蜜空間

ぬるあまい

文字の大きさ
88 / 152
九空間目

3

しおりを挟む



「ほら。カレー大盛りでいいだろ?」
「うん、ありがとう」
「きとんとサラダも食えよ」
「わ、分かってるって」

同じ両親から産まれたとは到底思えないほど、俺と帝は似ていない。チーズトッピングまでされた大盛りに注がれたカレーライスを受け取ってから、俺は自分のたるんだ腹の贅肉を摘んだ。

「……なにしてんだ?」
「いやぁ、食事制限した方がいいよなーと思って」
「まあ、健康のこと考えたらその方がいいかもな」
「あっ、こら!お前まで触るな!」

帝はそう言うと、俺と同じように贅肉を摘んできた。自分でも太っているということは重々自覚しているけれど、その醜い姿を人に見られたり触られたりするのは、たとえ相手が兄弟であろうともとても恥ずかしいことだ。

「だけど触り心地も抱き心地も最高だぜ?」
「う、嬉しくない!」

……やっぱり明日から食事制限をしてダイエットをしよう。大盛りのカレーライスを食べながら、そう決心した瞬間だった。




------------------------------




退屈で嫌な学校が終わったけれど、このまま家に帰って帝と二人きりになるのは気まずくて、今日は引きこもりの俺にしては珍しくも電車で遠くに出掛けることにした。学生達や社会人の帰宅ラッシュの時間にも関わらず、運が良いことに端の席に座れた俺は、目的もなく電車に揺られながら目を閉じる。

「あっ。神田皇紀珍しく呟いてるじゃん!」
「はぁ、まじっ!?なんて!?」
「今回新事務所で初の写真集を出版するから、近くの会場を貸し切ってサイン会開くって!」
「やっば!絶対行く!」
「いや、だけど流石にチケットの倍率やばいっしょ!」
「死ぬ気で取るんだよ!」
「気合で取れるなら誰も苦労しないしー。まあ、絶対取るけどね!」

……すると、正面に座る女子高生の盛り上がる声が聞こえてきた。

「(……サイン会?ってことは、本人に会えるってことか?)」

宣伝用として神田さんがSNSをしていることは知っていたけれど、テレビとは違ってなんとなく怖くて見る勇気がなかった。だからこうして目の前に座る女子高生の会話を聞いていなければ、俺はサイン会の存在を一早く知ることなどできなかったかもしれない。

「(……神田さんに会えるのかもしれない)」

目の前で神田さんの顔を見れて握手をして触れ合える最後のチャンスなのかもしれない。

「(だけどたとえチケットが取れたとしても、俺が会ってもいいのかな?)」

神田さんに気持ち悪がられるかもしれない。そもそも、もう彼は俺のことを覚えていないかもしれない。
……そう思うと、とても怖い。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

処理中です...