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「あの、アニさん。この子を元の場所に戻してあげたいと思っているので、よかったらなんですが、明日以降にでも先程の場所に連れて行ってもらうことってできますか?」
「ええ、勿論ですよ。朝食をお食べになった後くらいのお時間で大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!ありがとうございます!」

本当にアニさんは寛大な人だな。
彼が俗にいう、王に仕えるための忠臣という存在なのだろうか。それにしてもあまりにも常識人で優し過ぎる。

「お前も、元に戻れて嬉しいよな?」

こんなにも俺の腕の中で懐いてくれているこの子と明日にお別れなのは少しだけ寂しいけれど、変に情が湧くよりも先にお別れした方が気持ち的にも楽かもしれない。抱いているもう片方の手で撫でてあげれば、子パンダこと、フェンパンはキュゥーと嬉しそうにないてくれた。

「ねえねえ、兄ちゃん。俺奥のベッドで寝てもいい?」
「ああ。好きな方に寝ろ」
「ありがとう。じゃあ、今日だけ一緒に寝ようなフェンパン!」
「……別に止めはしないが、お前の寝相の悪さでそいつを潰さないように気を付けろよ」
「た、たしかに……!」

そのことを懸念するのを忘れていた。……この子のためにもやっぱり一緒に寝るのはやめておいた方がいいかもしれない。

「……そうだね、別々に寝ることにしろよ」
「ああ、その方がいいだろうな。ゆずるの寝相の悪さを思い知らされるのは俺だけで十分だ」
「えっ?……お、俺、そんなに寝相悪いの?初耳なんだけど!?」
「そりゃあ、お前に初めて伝えるからな」
「……い、言ってくれればいいのに」

兄ちゃんがここまで言うんだ。きっと相当酷いに違いない。
今まで何も言われなかったため自分では気づかなかったけれど、もしかしたら兄ちゃんに相当な蹴りを入れているかもしれない。

「ごめんね、今まで痛かったでしょ?」
「お前なんかの弱い蹴りにどうもしねえよ」
「……ちょっ、言い方……!」

慰められているのか、それとも貶されているのかハッキリ分からないが、兄ちゃんの表情から察するに、きっと俺がひ弱だと貶しているのだろう。……まあ、だけど色々な武道を秀でている兄ちゃんにそう言われてしまっても仕方がないと思ってしまう自分が居る。それに兄ちゃんが大丈夫だというのなら、これからも気にせず遠慮なく寝相の悪いまま一緒に寝ようと思う。
よし、これでこの話は解決だ。

「アニさん」
「はい、どうなさいましたか?」
「それで俺たちはこれからどうしていればいいんですか?」

呼び出されたのだから、すぐにでも何かをするべきなのかな?
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