11 / 24
10
しおりを挟む「早く帰らないと母さんも父さんも心配するだろうね」
「ああ。連絡のしようがねえし、どうにかして帰るしかねえな」
「ナビアプリも使えないしさぁ、スマホが使えないってこんなに不便なんだ……」
あてもなく兄ちゃんと歩いて行くのだが、一向に人に会える気配がない。というよりも見慣れた光景が広がり続けるだけなのだ。……なんで階段から落ちただけで、こんな状態になっているんだろう。
―――これって、なんか…………。
「まるで異世界に飛んできたみたいな状況だよね」
「…………あ?」
「ほら、最近よく流行ってるじゃん。ラノベとかアニメとかでさ。……あー、まあ兄ちゃんはあんまりそういうの見ないから知らないかぁ」
「見たことはねえけど、知識くらいはある。ただ何をふざけたこと言ってるんだと思っただけだ」
「で、でもさぁ、なんか似てるじゃん?」
「……そんなもん有り得ねえよ」
「まーったくもう。夢がないなぁ。想像するくらいは別にいいじゃんか」
もし異世界に迷い込んでしまったというなら、俺は是非とも豪華な魔法を使ってみたい。それで異世界から来た最強の勇者様のようにチヤホヤされてみたい。強いモンスターをバシバシと大量討伐して皆を救ってあげるのだ。…………と、まあ。現実世界では何も充実していないから、これくらいの妄想くらいは許して欲しい。
「兄ちゃんはさぁ、なんでも願いが叶うとしたら何を望む?」
「……なんだよいきなり」
「べつに。ただの興味本位だよ」
「…………俺は、お前が誘拐された日に戻ることだな」
「え?」
「あの日に戻って全てをやり直す」
ただの軽い気持ちで訊ねたことだというのに、思った以上に真剣で重たい内容が返ってきて少し戸惑ってしまった。
「……うーん、別にそんなことで貴重な願い事を使う必要ないじゃん。俺のことじゃなくて、もっと自分のために使いなよ」
「別に何に使おうがそれも俺の勝手だろ」
「……まあ、そうだけどさぁ。その頃のことは俺は何も覚えてないけどさ、俺は今のままで何も不便も感じてないよ。こうして無事に兄ちゃんの傍に居られてるわけだし」
こうして自分が誘拐された時のことを話すのは初めてかもしれない。どうやら夏祭りの途中で攫われたらしいのだが、兄ちゃんがそんな苦しそうな表情をする必要なんてないのに……。
「……えへへ、だけど兄ちゃんが俺のこと大好きだということがよく分かったよ!」
「…………なんとでも言ってろ」
「いつもありがとうね」
「……お礼を言われることはなにもしてねえよ」
それでも俺はいつも気遣ってもらえて感謝してる。普通の兄弟関係とはかけ離れた関係かもしれないけど、兄ちゃんが俺の兄ちゃんで良かった。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
シリアスはほとんどないです
不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる