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しおりを挟む俺の兄ちゃんが他の誰よりも格好いいということは分かっていた。これは俺がブラコンで兄ちゃんのことが大好きだということだけではなく、きっと他者から見てもその容姿と、服の上からでも分かるほどの肉体美に見惚れると思う。
だけどそれを目を輝かせて面と向かって言えば、『なに言ってんだ、お前』というような目で見られてしまった。
「…………なに言ってんだ、お前」
――――いや、表情だけではなくて、直接言葉で言われてしまった。
「だってそうじゃん!兄ちゃんだけがこの国を救えるのならさ、ちゃちゃっと救ってから元の世界に戻ればいいじゃん。俺なんかが役に立てるか分からないけど、兄ちゃんの力になれるように俺も頑張るよ!」
「ふふっ。ゆずる様は本当に……」
「え?なんですか?」
「いえ、とてもお優しくて可愛らしい人なんですね」
「……そ、そんなことはべつに……」
自分よりも数倍以上中性的で綺麗な男性にそう言われてしまうと反応に困ってしまう。褒めてもらえたのは分かるからそれは嬉しいけど、なんて返答するのか悩んでいると、突如兄ちゃんが俺の姿を背中に隠すように前に立った。
「……に、兄ちゃん?」
「ゆずるを変な目で見んじゃねえよ」
「いや、べつにアニさんはそういう意味で言ったわけじゃないでしょ」
「これは失礼しました。以後発言に気を付けます」
「もう、兄ちゃんの馬鹿!」
いくらなんでも失礼過ぎる。戒めるように兄ちゃんの広い背中を叩いたのだが、俺のへなちょこパンチなんて痛くも痒くもないようで全く相手にもされなかった。
「とりあえず帰れないことは分かったが、俺たちを呼び出したからには衣食住に困るようなことはないと思っていいんだよな?」
「勿論で御座います。貴方様は我が国の王なのですから。ゆずる様も例外ではありません。不自由ない最高級の暮らしをご提供致します」
「え!?いいんですか!?」
「はい、ご要望があれば何でもお申し付けください。できることは全て対応致しますので」
これぞまさにVIP対応ではないだろうか。兄ちゃんはともかく、俺はただ間違って呼ばれただけの存在だというのに随分と恵まれた待遇だ。嬉しいし楽しみでもある反面、若干の申し訳なさも感じてしまう。
「お二人の部屋は別がよろしいですか?ご希望であれば隣同士にご用意することもできますが?」
「いや、一緒にしてくれ」
アニさんの言葉に兄ちゃんは即答していた。だけどそれは俺としても嬉しいものだから一向に構わない。全く見知らぬ土地で一人で居るのは寂しいと思うからすごく助かる。
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