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心象世界
夢戦闘 Ⅱ
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小崎真梅雨は、二人の敵兵が待ち構えているであろう、ビルの裏の道路に出るための角で、息を潜め、呼吸を整える。最後の二人だ。どこからか、他の敵が出てくる心配も無いので周囲を警戒する必要も無い。
これまで撃破してきた敵兵の行動パターンから、二人で行動している場合は、二人で道の両端に広がり、クロスさせるように射撃してくることは分かっていた。どちらかが倒されている間に、もう一方が私を射抜こうという魂胆なのだろうが、“死念”でガードしつつ、ひとりひとり落ち着いて対処すればいいだけの話だ。
最初は、向かって右側の敵を撃破しよう。そう心に決めて、真梅雨は、角から飛び出す。案の定、待ち構えていた敵から、無数の銃弾が浴びせられる。しかし、“死念”がそれをすべて防ぎきり、銃弾は速度を失って、カランカランと地面に落下するだけだ。しかし、悠長にしていては、“死念”の隙間から弾が入り込んでくるということも考えられる。真梅雨は、予定通り、素早く右に視線をやるが、そこに敵の姿は無い。射撃は、左側からだけ行われていた。
「なっ…………!」
不測の事態に一瞬戸惑うが、すぐに、左に重点的に障壁となる“死念”を裂き、とりあえずカバーする。連射していることから、恐らくこちらがライフルだろう。ライフルの敵兵を仕留める前に、まずは、狙撃銃を持った敵を発見することを優先する。死角からの攻撃を一番警戒すべきだからだ。ライフルを持った敵兵が、もし距離を詰めてくるようであれば、そのときは撃破すればいいだけだ。ライフルの敵に“死念”のリソースを裂いていることもあり、普段より“死念”の障壁が薄い部分もある。はやく見つけなくては。足を止めずに、動きながら視線を動かす。止まっているよりは、的になりにくいだろう。
他の建物に移動しているような時間は無かったはず。近くにいるはずだ。しかし、前方には見当たらない。後方を振り向くも、人影は無い。
それなら……。 ――――上か!
真梅雨が上を見上げたちょうどその時、敵兵が二階から、何かを投げつけてくる。
近づいてくるその物体には見覚えがある。
手榴弾だ。よりにもよって。こればかりは、“死念”でも防ぎようがない。落下した瞬間に爆発して、身体ごと消し飛ばされる。ビルを壊すほどのエネルギーは無くとも、人間一人を殺傷するには十分すぎる威力だ。
迫りくる手榴弾を前に、真梅雨は咄嗟に“死念”を手榴弾に向け飛ばす。手榴弾は、真梅雨の立っている場所の二メートルほど前で失速。落下。
二メートルという距離で手榴弾が炸裂すれば、死は確定。
真梅雨は、手に“死念”を集めると、ダイブするように手榴弾を安全レバーを握りながらソフトにキャッチし、地面に倒れ込む衝撃を前転でいなす。加えて、高所から飛び降りるときの要領で、“死念”を使うことで前転時の落下速度も減衰させる。
一瞬の判断で体術と“死念”を駆使して、衝撃ゼロで手榴弾をキャッチして見せた真梅雨は、前転後の、右膝をつき、左足を立て状態の姿勢で、身体をひねる勢いを利用して、手榴弾を右のサイドスローで、ライフルを持った敵兵にぶち込む。
真梅雨の洗練された一連の動作は、メジャーリーグでの内野手の好プレーを彷彿とさせた。しかもハイライトは間違いなしで、それなら、けたたましい爆発音は、ファインプレーに沸き立つ観客のどよめきだろう。
真梅雨は、リロードも遅く連射も不可能な狙撃銃で、必死に真梅雨のことを撃ち続けている敵兵を見据え、微笑む。マネキンレベルのクオリティーで、表情なんて無いはずの敵兵の、雑な顔のパーツが、こころもち強張ったような気がしたが、その次の瞬間には、真梅雨の、二倍シの能力で爆散していた。
これで、合計三十人の敵を撃破したことになる。ミッションは、クリアだろう。最後の最後に油断して、敵の待つ場所に強引に切り込んでいってしまったのと、相手の手榴弾での攻撃が重なってしまった為に、少し慌てたが、被弾も無い。完勝だと言えるだろう。
真梅雨は、自身を守っていた“死念”を解くと、スカートのポケットからネームペンを取りだす。どうせなら、正の字を六個完成させようというわけだ。
真梅雨が、ペンのキャップを開けたその時。
真梅雨が突撃した方とは反対の角から、銃を持った敵兵が、ひょっこりと顔を覗かせた。
真梅雨に向けられた銃口は、マネキンの顔よろしく、あまりにも無表情。
すべての敵を倒したと思い、緊張のほぐれた真梅雨の脳には、何が起きているのか分からなかった。
これは、避けられない。真梅雨は、死を直感した。
“死念”を展開することを脳が指令していれば、おそらく銃弾は防げる。銃弾よりも、脳を流れる電気信号の方が速いからだ。脳が望んだ瞬間に“死念”は発動し、銃弾から真梅雨を守るだろう。
しかし、動物の本能なのか、脳からの指示は、何としても避けろ、というものだった。身体が反応する速度と弾速では、弾速の方が、速い。
真梅雨は、死を決定づけられる。
死ぬと言っても、それは夢の中の話で、実際に死ぬわけではない。
しかし、真梅雨に、そんな常識を考える余裕は無い。
あるのは、ただただ死に対する恐怖のみ。
全身が固く硬直していく感覚がするのと反比例するように、身体中の筋肉は弛緩して、目には涙が溜まり、尿が震える足を伝う。
敵兵が、銃の引き金を引くため、指の関節を徐々に曲げていく動きまでもが、はっきりと見えた気がした。これを走馬灯というのだろうか。銃弾の軌道までも追える。銃弾の回転しているのまで捉えられる。
あと数センチで、銃弾が真梅雨の心臓を穿つ。
これまで撃破してきた敵兵の行動パターンから、二人で行動している場合は、二人で道の両端に広がり、クロスさせるように射撃してくることは分かっていた。どちらかが倒されている間に、もう一方が私を射抜こうという魂胆なのだろうが、“死念”でガードしつつ、ひとりひとり落ち着いて対処すればいいだけの話だ。
最初は、向かって右側の敵を撃破しよう。そう心に決めて、真梅雨は、角から飛び出す。案の定、待ち構えていた敵から、無数の銃弾が浴びせられる。しかし、“死念”がそれをすべて防ぎきり、銃弾は速度を失って、カランカランと地面に落下するだけだ。しかし、悠長にしていては、“死念”の隙間から弾が入り込んでくるということも考えられる。真梅雨は、予定通り、素早く右に視線をやるが、そこに敵の姿は無い。射撃は、左側からだけ行われていた。
「なっ…………!」
不測の事態に一瞬戸惑うが、すぐに、左に重点的に障壁となる“死念”を裂き、とりあえずカバーする。連射していることから、恐らくこちらがライフルだろう。ライフルの敵兵を仕留める前に、まずは、狙撃銃を持った敵を発見することを優先する。死角からの攻撃を一番警戒すべきだからだ。ライフルを持った敵兵が、もし距離を詰めてくるようであれば、そのときは撃破すればいいだけだ。ライフルの敵に“死念”のリソースを裂いていることもあり、普段より“死念”の障壁が薄い部分もある。はやく見つけなくては。足を止めずに、動きながら視線を動かす。止まっているよりは、的になりにくいだろう。
他の建物に移動しているような時間は無かったはず。近くにいるはずだ。しかし、前方には見当たらない。後方を振り向くも、人影は無い。
それなら……。 ――――上か!
真梅雨が上を見上げたちょうどその時、敵兵が二階から、何かを投げつけてくる。
近づいてくるその物体には見覚えがある。
手榴弾だ。よりにもよって。こればかりは、“死念”でも防ぎようがない。落下した瞬間に爆発して、身体ごと消し飛ばされる。ビルを壊すほどのエネルギーは無くとも、人間一人を殺傷するには十分すぎる威力だ。
迫りくる手榴弾を前に、真梅雨は咄嗟に“死念”を手榴弾に向け飛ばす。手榴弾は、真梅雨の立っている場所の二メートルほど前で失速。落下。
二メートルという距離で手榴弾が炸裂すれば、死は確定。
真梅雨は、手に“死念”を集めると、ダイブするように手榴弾を安全レバーを握りながらソフトにキャッチし、地面に倒れ込む衝撃を前転でいなす。加えて、高所から飛び降りるときの要領で、“死念”を使うことで前転時の落下速度も減衰させる。
一瞬の判断で体術と“死念”を駆使して、衝撃ゼロで手榴弾をキャッチして見せた真梅雨は、前転後の、右膝をつき、左足を立て状態の姿勢で、身体をひねる勢いを利用して、手榴弾を右のサイドスローで、ライフルを持った敵兵にぶち込む。
真梅雨の洗練された一連の動作は、メジャーリーグでの内野手の好プレーを彷彿とさせた。しかもハイライトは間違いなしで、それなら、けたたましい爆発音は、ファインプレーに沸き立つ観客のどよめきだろう。
真梅雨は、リロードも遅く連射も不可能な狙撃銃で、必死に真梅雨のことを撃ち続けている敵兵を見据え、微笑む。マネキンレベルのクオリティーで、表情なんて無いはずの敵兵の、雑な顔のパーツが、こころもち強張ったような気がしたが、その次の瞬間には、真梅雨の、二倍シの能力で爆散していた。
これで、合計三十人の敵を撃破したことになる。ミッションは、クリアだろう。最後の最後に油断して、敵の待つ場所に強引に切り込んでいってしまったのと、相手の手榴弾での攻撃が重なってしまった為に、少し慌てたが、被弾も無い。完勝だと言えるだろう。
真梅雨は、自身を守っていた“死念”を解くと、スカートのポケットからネームペンを取りだす。どうせなら、正の字を六個完成させようというわけだ。
真梅雨が、ペンのキャップを開けたその時。
真梅雨が突撃した方とは反対の角から、銃を持った敵兵が、ひょっこりと顔を覗かせた。
真梅雨に向けられた銃口は、マネキンの顔よろしく、あまりにも無表情。
すべての敵を倒したと思い、緊張のほぐれた真梅雨の脳には、何が起きているのか分からなかった。
これは、避けられない。真梅雨は、死を直感した。
“死念”を展開することを脳が指令していれば、おそらく銃弾は防げる。銃弾よりも、脳を流れる電気信号の方が速いからだ。脳が望んだ瞬間に“死念”は発動し、銃弾から真梅雨を守るだろう。
しかし、動物の本能なのか、脳からの指示は、何としても避けろ、というものだった。身体が反応する速度と弾速では、弾速の方が、速い。
真梅雨は、死を決定づけられる。
死ぬと言っても、それは夢の中の話で、実際に死ぬわけではない。
しかし、真梅雨に、そんな常識を考える余裕は無い。
あるのは、ただただ死に対する恐怖のみ。
全身が固く硬直していく感覚がするのと反比例するように、身体中の筋肉は弛緩して、目には涙が溜まり、尿が震える足を伝う。
敵兵が、銃の引き金を引くため、指の関節を徐々に曲げていく動きまでもが、はっきりと見えた気がした。これを走馬灯というのだろうか。銃弾の軌道までも追える。銃弾の回転しているのまで捉えられる。
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