蜜空間

ぬるあまい

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四空間目

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「(…何で怒ってんの?)」

この人の怒りの沸点が全然分からない。
それにキレたいのは俺の方だ。一発二発殴っても文句は言われないくらいの仕打ちをたった今されたばかりなのに、何故俺が睨まれているのだろうか。

少し一緒に話せて、少し一緒にゲーム出来たからといって舞い上がっていたのかもしれない。結局俺達は住む世界も、価値観も性格も違い過ぎたということだ。

「…離してください」

この人の顔を見るくらいならば、血の繋がっている凶悪面の弟の方がよっぽど安心できるだろう。むしろ今ならば恋しいくらいだ。例え俺が弟からどんなに疎まれ、嫌われているとしても。

しかしどんなに睨んで訴えても、神田さんは掴んだ俺の手を離そうとしない。
むしろ俺が抵抗して振り払おうとする度に、拘束されている腕はギリギリと痛いくらいに締め付けられた。

「…っ、離せ…!」
「何処に行くんだよ…?」
「だからっ!神田さんには関係ないでしょ!」
「答えろ!」

腰とケツの痛みに、現在進行形で続いている手首の痛さに苛付きながら少し強気で対応していたら、神田さんから更に強めに返されて思わずビクッと身体が震えてしまった。
怖くてまた泣いてしまいそうだ。でもここでまた泣いたら負けた気がするので、必死に涙を堪えながら負けずに食らい付く。

「…あんたの顔を見なくて済むところだよ」

しかし俺が言葉を紡ぐ度に、目の前の男からの凶悪過ぎるオーラが漂ってきて、語尾の方は段々と小さくなってしまったが、それは致し方がないことだろう。俺にしては頑張った方だ。大目に見てもらいたい。

「もういいでしょ。離してください…っ」

早く家に帰って自分のベッドでゆっくりと休みたい。
あ、でもその前にお風呂に入って綺麗にしないと。これって自分でケツの穴に指突っ込んで精液掻き出さないといけないのかなぁ。やだなぁ、凄く憂鬱だ。

「ふざけんな」

そしてそんな俺を更に鬱状態に追い込もうとしてくる神田さん。
どうやら素直に答えた俺を解放してくれる気はないようだ。

「…俺は一切ふざけてません」
「俺だけでは飽き足らず違う男を咥え込んでくる気か?あ?」
「はぁ?な、何言ってるんですか?」

神田さんの突拍子もない発想には首を捻ることしか出来そうにない。

「どいつだ?さっきの茶髪か?黒髪か?」
「や、やめてください…っ」

俺だけならまだしも、先程の優しい二人を侮辱されるのは許せない。
それに神田さんのような物好きでゲテモノ食いはそうそう居るわけがない。

「…俺はただもう家に帰りたいだけで、」
「は?弟に抱かれに行くのかよ、てめえは」
「だから何でそんな発想になるんですか…!」

冗談でも笑えない。しかし神田さんの表情を見る限り冗談ではなく本気で言っているのだろう。ふざけているのはそっちの方だろうが。何で俺が弟とそういうことをしなくちゃいけないんだ。どんな恐ろしい罰ゲームでもそんな内容は聞いたこともないぞ。
ホモの近親相姦なんて親不孝過ぎる。
それに弟は俺とセックスするくらいなら、俺を殺して殺人者にでもなるだろうよ。

「…大体俺なんかに勃起するのは、あんたくらいだろ」

蔑むように嫌味をふんだんに込めてボソッと呟いたのだが、密室空間では俺のそんな小さい声すらも神田さんの耳に届いてしまったようだ。

「はっ、馬鹿だなお前は。…まあ、分からなければそれはもうどうでもいい」

そうです。俺は馬鹿なんです。だから帰りますね。さようなら。そうきっぱりと告げれたらどれほど楽だっただろうか。
だけど俺が言葉を紡ぐよりも先に、神田さんは行動を起こした。

「……な、っ?」

何を思ったのか、俺の身体を乱暴に押さえつけ、無理矢理四つん這いにさせられた俺の腰を掴んできたのだ。

「何処にも行けねえように、このまま抱き殺してやる」
「…っ、は…?」
「俺の匂いが染み付いて落ちなくなるほどに中出ししてマーキングしてやるよ」

淫乱なお前は嬉しくて漏らしちまいてえくらいだろ?と、ねちっこいほどに熱い吐息を吐きながら耳元で囁かれ、先程まで酷使されていたケツ穴に再びグリッと熱いものを押し付けられた。

「ひ、ぃッ!?」

それが何かは見えなくても嫌でも分かる。
……神田さんの勃起したペニスだ。
何で俺なんかを相手に二回も勃起してやがるんだこの人は。本格的に頭がおかしいようだ。

「や、だ…っ、もう、やだよぉ!」
「ははっ、嘘吐け。ここは嬉しそうに収縮してるぜ?」
「…っ、う、ひ、ッ、ぃ」

違う、違う!それは嬉しくて収縮しているんじゃなくて、防衛本能が働いて異物を追い出そうとしているだけだ!勘違いするな、クソ野郎!
だけどそれを伝えたくても、今では恐怖で悲鳴のような声しか口から出ない。

「あ、っ…ひぃ、ッ、ぃや、いやっ」
「あー…。怯えている時のお前は素直で可愛いな」
「か、んだ、さっ…お、ねが…ぃや、や、やぁっ」
「ふは。何だそれ。ケツ振って誘ってんのか?」

おねだり上手だな。と喉元で笑いながら言われて死にたくなった。
俺は抵抗しているだけだというのに、何という仕打ちなのだろうか。

「ひ、ッ、いぁ、やッ、ァ」

腰は怠い上に、押さえつけられているせいで逃げられない。
俺が出来るせめてもの抵抗といえば、挿入されないようにケツ穴に力を入れることくらいだ。
しかし、そんな俺の必死な抵抗さえも、神田さんを視覚的にも感覚的にも楽しませているだけのようだ。

「ふァ、ぁッ、つ、ッ、ひぁう!」

俺の無駄に有り余る臀部の肉の間に、その勃起したペニスを挟んで、ケツズリをして快楽を得ているのだから。
しかも時折、腰を動かして硬い亀頭を穴にめり込ませてくるものだから、こちらとしては堪ったもんじゃない。

「あァ、ッ、ん、ん、っ、ン」
「…あー、エロい」

先程中に出された精液が潤滑剤となってしまい、腹が立つほどに滑りは良好。
睾丸からケツ穴、そして尾骨にかけて、ヌチュニュチュと卑猥な音を立てて俺の下半身を凌辱する神田さんは、ハァ…と気持ち良さそうに深い息を吐いた。

「もぉ、やだ、ってばぁー…っ、う、ン」

その熱い吐息が背中に掛かり。そんな些細な刺激すらも今の俺には過剰な快楽を与えてきて。
それがもう…情けないやら、恥ずかしいやらで、非常に屈辱的だ。

…だけど。

「ひ、ん、ひんッ、んえ、ッ、ふァ」

あー、もう。
熱くて硬い凶悪ペニスでヌチュヌチュされるの気持ち良過ぎぃ!

「あ、っああ、ッ、ん、ァ」
「嫌じゃねえのか?何感じてるんだよ、っ」
「ひぁ、い、や…、いや、なのにぃ…ッ、ふぅ」

俺が凶悪ペニスで堕落し始めているのは、神田さんも分かっているのだろう。
なんたって俺の(神田さんと比べたら)極小ペニスは嬉しそうに涎という先走り汁を垂れ流しているのだから。それにこんなに喘いでいたら嫌でも指摘したくなるというものだ。

「おらっ、もっと抵抗しねえと入っちまうぞ」
「ッ、だめッ、ひ、ッぁ、いれちゃ…、だめ、だからっ」
「ふは、説得力ねえなぁ、おい」

せめてもの救いといえば、体位が後背位だということくらいだろう。
強過ぎる快楽に、涙と涎を垂らしながらアヘ顔を晒しているところを見られずに済んでいるのだから。
俺の蕩けた悦顔なんて誰が見たいというのだ。誰得だ。俺を含めて大損しかないじゃないか。

「あ、っ…ン、あ、ひっ、ン」

だけど睾丸ゴリゴリされるの、すごく気持ちいー…。
こんなことされて、悦に入らない男の方が絶対に少ないよ。というか、そうであって欲しい。大多数がそうであれば、こんなことをされて感じてしまっている事実に安心できるから。

「ん、ぁ、あ、あっ、ん、ひァ」

しかし俺の意見に賛成してくれるのが大多数だとしても、だから何だというのだ。俺が危機的状況に置かれているのは変わらない。
気を許して、快楽に従って強請ってみろ。待っているのは雄としての堕落。性奴隷。肛門破壊。…最悪だ。

「あ…ひ…ふ、ァ、ッ、ん」
「有希も、もっと奥で欲しいだろ?」
「、っ、ああ…っ、んあァ」
「強請れよ。お前の好きなところまで掻き回してやるぜ」
「……ん、っ…うぅ」

なんというイケボで腰にクる悪魔の囁きなんだ。
この声とテクニックで幾多の男女が落されたのだろう。

「っ、ふ…、」

…だが、残念だったな。
俺は一年前に声豚から卒業したばかりだ。伊達にいい声を聴き慣れちゃいねぇぜ。
今までの股がゆるい奴らと一緒にされてもらっては困る。

「だれ、が…強請る、かよッ、…ん、っ、死ねぇ…犯罪者ッ」
「………」
「ここから、出たら、…絶対豚小屋に入れてやる、からなぁ」

覚悟しろよ、強姦魔。と、後ろを振り返って精一杯睨み付けてやる。
とはいっても、涙を伝わせて、涎を垂らしながら言われても怖くもないかもしれないが。だが、俺は本気だ。世界的有名な芸能人だから何だ。絶対に豚小屋に入れて後悔させてやる。
法的に罰せられやがれ、犯罪者。

「…っ、んァ!?」
「ここまできたら天才だな、お前…」
「な、っ、…ん、やっ、ば、ばかッ、入れ、んなぁっ」

俺を煽る天才だ、と興奮しているのか息を荒げる神田さんは、気持ち悪いを通り越して怖い。

「ひ、っ…ひぃ、ッ!」

そうか。俺は何て馬鹿なんだ。
別に俺が強請ろうが強請らなくても神田さんからしてみればどちらでも良かったのだ。そりゃあ、俺が快楽に堕落して汚い喘ぎ声出してケツ振りながら強請れば、そっちの方が面白くて都合が良かっただろうが、だからといって、強請らなくても神田さんは俺の意思関係なく強引に挿入出来るのだから。

「う、え、ッ、いや…いやっ、やァ」

俺は男なのに、一人の男にセカンドバージンすらも奪われるとは。一生の恥だ。
どう足掻いても絶望。

自分の不運さに喘ぎ泣き叫んでいた時だった。
チャイム音が鳴り響き、玄関の扉が開いた音が聞こえてきたのは。

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