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九空間目
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しおりを挟む「ふ、複雑だ」
……多分だけど、帝は今から俺のことを想像しながら自慰行為に耽るのだろう。俺の部屋に入って来ないように胸を痛める思いで嘘を吐いたけれど、それを想像してしまうと、とんでもなく複雑な心境だ。
しかしなにはともあれ、これで心置きなく当選発表を見ることができる。
「23時まで、あと三分か……」
ネットで当落結果を確認するタイプなので、きっとアクセスが集中してすぐには見れないかもしれない。なぜなら今回は異常なほどに応募者数が多くて倍率もとんでもないらしい。元々人気があったというのに、あの記者会見での誠実な対応と、爽やかイケメンだけで売っていたところを色々な一面を披露しだしてからというもの、様々な層の人たちから人気が出てすごいことになっているようだ。それこそわざわざこのサイン会のためだけに、チケットが取れたら日本に来るという海外ファンも大勢居るほどだ。
老若男女問わずに人気沸騰中の神田皇紀の生サインと握手を楽しみにしている人が何万と居るのだ。
「うわぁ、緊張してきた……!」
それを改めて意識すると怖くなって、俺はデフォルメ化された神田さんのキーホルダーをギュッと強く握る。きっと今更願ったところで当落結果は変わらないだろうけれど、それでも一筋の希望を信じて祈らずにはいられない。
……今まで散々な目に遭ってきた。取り柄も運も全くない俺だけど、今回だけはどうにか運が味方してくれないだろうか。
どうしても、もう一度彼に……神田さんに会いたいんだ。
「…………時間だ」
震えそうになる手でスマホを握り、当落結果が分かるマイページを開く。……しかしやはり想像していた通りアクセスが集中しているのか、エラー表示が出てしまい結果を見ることができない。気を持ち直して何度もページを更新するが駄目なようだ。
「うぅ、これ以上ドキドキさせないでくれ。心臓に悪いよこれ……っ」
落選していると分かったのなら、それはそれで「今まで通り運がなかったんだ仕方がない」と早い段階で諦めが付くだろう。だけどこの結果が分からない状況が続く方が、淡い期待を抱き続けてしまうため心臓に悪い。いっそのこと一思いにしてくれた方が何倍も楽なのだ。
こんな状態のままお風呂に入る余裕も、テレビを観て楽しむ余裕もなく、どうしようもなく不安に駆られた俺はベッドの中で丸くなった。
「神田さんの馬鹿、神田さんの大馬鹿野郎……」
こんなにも人気者になりやがって、すごいじゃないか馬鹿野郎……
とてつもない不安を怒りに変えて、その矛先を神田さんに変える。
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