122 / 142
第122話 ◯◯◯を踏む呪い
しおりを挟む
亜弐羅を地面に叩き付けた際に発生して衝撃音はこだまし、岩地をくり貫いてつくられた迷宮内が揺れていた。
大きな波に揺られている小舟に乗っているような感覚だ。
人の気配がなくなってしまった100軒以上が軒を連ねている商業ギルドの建物は、地震のような揺れにより、軋み音を上げているようだ。
岩盤に体がめり込んでしまい泡を吹き失神している亜弐羅は、迷宮主の土竜が手持ちのスコップにて救出されており、少年神官の廉廉による介抱を受けていた。
護符の効果で隆起していたマッチョな筋肉は元へ戻り、華奢な姿へ戻っている。
静寂が戻ってきた頃、ようやくといった感じで亜弐羅が目を覚ますと、心配そうに少年神官が声をかけていた。
「亜弐羅ちゃん。大丈夫かい。僕のことは分かるかい。」
亜弐羅はまだ意識を朦朧とさせているようだ。
じきに自身に何が起きたのかを思い出すだろう。
衝動的に暴力行為に至ってしまう少女の性格であることを考えると、今のうちに可能な対処をしておくべきところか。
少年神官に支えられながら上半身を起こしていた亜弐羅に、自然な感じでそっと手に触れてみると、少女の中に獲得しているスキルの存在を感じる。
どす黒い心を持っている少女が獲得しているスキルは、今のうちに破壊しておくべきかしら。
————————少女のスキルへ『SKILL VIRUS』を発動させる。
亜弐羅が持つスキルの破壊が始まったことを確認した。
7日後にはそのスキルは完全消滅する。
私の様子に違和感を覚えた土竜がその正体について質問をしてきた。
「三華月様。今しがた亜弐羅へ触れた瞬間、何かのスキルを使用したように見えましたが、もしかして……」
土竜達には分からないようにスキルを発動させたつもりであったが、それに気がつくとは、なかなか出来るではないか。
さすがA級相当の魔物といったところか。
安全第一と書かれているヘルメットを被りサングラスをかけている土竜が、足元からグイっと下から見上げてきて、微妙にプレッシャーをかけてきているように感じる。
少女の背中をさすっていた少年神官は、土竜の言葉に困惑の表情を浮かべていた。
一瞬のためをつくった土竜が、言いにくそうな口調を演出しながら予測外の言葉を口にしてきた。
「三華月様。もしかして…」
「もしかして、何ですか。」
「今しがた亜弐羅に対してかけた呪いとは…」
「呪いとは、どう言うことですか。」
「三華月様は亜弐羅へ、『一定間隔でうんこを踏んでしまう』みたいな呪いをかけたられたのでしょうか。」
「…」
うんこを踏む呪いだと!
ある意味最強の精神的な苦痛を与える攻撃だ。
といいますか、その発想がどこから生まれきたのでしょうか。
私のことをうんこの神様とでも思っているのかしら。
少年神官からは、鋭い視線を送ってきており無言の抗議をしてきているように感じられる。
ちょっと待て。土竜からの言葉を鵜呑みにしたのかよ。
私は神聖職に頂点に立つ聖女なのだぞ。
「今しがた亜弐羅に発動させたスキルとは、うんこの呪いではなく、『SKILL_VIRUS』を撃ち込まさせてもらいました。」
「うんこを踏む呪いではなかったのですか。」
「なんだ。土竜君の早とちりだったのかよ。」
そうこうしているうちに、亜弐羅の目の焦点が定まり始めてきていた。
意識がクリアになってきているようだ。
ぼんやり遠くを見つめていた亜弐羅の顔に血の気が戻り始め、私を見る目からは恐れのようなものを感じる。
さすがに私との技量の違いを認識しているようだ。
亜弐羅は、119話にて商業ギルドへ強襲を仕掛けてきた際、『悪の巣窟を見つけたぞ』と言っていた。
一体なぜここが狙われたのか。
そして空間の隙間にある商業ギルドまで来た手段について少女本人に聞かなめればならない。
ダメージが深く、まだ起きることが出来ないでいる亜弐羅へ質問を開始した。
「亜弐羅に質問があります。この商業ギルドのことを悪の巣窟と言っていましたが、誰かにそう教えられたのでしょうか。」
「伐折羅提督だ。」
「何故、ここが悪の巣窟なのかその理由も教えて下さい。」
「ここにいた商人達は、食料不足で苦しんでいる七武列島の者達から金をむしり取る悪以外の何者でもないと言っていた。」
「つまり、伐折羅提督に商業ギルドを強襲するように命令されたわけですか。」
「私自身の判断だ。」
「あなたにはお仲間いると聞きましたが、一緒に行動する方が効果的だったのではないですか。」
「仲間とは、年増ババアと根暗女のことか。」
「その表現はともかく、仲間とは迷企羅と九毘羅のことです。」
「ここを見つけたのは私なんだ。あいつらに手柄を横取りされる真似なんてするかよ!」
ついさきほどまで、私に怯えていた少女が憎しみのこもった感情を現してきた。
九毘羅と迷企羅に対する強烈な怒りが感じられる。
少女が商業ギルドを強撃した行為については、伐折羅提督達は知らないということか。
とりあえず、知りたいことも聞けた。
ここで質問は終わりとして差し上げましょう。
話しによると、伐折羅提督は商人達が悪といっていたことを考慮すると、物事を短絡的に判断するのかもしれない。
何にしても、迷惑な奴等であることを認識した。
大きな波に揺られている小舟に乗っているような感覚だ。
人の気配がなくなってしまった100軒以上が軒を連ねている商業ギルドの建物は、地震のような揺れにより、軋み音を上げているようだ。
岩盤に体がめり込んでしまい泡を吹き失神している亜弐羅は、迷宮主の土竜が手持ちのスコップにて救出されており、少年神官の廉廉による介抱を受けていた。
護符の効果で隆起していたマッチョな筋肉は元へ戻り、華奢な姿へ戻っている。
静寂が戻ってきた頃、ようやくといった感じで亜弐羅が目を覚ますと、心配そうに少年神官が声をかけていた。
「亜弐羅ちゃん。大丈夫かい。僕のことは分かるかい。」
亜弐羅はまだ意識を朦朧とさせているようだ。
じきに自身に何が起きたのかを思い出すだろう。
衝動的に暴力行為に至ってしまう少女の性格であることを考えると、今のうちに可能な対処をしておくべきところか。
少年神官に支えられながら上半身を起こしていた亜弐羅に、自然な感じでそっと手に触れてみると、少女の中に獲得しているスキルの存在を感じる。
どす黒い心を持っている少女が獲得しているスキルは、今のうちに破壊しておくべきかしら。
————————少女のスキルへ『SKILL VIRUS』を発動させる。
亜弐羅が持つスキルの破壊が始まったことを確認した。
7日後にはそのスキルは完全消滅する。
私の様子に違和感を覚えた土竜がその正体について質問をしてきた。
「三華月様。今しがた亜弐羅へ触れた瞬間、何かのスキルを使用したように見えましたが、もしかして……」
土竜達には分からないようにスキルを発動させたつもりであったが、それに気がつくとは、なかなか出来るではないか。
さすがA級相当の魔物といったところか。
安全第一と書かれているヘルメットを被りサングラスをかけている土竜が、足元からグイっと下から見上げてきて、微妙にプレッシャーをかけてきているように感じる。
少女の背中をさすっていた少年神官は、土竜の言葉に困惑の表情を浮かべていた。
一瞬のためをつくった土竜が、言いにくそうな口調を演出しながら予測外の言葉を口にしてきた。
「三華月様。もしかして…」
「もしかして、何ですか。」
「今しがた亜弐羅に対してかけた呪いとは…」
「呪いとは、どう言うことですか。」
「三華月様は亜弐羅へ、『一定間隔でうんこを踏んでしまう』みたいな呪いをかけたられたのでしょうか。」
「…」
うんこを踏む呪いだと!
ある意味最強の精神的な苦痛を与える攻撃だ。
といいますか、その発想がどこから生まれきたのでしょうか。
私のことをうんこの神様とでも思っているのかしら。
少年神官からは、鋭い視線を送ってきており無言の抗議をしてきているように感じられる。
ちょっと待て。土竜からの言葉を鵜呑みにしたのかよ。
私は神聖職に頂点に立つ聖女なのだぞ。
「今しがた亜弐羅に発動させたスキルとは、うんこの呪いではなく、『SKILL_VIRUS』を撃ち込まさせてもらいました。」
「うんこを踏む呪いではなかったのですか。」
「なんだ。土竜君の早とちりだったのかよ。」
そうこうしているうちに、亜弐羅の目の焦点が定まり始めてきていた。
意識がクリアになってきているようだ。
ぼんやり遠くを見つめていた亜弐羅の顔に血の気が戻り始め、私を見る目からは恐れのようなものを感じる。
さすがに私との技量の違いを認識しているようだ。
亜弐羅は、119話にて商業ギルドへ強襲を仕掛けてきた際、『悪の巣窟を見つけたぞ』と言っていた。
一体なぜここが狙われたのか。
そして空間の隙間にある商業ギルドまで来た手段について少女本人に聞かなめればならない。
ダメージが深く、まだ起きることが出来ないでいる亜弐羅へ質問を開始した。
「亜弐羅に質問があります。この商業ギルドのことを悪の巣窟と言っていましたが、誰かにそう教えられたのでしょうか。」
「伐折羅提督だ。」
「何故、ここが悪の巣窟なのかその理由も教えて下さい。」
「ここにいた商人達は、食料不足で苦しんでいる七武列島の者達から金をむしり取る悪以外の何者でもないと言っていた。」
「つまり、伐折羅提督に商業ギルドを強襲するように命令されたわけですか。」
「私自身の判断だ。」
「あなたにはお仲間いると聞きましたが、一緒に行動する方が効果的だったのではないですか。」
「仲間とは、年増ババアと根暗女のことか。」
「その表現はともかく、仲間とは迷企羅と九毘羅のことです。」
「ここを見つけたのは私なんだ。あいつらに手柄を横取りされる真似なんてするかよ!」
ついさきほどまで、私に怯えていた少女が憎しみのこもった感情を現してきた。
九毘羅と迷企羅に対する強烈な怒りが感じられる。
少女が商業ギルドを強撃した行為については、伐折羅提督達は知らないということか。
とりあえず、知りたいことも聞けた。
ここで質問は終わりとして差し上げましょう。
話しによると、伐折羅提督は商人達が悪といっていたことを考慮すると、物事を短絡的に判断するのかもしれない。
何にしても、迷惑な奴等であることを認識した。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる