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4、魔法薬を使う
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メイドがニナリアを広い寝室に案内した。大きな天蓋付きベッドが一つ置いてある。コバルトブルーの無地の壁紙に、クローゼットとソファが一式置いてあった。
「こちらが、主寝室です。ご主人様がいる日はこちらでお休みください。奥様の部屋は、隣にあります。そちらにもベッドはございます」
「はい」
内ドアから、隣の部屋に案内される。濃いピンク地に白のストライプと花柄の壁紙に、彫りがきれいな家具が置いてある。先ほどの部屋より小さいかわいらしい部屋だった。
(わぁ、なんて素敵なの)
クローゼットの中には普段着が三着だけかけてあった。ニナリアはその中の一着に着替えると、自室のほうのベッドで少し仮眠を取った。昼食を一人で済ませると、城を案内してもらう。夜はアレンと一緒に食事をした。
「どうだった。城は?」
「とっても素敵です」
「そうか。今日は先に寝てくれ」
「……はい」(なんだか、ほっとしたような、そうでないような)
アレンは城に帰ってから忙しいようだ。ニナリアとほとんど顔を合わせなかった。
夜は広い部屋で一人で眠った。
朝起きると、アレンは魔物討伐に出かけて城にはもういなかった。
(あれ、こういう生活なのかな?)
朝食を一人で食べているとセルマンが言った。
「奥様は旅でお疲れでしょうから、今日もお休みされるようにとのことでした」
「はい」(というか、そもそもやることがあるのかな?)
これからどうやって過ごすのか、ニナリアには見当もつかなかった。
(城の仕事をしたら、ここを出てからも役に立つかもしれない)
「セルマンさん。ここで私にできる仕事はありますか?」
「どうぞ呼び捨てでお呼びください。財務管理などの奥様のお仕事はありますよ。ぜひやっていただければ、私も助かります」
「では、今日の午後から教えてください」
「分かりました」
ちょうといいので、午前中は魔法薬を使って背中の傷を治すことにしていた。ニナリアはメイドのメグを呼び、小瓶に入ったピンクの液体を背中に塗ってもらうようにお願いした。メグはダークブラウンの髪に二つ分けの落ち着いた感じのメイドで、ニナリア付きのメイドの一人だ。メグは渡された小瓶を不思議そうに眺めていた。
「これを塗るんですか?」
「そうよ、背中の傷にまんべんなく塗ってね」
ニナリアはそう言うと、上半身だけ服を脱いで背中を見せた。背中の傷を見たメグは、思わず声が出て顔を引きつらせた。
「ひっ」(なんてひどい傷!)
「それを塗れば治るから、大丈夫よ」
小瓶のふたを開けると中からバラの香りがした。
(バラの香りがするわ。いい香り)
メグは言われた通り、ニナリアの背中に薬を塗った。
「ありがとう。これで、夜になれば、完全に消えるわ!」(これでよし)
「魔法薬はすごいですね……」
メグは半信半疑だ。
午後からはセルマンに仕事を教えてもらった。領地の財政管理に、備品と設備の管理、やることは山ほどあった。──ニナリアは仕事を聞いて少し後悔した。
「奥様は、帳簿を付けたことがおありで?」
「はい、父が薬草を売っていたので、付け方を教わりました」
「なんと。──お父上は優秀な方だったそうですね!」
セルマンは感心した。ニナリアは父を褒められてうれしかった。父は侯爵家でも祖父の仕事を手伝っていた。メイドたちの話では、叔父さんは何もしてないらしい。人にやらせても、侯爵家は叔父さんの代で終わりだと思う。
仕事の合間にセルマンが仕立て屋の話をした。
「明日は、奥様のドレスを作るために仕立て屋がやってきます」
「はい……?」
「今度王宮で開かれる舞踏会に招待されていて、そこでご主人様と奥様のお披露目があるのです」
(! そうか、舞踏会があるなら、バートン家の人たちとまた会うのか。——傷を治してしまった……そうだ!)
ニナリアは気が重かったが、あの家にお返しをすることを思いついた。
それから、アレンはなんと5日も帰ってこなかった。
(これなら、ここを抜け出して馬車を借りれば故郷に帰れたな……。ここからは5、6日かかると思うけど)
今回の討伐は何日かかるか分からないとのことだった。食糧が足りなくなれば補給係が取りに来る。討伐はいつも1日だが、結婚式で首都に行っていたのと、今度は舞踏会に参加するので、いつもより多く魔獣を狩ることになったそうだ。
おかげで、ニナリアは城や仕事の概要を把握することができた。トホホな気分だった。
5日目の昼には、討伐隊が返ってくる知らせが先に来た。夕方前に到着したので、ニナリアと使用人たちは玄関外で出迎えをした。アレンは喜んで馬から降りると、鎧姿のままニナリアを抱き上げた。ニナリアは驚いた。こんなに喜んでもらえるとは思わなかった。
「会いたかった」
アレンはそう言うと、ニナリアを自分の腕に座らせて担ぎ上げたまま歩いた。小さい子供みたいで少し恥ずかしかったが、見晴らしは良かった。その姿に、若いメイドたちはキャーと小さい歓声を上げ、隊の者たちも頬を赤くして微笑ましく見守った。
夕食は一緒に取り、ずっと何をしていたのか聞かれた。
「セルマンに仕事を教わっていました」
「奥様は、ご実家で帳簿もお付けになっていたそうです。物覚えが早くお父様譲りでございましょう」
「ほう。それは助かるな」
セルマンはニナリアを褒め、ニナリアはまた父を褒められてうれしかった。
夜は、この城で初めて一緒に過ごす。背中の傷は、夜の風呂の時間にはきれいに治り、それを見てメグは驚いていた。ニナリアはそのことを先に言っておく。
「傷を治しました」
「どれ」
アレンはあっという間に、ニナリアの寝間着と下着を脱がせて背中を見た。アレンは感心した。
「本当だ。見事なものだな。今日は先にしても良いか?」
「……はい」
「討伐中は、ずっとお前のことばかり考えていた」
(それは危険なのでは?)
アレンはニナリアの体にキスをする。
「俺のかわいいニア」
(ニアって言った。みんなはニナって言うのに、なんでだろう)
「お前のかわいい声で、俺の名前を呼んでくれ」
「……アレン」
熱くつながって、声が小さくなる。アレンは満足そうに微笑んだ。
「こちらが、主寝室です。ご主人様がいる日はこちらでお休みください。奥様の部屋は、隣にあります。そちらにもベッドはございます」
「はい」
内ドアから、隣の部屋に案内される。濃いピンク地に白のストライプと花柄の壁紙に、彫りがきれいな家具が置いてある。先ほどの部屋より小さいかわいらしい部屋だった。
(わぁ、なんて素敵なの)
クローゼットの中には普段着が三着だけかけてあった。ニナリアはその中の一着に着替えると、自室のほうのベッドで少し仮眠を取った。昼食を一人で済ませると、城を案内してもらう。夜はアレンと一緒に食事をした。
「どうだった。城は?」
「とっても素敵です」
「そうか。今日は先に寝てくれ」
「……はい」(なんだか、ほっとしたような、そうでないような)
アレンは城に帰ってから忙しいようだ。ニナリアとほとんど顔を合わせなかった。
夜は広い部屋で一人で眠った。
朝起きると、アレンは魔物討伐に出かけて城にはもういなかった。
(あれ、こういう生活なのかな?)
朝食を一人で食べているとセルマンが言った。
「奥様は旅でお疲れでしょうから、今日もお休みされるようにとのことでした」
「はい」(というか、そもそもやることがあるのかな?)
これからどうやって過ごすのか、ニナリアには見当もつかなかった。
(城の仕事をしたら、ここを出てからも役に立つかもしれない)
「セルマンさん。ここで私にできる仕事はありますか?」
「どうぞ呼び捨てでお呼びください。財務管理などの奥様のお仕事はありますよ。ぜひやっていただければ、私も助かります」
「では、今日の午後から教えてください」
「分かりました」
ちょうといいので、午前中は魔法薬を使って背中の傷を治すことにしていた。ニナリアはメイドのメグを呼び、小瓶に入ったピンクの液体を背中に塗ってもらうようにお願いした。メグはダークブラウンの髪に二つ分けの落ち着いた感じのメイドで、ニナリア付きのメイドの一人だ。メグは渡された小瓶を不思議そうに眺めていた。
「これを塗るんですか?」
「そうよ、背中の傷にまんべんなく塗ってね」
ニナリアはそう言うと、上半身だけ服を脱いで背中を見せた。背中の傷を見たメグは、思わず声が出て顔を引きつらせた。
「ひっ」(なんてひどい傷!)
「それを塗れば治るから、大丈夫よ」
小瓶のふたを開けると中からバラの香りがした。
(バラの香りがするわ。いい香り)
メグは言われた通り、ニナリアの背中に薬を塗った。
「ありがとう。これで、夜になれば、完全に消えるわ!」(これでよし)
「魔法薬はすごいですね……」
メグは半信半疑だ。
午後からはセルマンに仕事を教えてもらった。領地の財政管理に、備品と設備の管理、やることは山ほどあった。──ニナリアは仕事を聞いて少し後悔した。
「奥様は、帳簿を付けたことがおありで?」
「はい、父が薬草を売っていたので、付け方を教わりました」
「なんと。──お父上は優秀な方だったそうですね!」
セルマンは感心した。ニナリアは父を褒められてうれしかった。父は侯爵家でも祖父の仕事を手伝っていた。メイドたちの話では、叔父さんは何もしてないらしい。人にやらせても、侯爵家は叔父さんの代で終わりだと思う。
仕事の合間にセルマンが仕立て屋の話をした。
「明日は、奥様のドレスを作るために仕立て屋がやってきます」
「はい……?」
「今度王宮で開かれる舞踏会に招待されていて、そこでご主人様と奥様のお披露目があるのです」
(! そうか、舞踏会があるなら、バートン家の人たちとまた会うのか。——傷を治してしまった……そうだ!)
ニナリアは気が重かったが、あの家にお返しをすることを思いついた。
それから、アレンはなんと5日も帰ってこなかった。
(これなら、ここを抜け出して馬車を借りれば故郷に帰れたな……。ここからは5、6日かかると思うけど)
今回の討伐は何日かかるか分からないとのことだった。食糧が足りなくなれば補給係が取りに来る。討伐はいつも1日だが、結婚式で首都に行っていたのと、今度は舞踏会に参加するので、いつもより多く魔獣を狩ることになったそうだ。
おかげで、ニナリアは城や仕事の概要を把握することができた。トホホな気分だった。
5日目の昼には、討伐隊が返ってくる知らせが先に来た。夕方前に到着したので、ニナリアと使用人たちは玄関外で出迎えをした。アレンは喜んで馬から降りると、鎧姿のままニナリアを抱き上げた。ニナリアは驚いた。こんなに喜んでもらえるとは思わなかった。
「会いたかった」
アレンはそう言うと、ニナリアを自分の腕に座らせて担ぎ上げたまま歩いた。小さい子供みたいで少し恥ずかしかったが、見晴らしは良かった。その姿に、若いメイドたちはキャーと小さい歓声を上げ、隊の者たちも頬を赤くして微笑ましく見守った。
夕食は一緒に取り、ずっと何をしていたのか聞かれた。
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「奥様は、ご実家で帳簿もお付けになっていたそうです。物覚えが早くお父様譲りでございましょう」
「ほう。それは助かるな」
セルマンはニナリアを褒め、ニナリアはまた父を褒められてうれしかった。
夜は、この城で初めて一緒に過ごす。背中の傷は、夜の風呂の時間にはきれいに治り、それを見てメグは驚いていた。ニナリアはそのことを先に言っておく。
「傷を治しました」
「どれ」
アレンはあっという間に、ニナリアの寝間着と下着を脱がせて背中を見た。アレンは感心した。
「本当だ。見事なものだな。今日は先にしても良いか?」
「……はい」
「討伐中は、ずっとお前のことばかり考えていた」
(それは危険なのでは?)
アレンはニナリアの体にキスをする。
「俺のかわいいニア」
(ニアって言った。みんなはニナって言うのに、なんでだろう)
「お前のかわいい声で、俺の名前を呼んでくれ」
「……アレン」
熱くつながって、声が小さくなる。アレンは満足そうに微笑んだ。
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