幻想戰國譚 兇

𝓚𝓪𝔂 -ケイ-

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巻之壱

- 壱 -

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「で?」
とホルターネックで背中を大きく開き、胸元も谷間を見せつけるようダイヤ形に開いた青紫色のマーメイドラインロングドレスに身を包み、全体は明るい栗色だが中間から毛先までピンク色に染まるロングヘアーを肩まで降ろした女性がジト目で聞くも、

「いや、俺に怒られても分からんよ。

聞いた所で皆が皆、口を開けばYOMOYAMA2チャンに流れてたばかりだ。

第3回アップデート 【 新天地 】が始まる少し前のベータ版で幾人かが部屋の中から忽然こつぜんと姿を消したのを隠蔽し、ゲーム会社は強引に 【 新天地 】を決行した。

結果、蓮とーー
アップデートを行ったプレイヤーが片っ端から消息を途絶えたって話さ。

今では第2回更新までのエリアサーバーを除いた新エリアやアイテムは全て文字化け処理の仕様外に指定されている始末で、メディアでも今回の件は連日取り沙汰されてるみたいだしね。」
と黒いスラックスに灰色のネクタイを締めた白ワイシャツの上から黒いベストを着る男性が苦笑いを浮かべる表情をしばらく見た後、

「ハァ…まぁの集めた情報が、ちまたで集められる情報としては、か。」
と青紫色のマーメイドラインロングドレスを着たロングヘアの女性が溜息混じりに言うのを聞きつつ、と呼ばれた男は項目画面インベントリを開き、

「後、分かっている事はーー
現実内時間リアルタイム3ヶ月2160時間の間ログイン状態が続いてるのにダイレクトメールDMショートメールSMSも届かず、更には項目画面インベントリを呼び出そうとしてもエラー表示でゲームマスターGMコールへの誘導表示のみ。

、こりゃあガチでぞ。」
と頭を抱えると呼ばれた男へ、

「詰んではいないよ。
、ね。」
と呼ばれた女性も項目画面インベントリを開き、そのままダイレクトメールDMの保管画面を出しながら、

が残ってる。」
と呟くように言うのを聞き、

「…これ、来てるのは俺らだけか?」
と苦笑いで聞く執事風の男は自分の項目画面インベントリからも同じ画面を出すと、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「やっぱ文字化けして読めねぇ…」
と頭を抱えるが、

「そう思ってーー
ネットにある文字化け解析ツールに落としたら何とか読めたわ。」
と自分の画面を執事風の男にも見せるように拡大すると、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

新しきセ界 新シき地 
汝ハ彼のチにテ 真ノ生をシる

魔がゥまれシクロき荒ヤ そノ先にテ在りシ門
渡レば 二度トは帰レぬ
然シテ 其ノ地のサき
新シき 旅ジが開ケよウ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

と言う文面を見ながら腕を組み、

「…“魔が生まれし黒き荒野”
…“その先にて在りし門”

………あ。」
と翻訳された言葉のに気付く執事風の男へ向けてニッと笑い、

「そう。
まっさか…とは思わないよねぇ✧︎」
と、と呼ばれた女性が言いつつうなずき、

「【Another Tale ONLINEATO】内の悪神であり、メインストーリーの最後を飾るプレイヤー泣かせのラストボスーー
魔皇まおうアルゴドゥスとの決戦場である地下大迷宮の最下層 混沌の宮殿ケイオスパレス破壊不能イモータルオブジェクトがとはね。」
と開いたマップを見ながら続けるが、

「ただ…すーちゃんよ?
行くのは良いんだけどさぁ…」
と遠い目をする執事風の男に続き、

「…そう。
1あるのよ。」
と頭を抱える、と呼ばれたロングヘアの女性も続けて溜息を吐くと、

「「 レベルがなぁ…。  」」
と2人で声を揃えて呟いた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「なぁ…昼飯にしねぇ?」
と文机に筆を放り投げる坊主頭の蓮は聞くも、

「お前、さっき休憩したばかりだろ。
ってか昼飯って、まだ11時半午一つ刻だし。」
と返しながらも手を止めず筆を動かし続けるセミロングを1つに結んだ独歩だが、

「あー、無理。
。」
と蓮は両手を着いて天井を仰ぐと、

「はい、手を止めな~い。
お前が矮人ドワーフに急ピッチな外壁改修を命じなけりゃぁ、こうはならなかったんだからな。」
と蓮を見ずに言う独歩へ、

「なァ~?
猫妖精ケットシーって来るの早められんの~?」
と聞くも、

「だから無理だっての。
この間ので負傷者が多数出て、こっちから森人エルフを派遣してるくらいだ。

引越し作業は大幅に早めているが、頑張ってもだよ。

…ったく、だから次の会議で各族長が集まってから計画を動かせって言ったのに。」
とブツブツ返す独歩に溜息を吐き、

「あ~…悪かった悪かった。
お前の小言はァ長いからいけねェ。」
と手を振った後で文机へ戻る蓮だが独歩はムッとした顔をすると、

「蓮、お前はなぁーー」
と言おうとした瞬間2人はにピクリッと反応し、

「…︎ん?
からか?」
と首を傾げる蓮の横で静かに筆を置くと、

御頭領おかしら。」
と呼ぶ独歩に続き、

「ハァ…女神の野郎がよォ…
面倒くせェ」
と蓮が立ち上がるのに続き、独歩も立ち上がるやふすまを開けて2人は静かに部屋を出た。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「…すーちゃん?」
と革製の装備に身を包み、身の丈はある木剣を構えつつ苦笑いで聞く短髪の男に、

…何も聞きたくない。」
と冷たく返すも、

MPマナからけつで、回復アイテム手持ちも無し……

何故か項目画面インベントリは開けれず、身につけているのは

じゃね?」
と革装備の男は無視して続けるも、

「そんなん言わんでも分かってるわ!!!

ってか…いきなり訳わかんない所に飛ばされて、何で目の前にが現れてんのよぉ!!!」
と叫ぶ青紫色のマーメイドラインロングドレスに身を包む、栗色とピンク色に染まったロングヘアーの女性が叫ぶも、

「すーちゃん、危ない!」
と灰色のフードマントに簡素な長い杖を持つ女性の叫びで頭上から銀白色の巨大なサソリがハサミを振り下ろすのに気付き咄嗟とっさに目をつむるも、ゴンッ!と鈍い音がした事で静かに目を開けると、

「痛ったァ…
たんこぶ出来たらァどォしてくれんだよォ。」
と言いながら頭でハサミを押し返す紺色の作務衣さむえ服の上から黒い長羽織へ袖を通さずに肩掛けし、下駄をカランッと鳴らして立つ蓮の姿を見て、

「「 蓮ちゃん!!!  」」
と叫ぶロングヘアの女性をと灰色のフードマントに簡素な長い杖を持つ女性を他所よそに、

「お前の石頭ならぬじゃあ、タンコブよりも魔物側向こうのハサミが壊れるだろ。」
と聞きなれない声に蓮の後ろへ視線を移すと、黒灰色の馬乗り袴に黒い着物を紺色の帯で締め、上から黒い長羽織を着る男がニヤッと笑みを浮かべつつ歩いてくるのが見え、

「「 どなた!? 」」
と更に叫ぶ2人へ手を挙げ、

「やほ、えりんこちゃん…ですよね?

そしてーー
我が御頭領おかしらの想い人✧︎
スフィカ・リーベル様♫

ようこそ、へ。

〚 まがつ一家 〛 参謀を努めます、凪凛 独歩なぎり どっぽと申します。」
と優しく笑いかける独歩に、

「どうも…って、って言いました?!」
と、えりんこと呼ばれた灰色のフードマントに簡素な長い杖を持つ女性が首を傾げるのを笑い、

「まァそうなるよなァ~。
“門の先は不思議な世界でした”って、だってのよなァ。」
とケラケラ笑いながら言う蓮へ、

「いや、あれは“トンネルの先”、な?」
と独歩が直ぐさまツッコむと、

「そだっけ?
ってかァ何ででこン所に居んのよ?

さてはァーー」
と首を傾げる蓮の後ろで、ダイヤモンドスコーピオンが再びハサミを振り上げるのを見て、

「蓮ちゃん!」
と青紫色のマーメイドラインロングドレスに身を包むスフィカは叫ぶも、

「おめェはさっきからーー
久々の家族との団欒だんらんくれェゆっくりさせろやァ、!!!」
と言うやダイヤモンドスコーピオンのハサミを右手で殴り左側に吹き飛ばしたかと思うと、直ぐさま高々と跳び上がり眉間を殴り付けた瞬間に叩きつけられた圧力で地面へクモの巣状のヒビが入って割れると共に砂埃を巻き上げ、晴れた後で見えたダイヤモンドスコーピオンが事故した車のような凹み跡を残しピクリとも動かずに潰れる姿へ、

「はい、。」
と蓮は言うも、

「「 え~… 」」
とドン引くスフィカとえりんこ含め一同を他所よそに、

「ザリガニ呼びかサソリ害虫呼びかハッキリしなさい。

…と言うか、そもそもザリガニじゃないから。」
とツッコむ独歩だが、

「「 いや、ツッコむ所そこ?! 」」
と返すスフィカとえりんこに、

「「 え? 」」
と蓮と独歩の2人は真顔で首を傾げた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

?」
と青々しく茂る草原の中で潰れたダイヤモンドスコーピオンの死体を背に聞く蓮だが、

「ん?
?」
と首を傾げて聞き返すスフィカに、

「いや…女神ルナミスだがァ…見てねェか?

ほれーー
あの~…ノーブラ・ノーパンでスッケスケのみてェなドレス着てェ、ソファに寝そべりながら話ィする

会わンかったかァ?」
と身振り手振りで説明する蓮だが、


「なによ、そのハレンチの塊…って、それより!!!

さっき独歩さん、って言った?!
ここってじゃないの!?」
と驚くスフィカだが、

「あぁ~…俺も、おんなじ反応してたよ。」
とケラケラ笑う独歩に、

「ン?
…今、って言った?」
と苦笑いで聞き返すえりんこへ、

「まぁそれも話すとしてーー
とりあえずァ…腹減らね?

だろ?
ペペロンチーノ食いてェ✧︎」
と笑う蓮に頭を抱え、

「お前…もうちょい危機感ってものをーー
あ、無理か。」
と直ぐさま呆れる独歩にスフィカ一同は大笑いした後、

「改めてーー
スフィカ・リーベルです。
こっちは妹のエリシア・リーベル。

後は…」
と後ろの仲間を紹介しようとするスフィカだが、

「待て待て。
全員紹介してたら日が暮れちまうか、魔物モンスターが来ちまうわィ。」
と笑う蓮に続き、

「ああ。
ゆっくりと異世界の説明もしたいからな。

とりあえずは移動しよう。」
と背後の遠くを指さす独歩に合わせて視線を向けると白い城壁が囲むファンタジー世界らしい西洋風の街があるのが見え、

「お~♡
いかにもだねぇ✧︎」
と喜ぶスフィカに、

「今いる場所はアムルディア王国領の前でね。

目の前に見えるーー
がアムルディアの首都であるレクトルムなんだが、普通に皆を連れて歩くとんだ。

そこでーー」
と言いながら袖の下をゴソゴソと探ると、

「皆にはを用意しました✧︎」
てのひら大の四角い結晶を取り出す独歩に、

「何これ?」
と聞くエリシアへ、

魔結晶まけっしょうと呼ばれるシロモノでね。

ファンタジー世界によくある魔石なんだがーー
こいつに時間停止と収容結界の術式紋を彫りこんである。」
と説明する独歩に続き、

「こいつにィ全員を突っこんで、した後に門の前で出してやるのがァ1番イイってェおれの案だ✧︎」
と笑う蓮だがスフィカ達は苦々しい表情をする独歩に目線が行き、

「…蓮ちゃんの大丈夫✧︎って笑顔を浮かべる横で、物凄い不安そうな独歩さんの顔が引っ掛かり倒してるんだけど…?」
とジト目で見るスフィカへ、

「え~っと…いちおなんだけど、ね。」
と目を逸らす独歩に、

「うん、それ絶対に大丈夫じゃないよね!?」
とツッコむスフィカだが、

「へェ~い♫
フィーナ大森林前特急 レクトルム行き✧︎

間もなく発車しまァす✧︎」
と指を鳴らした瞬間、

「ちょ、まーー!!!」
と言いかけたスフィカ一同が光の粒となって消えるや四角い結晶へと吸い込まれるのを見て、

「ハァ…後で恨み言を言われても俺のせいじゃねぇぞ?」
と溜息混じりに言う独歩へケラケラ笑い返し、

「そもそも言われるワケねェだろ✧︎
。」
と言う蓮に、

「あ、そっか。
確かに、それは酔わねぇわ。」
と納得する独歩を更にケラケラ笑い、

「まァーー
レクトルム向こォ着いたら直ぐに開いてやりゃァ良い。
それよか…なァ~んで、の方が問題だァ。

…何を企んでやがる。」
と据わった目で吐き捨てる蓮の頬をツンッと突っつくや、

「ほれ、してるぞ。
家族が絡むと直ぐのは、お前の悪いクセだ。」
と鼻で笑う独歩に気付き、

「ハァ…悪ィ。
出来るならァで居たいンだがァーー
。」
と頭を抱える蓮へ、

「大丈夫さ✧︎
や、その家族たちもキッチリ守ってやるがーー
。」
と拳を突き出す独歩を鼻で笑い、

「ああ。
分かってるよ。」
と蓮も拳をコツンッと当てると、遠くに見える白く美しい町並みを見ながら2人は準備運動を始めた。



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