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「畏まりました。まだまだお二人にはお話すべきことがあるのですが、それは後にして、一先ずはこれからお過ごしになるお部屋にご案内させていただきます」
「はい、お願いします!」

荷物らしき荷物など持っていない俺たちは、アニさんの言葉通りに後に続く。そして案内してもらった場所は先程の部屋よりも幾分か広い部屋で、二つの大きいベッドが備えられていた。

「え?こんな広いお部屋を使わせてもらってもいいんですか?」
「勿論で御座います。こちらはお二人のためのお部屋ですので。ですが、まだあまり物が置かれていないので、何かご希望の物がありましたらすぐにお申し付けくださいませ」
「ありがとうございます!」

見るからに高級そうなベッドだ。アニさんが居る手前、行動には移さないが、兄ちゃんと二人きりであれば勢い良く目の前のベッドに飛びついていたと思う。

「………………ところで、ゆずる様」
「なんですか?」
「その子はどうされますか?」
「……へ?」

“その子”と言われて、ハッとした。
…………俺の片腕の中には、先程の子パンダが居たのだ。

「わっ!?や、やばい!俺あのまま連れて来ちゃった……!」

あまりにも軽過ぎて、腕の中に馴染み過ぎて忘れていた。
一緒にこの場に瞬間移動してきてしまったことに、この子に申し訳なく思いながら俺は喉元を指で撫でてあげた。

「もしかしてこの子のお母さんが捜しているかもしれませんよね?元の場所に返してあげた方がいいですかね?」
「この子の種族は、フェンパンといいます。ちなみにその大きさから推測するにもう成体かと思われます」
「え?この小ささでですか?」
「はい。産まれたばかりは人間の手の平に乗る程度の大きさですので」
「手乗りパンダ……!」

そうなのか。子パンダだと思っていたけど、この子ももう大人なのか。
……ということは無理に急いで親元に返す必要もないのかな?いや、でもこの子にはこの子の生活があるだろうし……。

「それにしても珍しいですね。あまり人間には懐かないはずの生き物なのですが」
「そうなんですが?こんなにも可愛くて大人しいのに……」
「きっとゆずる様に人の良さがその子に伝わっているんでしょうね」
「えへへ、そうなんですかね……?ありがとうございます」

物腰が柔らかく人当たりも良さそうなアニさんにそう言ってもらえるのは、すごく嬉しい。
この子も俺が撫でる度に、スリスリと胸元に擦り寄ってくるのがとても可愛くて堪らない。だけどでもやっぱり元の場所に返してあげるのが一番だと思う。

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