蜜空間

ぬるあまい

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八空間目

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「……なっ、ん……んっ、ん?」

何で俺は実の弟にキスをされているのだろう。しかも俺のことを憎み嫌って散々暴行を働いていた相手にだ。俺とキスをするだなんて帝は死んでも嫌だと思っていたのだが、今は帝の意志により俺に口付けている。
どういう意味なのだろうか。全く分からない。

「や、やめ……っ、ぅ、ん」

セカンドキスの相手が弟だなんて冗談でも笑えない。しかもこのままでは昨夜の神田さんとのキスの感覚を忘れてしまいそうだ。それだけは絶対に嫌で俺は必死に抵抗をした。
好きな人との初めてで最後のキスの味を、こんな形で忘れてしまい上書きされてしまうのなんて絶対に嫌だ。口内に舌を挿入されそうで怖くて、俺は唇に力を込めて一生懸命塞ぎながら、俺は帝の身体を押し返した。

……そうすれば、意外にも帝はすんなりと俺を解放してくれた。

「っ、な、なんでこんなことするんだよ?」
「……それくらい分かるだろ」
「分かんないからきいてるんだろっ」

ただの嫌がらせや冗談にしては悪質過ぎる。訳が分からなくて疑問をぶつけるように怒声を上げれば、帝は眉間に皺を寄せて目を細めながら答えてくれた。

「お前が好きだからだ」
「…………は?」

俺は帝の言葉をすぐには理解できなかった。
おもわず素っ頓狂な反応を返せば、帝は苦々しい表情を浮かべながら舌打ちをする。

「クソうぜえなその反応」
「……っ、え?だって……、……え?」
「好きじゃなきゃキスなんかするかよ」

この状況で帝が言っている『好き』という意味合いは、兄弟愛などではなく、恋愛感情なのだということは頭の悪い俺でも分かる。
しかも、帝の表情や反応を見るからに嘘や冗談とは到底思えない。

「……い、いつから?」
「そんなもん今更分かるかよ」
「……ということは、好きなのに俺のこと苛めてたわけ?」
「…………チッ。仕方ねえだろ、そういう時くらいしか兄貴は俺のことを見てくれねえんだから」

俺に対して随分と歪みきった感情を持っている帝に俺は内心混乱する。
『俺をあんなに痛くて苦しい目に遭わせていたのは、俺のことを好きだったから?』帝の頭脳回路が到底理解できない。普通は好きな人は絶対に傷付けたくないはずだし、ドロドロに甘やかしたいほどに優しくしたくなるはずだ。真逆のことを貫き通してきた帝に俺は首を傾げた。

「……分かんないよ」
「…………悪かったと思ってる」
「……帝」
「お前が俺の前から居なくなってから、すごく後悔した」

もう二度と傷付けないと、言いきる帝。
だけど今更そんなことを言われても「はい、分かりました」と納得できるほど俺は順応力は高くない。散々な仕打ちを受けてきた俺は今でも帝のことを怖いと思っているし、自分の意志とは関係なしに身体は勝手に身構えてしまう。

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