女の体がクルリと前方宙返りをし、背中から地面へ叩き落ちていった。
亜弐羅の体が、叩きつけられた地面へめり込んでいく。
憎しみと怒りの感情が入り混じった顔のままだ。
蜘蛛の巣が広がっていくような亀裂が岩場へ広がり、寂しかった迷宮内に、雷が落ちたような炸裂音による衝撃波が走った。
炸裂音に内蔵が揺れ、衝撃により土竜の体は浮いている。
何が起きたのか把握出来ないでいる少年神官は声の無い悲鳴を上げながら体勢を崩していた。
体が地面にめり込んでいる亜弐羅はというと、半目になり口から泡を吹いている。
迷宮内には、炸裂音と衝撃の余波がしばらく続いていた。
岩地帯をトンネル状にくり貫いた迷宮は、凹凸がなく綺麗に仕上げられていた。
商店街からは人の気配が感じられないものの、まだ朽ちているようには見えない。
正面に立っている小柄な少女が、顔を歪ませて私を睨みつけていた。
伐折羅海賊団の1人。亜弐羅と名乗る少女だ。
身長は155cm程度。
可愛いらしい衣装にまとめたボブカットの少女である。
少女からは並々ならぬ殺意が発せられていた。
自身よりも遥かに可愛い聖女の存在が、気に入らないらしい。
現れた当初はキラキラした笑顔をつくりながら可愛いポーズを決め、猫なで声を出していたが、裏の顔というか本性を曝け出してきていた。
その少女の変貌ぶりが受け入れられない少年神官は、動揺しながらも最後の言葉を絞り出してきた。
「これは、僕の知っている亜弐羅ちゃんじゃない。」
表と裏の顔を使い分けることに抵抗のない者は結構多くいる。
いわゆる本性を見せないというやつだ。
人は、良い顔をしながら信頼を勝ち得ようとする。
本来の姿を曝け出してくる場面は、追い込まれ時、優位な立場になった際と様々であるが、今回の亜弐羅の場合は、口封じができる環境が揃っていると判断してのことだろう。
亜弐羅の本性が受け入れられないでいる様子の少年神官に対し、親友である土竜が精一杯な感じのフォローをしてきていた。
「簾簾君。人というものは少なからず表と裏の2面性を持っているものです。あれも亜弐羅の姿なのです。受け入れて下さい。」
「いや違う。あんなの、絶対に亜弐羅ちゃんなはずがない!」
「人には裏の顔があることなんて、よくある話しじゃないですか。」
「だから、笑顔が素敵な女の子に裏の顔なんてあるはずない。亜弐羅ちゃんは心が綺麗な女の子なんだ!」
「例えばなんですが、世界にいる魔法少女の優しい両親は、娘が世界の平和のために戦うために、派手な衣装へ変身していることは知らないと聞きました。」
「そうか。つまり亜弐羅ちゃんは悪の組織に精神をのっとられて操られている可能性が高いと考えられるんだな!」
土竜と少年神官の会話は、全く噛み合っていないのではなかろうか。
見当違いのことを言っている土竜の話しを捻じ曲げて、少年神官は無理やり自分の気持ちを納得しようとしているようだ。
そんな訳の分からないやりとりをよそに、亜弐羅は鋭い眼光を私に向けながら戦闘準備をとり始めていた。
羽織っているアウターの内ポケットより護符を出してきた。
「まず『武術家』の魂を私に付加するぞ!」
少女の張りのある声と共に握られていた護符がピンと立ち上がった。
そして、その護符が燃え始め灰になっていく。
合わせて亜弐羅の体が闘気のようなものに包まれていた。
護符の効果により、武闘家の技術が使用可能な状態になったのだろう。
少女は、更に続けて残りの2枚の護符を抜き取ると、再び宣言をしてきた。
「私は更に『身体超強化』と、『メガトンパンチ』の魂を付与するぞ!」
宣言と共に、2枚の護符が燃えると、へそ出し衣装の腹筋が割れ始めていく。
体全体の筋肉があからさまに隆起し、華奢な少女がマッチョな体付きになっていた。
闘志心と殺意をむき出しにした瞳は、獰猛な獣のように鋭く私を睨んでいる。
緊張感が高まっていく中、少年神官と土竜は和気あいあいと謎の会話を続けており、少女の変貌した姿に気が付いていない。
凶悪な表情を浮かべている亜弐羅は、両手を地面へ付き背筋を伸ばしながら徐々に体を前で倒し、クラウチングスタートの姿勢をとり始めた。
最短で距離をつめ、『メガトンパンチ』とやらを打ち込んでくるつもりのようだ。
身にまとう闘気が臨界点を超えたのだろう。
一歩目の足が出ると、一気に推進力を増しながら距離を縮めてきた。
一般の者なら反応出来ないくらい少女の動きら速い。
――――――亜弐羅は、ゼロ距離まで詰め寄ってきたタイミングで、片足に荷重を乗せ、体を捻りながら右手をグイっと引き溜めをつくってきた。
渾身の右ストレートを叩きこもうとしてくるようだ。
常人では有り得ないスピードと、洗練された動きではあるのだが、私からすると遅すぎる。
脳内処理速度が上がり、亜弐羅の動きがスローモーションのように見えていた。
同族殺しは大罪だ。
だから殺しはしない。
亜弐羅の方は、この行動を見る限り、これまで多く人を殺してきたのかもしれない。
少女から渾身ともいえる右ストレートが繰り出されてきた。
私は、その攻撃を軽く回避しながら、伸びきった少女の腕を掴んだ。
同時に亜弐羅の肩から首を同時にしっかり固定させていく。
瞳孔が開いた亜弐羅の視点は私からズレており、自身が何をされているか見えていない。
亜弐羅の肩を軸にして、体を回転させるように力を少し加えると、突進してきた勢いのままに少女の体がクルリと前方宙返りをし、背中から地面へ叩き落ちていった。
亜弐羅の体が、叩きつけられた地面へめり込んでいく。
憎しみと怒りの感情が入り混じった顔のままだ。
蜘蛛の巣が広がっていくような亀裂が岩場へ広がり、寂しかった迷宮内に、雷が落ちたような炸裂音による衝撃波が走った。
炸裂音に内蔵が揺れ、衝撃により土竜の体は浮いている。
何が起きたのか把握出来ないでいる少年神官は声の無い悲鳴を上げながら体勢を崩していた。
体が地面にめり込んでいる亜弐羅はというと、半目になり口から泡を吹いている。
迷宮内には、炸裂音と衝撃の余波がしばらく続いていた。
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