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第138話 ブラザー。アミーゴ。
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夜空から落ちてきている月明かりが、微かに揺れている漆黒の海面へ拡散反射している。
吹いていた風がとまり、暗黒の海から音が消えていた。
360度水平線が広がる景色は、うっせきしたものを全て払いのけたような眺めだ。
私はスキル『壁歩』を発動させながら、海面をゆっくりとした歩調で歩いていた。
隣には、赤色RARE種が少年神官と土竜を背中に乗せ並走している。
進む先の水平線に伐折羅提督の海賊船が見えていた。
赤色RARE種にここまで先導してもらっていたのだ。
少年神官と土竜に関しては、回廊内へ置いてくるつもりであったが、2人からの強い申し出により同行することを承諾した。
ここへ来た目的は、海賊船にて摩凛の元まで運んでもらうため。
月の加護を受けている今夜のうちに、摩凛と海龍との決着をつけるつもりだ。
赤色RARE種からの話しによると、猛獣使いに摩凛が『ガルグイユ』という海竜を使役しているように思える。
だが、S級相当スキルをもってしても、最強種を服従させること出来るとは思えない。
何にしても、摩凛の元へ行くことさえすれば事情があきらかになり、七武列島の食料問題に決着がつくだろう。
海賊船は我々が接近していることに気が付いていない。
簡単に侵入できそうだ。
ここまで案内してくれた赤色RARE種へ声をかけた。
「赤色RARE種さん。ここまで案内していただき有難うございました。」
<我々は三華月様の味方です。>
「この先は私の方で対処させてもらいます。」
<ご武運を祈っています。>
海上に浮かぶ赤色RARE種と別れ、甲板に向けて船体の側面を歩き始めた。
背後では、少年神官と土竜が、赤色RARE種とグータッチをしている。
先ほど会ったばかりなのにも関わらず、意気投合しているのか。
パーティピーポーは誰とでもすぐに友達になれると聞くが、さすがとしか言いようがない。
まぁ、私は友達にはなれないけどな。
海賊船の全長は約30m。
2本のマストを立てた帆船で、機動性に優れた設計になっている。
海賊船の甲板は海面から約5ⅿ。
音もなく登りきると、育ちの良さそうな男が仰向けになり寝ている姿があった。
伐折羅提督だ。
伸ばしている黒髪が少し潮焼けしている。
胸元まではだけた白いシャツを着ており、ズボンをブーツに入れていた。
体型はやや太め。
ワイルドで精悍な海賊団の船長という感じではない。
最後の取巻き、迷企羅の姿はない。
寝てしまっているが、船長自らが見張り役をしているようだ。
自然に起きるまで待ってあげたいところではあるが、私は急いでいる。
1分1秒でも早く、神託を遂行したいからだ。
少年神官と土竜がタラップのはしごから甲板へよじ登ってきたタイミングで、寝ている伐折羅提督へ声をかけた。
「私は聖女・三華月様です。あなたにお願いがあり、やってきました。」
「ZZZZ…」
「伐折羅提督。起きて下さい。」
「ZZZZ…」
「起きないと、信じられないくらいの後悔をすることになりますよ。」
「ZZZZ…」
伐折羅提督は目を覚ます様子はない。
疲れているのかしら。
聞こえていないのだろうが、警告は一応した。
鉄拳制裁を叩き込めば、確実に起きてくれるだろう。
背後から、土竜から、私の行動を注意するような声が聞こえてきた。
「三華月様。寝ている者に警告しても、それは警告したことになりませんよ。」
「土竜君。三華月様のボケに対して、その真面目なツッコミは駄目だぞ。」
「え。廉廉君。どういうことですか。」
「寝ている者を脅す行為は、効果がないくらい子供でも分かっていることだぞ。」
「そうですよね。天然の三華月様でも分かっていますよね。すいません。空気が読めないのは私の方でした。」
土竜が甲板に額を擦りつけ、渾身の土下座をしてきた。
私には、土下座をしている姿を見る趣味はあるが、何だか微妙な気持ちになる。
鬼可愛いヒロインが天然である法則は、私にも適用されているのか。
その時、土竜が甲板に額を叩き付けた振動により、伐折羅提督が目を覚ましてくれた。
ふっくらした顔付きの伐折羅が、仰向けの体勢から上半身を起こしている。
目をこすりながら周囲に視線を移すと、予期していなかった私達の姿を見るやいなや、猫のように俊敏に立ち上がった。
そして、慌てた感じで大きな声で定番の言葉を叫んだ。
「誰だ。お前達は!」
身構えている伐折羅は眼帯を装備していたが、両目とも目が開き瞳の瞳孔も動いている。
眼帯は船長としの嗜みだったようだ。
警戒している伐折羅に対し、少年神官と土竜が一歩前に出て、いつもと変わりない様子で頭を下げながら自己紹介を開始した。
「僕は七武列島の教会に仕える神官をしていた廉廉と言う者です。」
「俺は伐折羅だ。」
「伐折羅提督。よろしくお願いします。」
「おう。よろしくな。」
「そして隣で大きなスコップを持っている魔物は、僕の一緒に冒険をしているパーティメンバーの土竜です。」
「紹介に預かりました土竜です。以前は商業ギルドで迷宮主をしておりました。」
「俺は伐折羅だ。」
「よろしくお願いします。現在は廉廉君と一緒に冒険を楽しんでいます。」
「おう。よろしくな。」
やはり、2人は冒険を楽しんでいたのか。
伐折羅提督の方は突然の出来事に、空気にのまれているようだ。
その時である。
突然、少年神官と土竜がハイタッチをした。
そして、今まで見たことがない息の合ったグータッチのコンボーを続けている。
影で相当の練習をしてきたのかしら。
というか、一体、2人は何をしているのだろうか。
そして少年神官と土竜は、硬直していた伐折羅へご機嫌な様子で近づいていく。
ノリノリな雰囲気にのまれている伐折羅は、両拳を出し自然な感じで2人にグータッチをしてしまった。
「「「ウェーイ。」」」
「これで伐折羅君も僕達のブラザーだな。パーティに歓迎するよ。」
「アミーゴ、ヨロシク。」
「強敵を倒し、財宝をGETする冒険へ一緒に行こうぜ。」
「「「ウェーイ」」」
吹いていた風がとまり、暗黒の海から音が消えていた。
360度水平線が広がる景色は、うっせきしたものを全て払いのけたような眺めだ。
私はスキル『壁歩』を発動させながら、海面をゆっくりとした歩調で歩いていた。
隣には、赤色RARE種が少年神官と土竜を背中に乗せ並走している。
進む先の水平線に伐折羅提督の海賊船が見えていた。
赤色RARE種にここまで先導してもらっていたのだ。
少年神官と土竜に関しては、回廊内へ置いてくるつもりであったが、2人からの強い申し出により同行することを承諾した。
ここへ来た目的は、海賊船にて摩凛の元まで運んでもらうため。
月の加護を受けている今夜のうちに、摩凛と海龍との決着をつけるつもりだ。
赤色RARE種からの話しによると、猛獣使いに摩凛が『ガルグイユ』という海竜を使役しているように思える。
だが、S級相当スキルをもってしても、最強種を服従させること出来るとは思えない。
何にしても、摩凛の元へ行くことさえすれば事情があきらかになり、七武列島の食料問題に決着がつくだろう。
海賊船は我々が接近していることに気が付いていない。
簡単に侵入できそうだ。
ここまで案内してくれた赤色RARE種へ声をかけた。
「赤色RARE種さん。ここまで案内していただき有難うございました。」
<我々は三華月様の味方です。>
「この先は私の方で対処させてもらいます。」
<ご武運を祈っています。>
海上に浮かぶ赤色RARE種と別れ、甲板に向けて船体の側面を歩き始めた。
背後では、少年神官と土竜が、赤色RARE種とグータッチをしている。
先ほど会ったばかりなのにも関わらず、意気投合しているのか。
パーティピーポーは誰とでもすぐに友達になれると聞くが、さすがとしか言いようがない。
まぁ、私は友達にはなれないけどな。
海賊船の全長は約30m。
2本のマストを立てた帆船で、機動性に優れた設計になっている。
海賊船の甲板は海面から約5ⅿ。
音もなく登りきると、育ちの良さそうな男が仰向けになり寝ている姿があった。
伐折羅提督だ。
伸ばしている黒髪が少し潮焼けしている。
胸元まではだけた白いシャツを着ており、ズボンをブーツに入れていた。
体型はやや太め。
ワイルドで精悍な海賊団の船長という感じではない。
最後の取巻き、迷企羅の姿はない。
寝てしまっているが、船長自らが見張り役をしているようだ。
自然に起きるまで待ってあげたいところではあるが、私は急いでいる。
1分1秒でも早く、神託を遂行したいからだ。
少年神官と土竜がタラップのはしごから甲板へよじ登ってきたタイミングで、寝ている伐折羅提督へ声をかけた。
「私は聖女・三華月様です。あなたにお願いがあり、やってきました。」
「ZZZZ…」
「伐折羅提督。起きて下さい。」
「ZZZZ…」
「起きないと、信じられないくらいの後悔をすることになりますよ。」
「ZZZZ…」
伐折羅提督は目を覚ます様子はない。
疲れているのかしら。
聞こえていないのだろうが、警告は一応した。
鉄拳制裁を叩き込めば、確実に起きてくれるだろう。
背後から、土竜から、私の行動を注意するような声が聞こえてきた。
「三華月様。寝ている者に警告しても、それは警告したことになりませんよ。」
「土竜君。三華月様のボケに対して、その真面目なツッコミは駄目だぞ。」
「え。廉廉君。どういうことですか。」
「寝ている者を脅す行為は、効果がないくらい子供でも分かっていることだぞ。」
「そうですよね。天然の三華月様でも分かっていますよね。すいません。空気が読めないのは私の方でした。」
土竜が甲板に額を擦りつけ、渾身の土下座をしてきた。
私には、土下座をしている姿を見る趣味はあるが、何だか微妙な気持ちになる。
鬼可愛いヒロインが天然である法則は、私にも適用されているのか。
その時、土竜が甲板に額を叩き付けた振動により、伐折羅提督が目を覚ましてくれた。
ふっくらした顔付きの伐折羅が、仰向けの体勢から上半身を起こしている。
目をこすりながら周囲に視線を移すと、予期していなかった私達の姿を見るやいなや、猫のように俊敏に立ち上がった。
そして、慌てた感じで大きな声で定番の言葉を叫んだ。
「誰だ。お前達は!」
身構えている伐折羅は眼帯を装備していたが、両目とも目が開き瞳の瞳孔も動いている。
眼帯は船長としの嗜みだったようだ。
警戒している伐折羅に対し、少年神官と土竜が一歩前に出て、いつもと変わりない様子で頭を下げながら自己紹介を開始した。
「僕は七武列島の教会に仕える神官をしていた廉廉と言う者です。」
「俺は伐折羅だ。」
「伐折羅提督。よろしくお願いします。」
「おう。よろしくな。」
「そして隣で大きなスコップを持っている魔物は、僕の一緒に冒険をしているパーティメンバーの土竜です。」
「紹介に預かりました土竜です。以前は商業ギルドで迷宮主をしておりました。」
「俺は伐折羅だ。」
「よろしくお願いします。現在は廉廉君と一緒に冒険を楽しんでいます。」
「おう。よろしくな。」
やはり、2人は冒険を楽しんでいたのか。
伐折羅提督の方は突然の出来事に、空気にのまれているようだ。
その時である。
突然、少年神官と土竜がハイタッチをした。
そして、今まで見たことがない息の合ったグータッチのコンボーを続けている。
影で相当の練習をしてきたのかしら。
というか、一体、2人は何をしているのだろうか。
そして少年神官と土竜は、硬直していた伐折羅へご機嫌な様子で近づいていく。
ノリノリな雰囲気にのまれている伐折羅は、両拳を出し自然な感じで2人にグータッチをしてしまった。
「「「ウェーイ。」」」
「これで伐折羅君も僕達のブラザーだな。パーティに歓迎するよ。」
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