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7、シェイラとの再会
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舞踏会当日。馬車から降りるとニナリアは王宮を見上げた。侯爵邸からは王宮は見えなかったので、ニナリアは王宮を初めて見る。その荘厳さにとても緊張した。一方でアレンは平然としている。アレンは王子の騎士隊にいたので、王宮には慣れていた。
(ここ数日で、豪華なものを目にしておいて良かった……)
ニナリアのダンスの腕は、なんとか踊れるようになったぐらいだった。あの後、講師の先生が来て、かろうじて合格点をもう。先生からは貴族令嬢のマナーも教わった。そして、ヒールで歩く極意それは、
(ゆっくり歩くこと)
ゆっくり動けば上品に見えるのだ。でもいざというときは、俊敏に動かないと危ないのだが、ニナリアはまだまだの状態だ。貴族令嬢は普段走ったりはしないが、きっとヒールでも早く走れるに違いない。
二人の衣装はお揃いの生地で、クリーム色をベースに水色のアクセントが入っている。明るく清楚ないで立ちだ。ニナリアのドレスは襟ぐりが前後少し開いているので、その上に薄い紫のストールを巻いて背中を見せないように隠していた。ストールは前で山吹色の宝石の付いたブローチで留めていた。
二人が腕を組んで入場すると、すぐ噂の的になった。特に中年女性からは棘のある言葉が出る。
「まあ、平民同士のカップルね」
「あれが、クリストファー様の娘なのね。フン、母親に似たようね」
「若いのにもう結婚して。さすが平民は早いわね」
ニナリアの出自は、結婚後すぐに社交界に出回っていた。父のクリストファーは女性たちの憧れの的だった。それを平民の女が連れ去ったのだから、父と同じ世代の女性たちにとって、ニナリアの母は反感の的でしかない。ニナリアは貴族にいい印象がないので、特に気にしていなかった。それよりも、普通に歩くことのほうがよほど大事だった。そこへ、開いた扇子を胸元に当てたシェイラが現れた。
「久しぶりね」
二人の邂逅に、周囲も固唾をのんで注目した。
「お久しぶりです。シェイラ嬢」
そう言うとニナリアは、アレンから手を離し膝を曲げて貴族の礼をとった。アレンも併せてお辞儀をする。シェイラはアレンを見て、一瞬ドキッとし頬が赤くなる。シェイラは、アレンを見るのが初めてだった。
(平民とはいえ、外見はなかなかましなようね)
シェイラは気を取り直すと、扇子で口元を隠してニナリアに近づくと小声で話しかけた。
「お元気そうね。貴族の格好が様になっているわ」(ニナリアが貴族のように振る舞うのを見ると、本当に腹が立つわ。でも、あなたの平民の旦那様は、ドレスには気を使ってくれなかったようね)
「恐れ入ります。これで失礼します」
ニナリアは無表情で答えると、会釈した。それを見てアレンは先に歩きはじめた。ニナリアも後を付いて行く。シェイラはニヤッと笑うと、扇子を閉じて、ニナリアのストールの端を引っかけた。
「あら」
「きゃ」
ニナリアは後ろに引っ張られて、小さく声を上げ尻もちをついた。ストールはブローチの部分で少し裂けてしまった。シェイラは、持ち上がったストールからさっと扇子を引き出して、驚いた。
(傷がない⁉ 確か首の下まではあったはずよ……)
ストールは緩く背中に垂れ下がった。事の顛末に、周囲はざわついた。
「なんてこと。シェイラ嬢があんな無作法なことをするなんて」
「大人しいと思っていましたが、あれが本性なんでしょう。侯爵の孫ですものね!」
「侯爵家では、子爵夫人を隠して使用人として扱っていたそうよ」
「まあ! クリストファー様の娘になんてことを!」
祖父は足を悪くしてから舞踏会には出席していない。バートン侯爵家に反感を持つ者たちがここぞとばかりに、シェイラを非難した。先ほど、ニナリアを悪くいった者たちも反対のことを口にする。ニナリアは心の中でニヤリとした。
(うまく引っかかったわね)
ニナリアは、祖父が他家を陥れることでのし上がってきたことを、母から聞いて知っていた。使用人の間でも周知の事実だ。味方も多いが敵も多い。叔父とシェイラは祖父よりも、輪をかけて愚かだ。祖父がいなくなれば侯爵家は維持できないと、みんなが思っている。だからこそ、シェイラを今のうちに、王子妃にしたいのだろう。
シェイラは、ニナリアに暴力をふるうことはなかったので、仕返しはこのぐらいでいいだろうと、ニナリアはとりあえず満足した。
そのころ叔父はこの様子を見て、素早く廊下に逃げ込んでいた。口元に手を近づけ、汗をかきながら事の成り行きを見守っていた。その妻もどこかに隠れて見ていることだろう。
(なんてことをしたんだ、シェイラ!)
アレンは自分のマントを取って、さっとニナリアに掛けた。それを見て、夫人たちがほうっとため息をつく。アレンはシェイラに冷たい視線を向ける。
「これはどういうことです。我が妻に無礼を働くとは、許しがたい」
「……それは、たまたま、引っかかってしまって……」
シェイラは大勢の前では強く振舞うことができず、おどおどして答えるしかなかった。そこへ壇上から、第一王子のヒースの声がした。
「私の部下の妻であり、年下の親族に対する振る舞いとは思えない。シェイラ嬢、君には失望した」
静まり返った会場に王子の声が響き渡り、全員が周知することとなった。シェイラは青ざめ、言葉もなく下を向いて震えた。
王子は手をポンポンと2回打ち、注意を前に向けさせた。その合図とともに、壇上に近い入り口から、青い髪と褐色の肌のエキゾチックな美しい女性が現れた。
「皆に紹介する。西の大陸にあるメリフィ王国のアーシャ・ジブラルハ王女だ。彼女とは留学先で知り合った。彼女は私の婚約者だ」
突然の発表に会場中が驚いた。シェイラと叔父、人ごみに紛れて扇子で顔を隠していた叔母は、驚愕の表情を浮かべた。
(ここ数日で、豪華なものを目にしておいて良かった……)
ニナリアのダンスの腕は、なんとか踊れるようになったぐらいだった。あの後、講師の先生が来て、かろうじて合格点をもう。先生からは貴族令嬢のマナーも教わった。そして、ヒールで歩く極意それは、
(ゆっくり歩くこと)
ゆっくり動けば上品に見えるのだ。でもいざというときは、俊敏に動かないと危ないのだが、ニナリアはまだまだの状態だ。貴族令嬢は普段走ったりはしないが、きっとヒールでも早く走れるに違いない。
二人の衣装はお揃いの生地で、クリーム色をベースに水色のアクセントが入っている。明るく清楚ないで立ちだ。ニナリアのドレスは襟ぐりが前後少し開いているので、その上に薄い紫のストールを巻いて背中を見せないように隠していた。ストールは前で山吹色の宝石の付いたブローチで留めていた。
二人が腕を組んで入場すると、すぐ噂の的になった。特に中年女性からは棘のある言葉が出る。
「まあ、平民同士のカップルね」
「あれが、クリストファー様の娘なのね。フン、母親に似たようね」
「若いのにもう結婚して。さすが平民は早いわね」
ニナリアの出自は、結婚後すぐに社交界に出回っていた。父のクリストファーは女性たちの憧れの的だった。それを平民の女が連れ去ったのだから、父と同じ世代の女性たちにとって、ニナリアの母は反感の的でしかない。ニナリアは貴族にいい印象がないので、特に気にしていなかった。それよりも、普通に歩くことのほうがよほど大事だった。そこへ、開いた扇子を胸元に当てたシェイラが現れた。
「久しぶりね」
二人の邂逅に、周囲も固唾をのんで注目した。
「お久しぶりです。シェイラ嬢」
そう言うとニナリアは、アレンから手を離し膝を曲げて貴族の礼をとった。アレンも併せてお辞儀をする。シェイラはアレンを見て、一瞬ドキッとし頬が赤くなる。シェイラは、アレンを見るのが初めてだった。
(平民とはいえ、外見はなかなかましなようね)
シェイラは気を取り直すと、扇子で口元を隠してニナリアに近づくと小声で話しかけた。
「お元気そうね。貴族の格好が様になっているわ」(ニナリアが貴族のように振る舞うのを見ると、本当に腹が立つわ。でも、あなたの平民の旦那様は、ドレスには気を使ってくれなかったようね)
「恐れ入ります。これで失礼します」
ニナリアは無表情で答えると、会釈した。それを見てアレンは先に歩きはじめた。ニナリアも後を付いて行く。シェイラはニヤッと笑うと、扇子を閉じて、ニナリアのストールの端を引っかけた。
「あら」
「きゃ」
ニナリアは後ろに引っ張られて、小さく声を上げ尻もちをついた。ストールはブローチの部分で少し裂けてしまった。シェイラは、持ち上がったストールからさっと扇子を引き出して、驚いた。
(傷がない⁉ 確か首の下まではあったはずよ……)
ストールは緩く背中に垂れ下がった。事の顛末に、周囲はざわついた。
「なんてこと。シェイラ嬢があんな無作法なことをするなんて」
「大人しいと思っていましたが、あれが本性なんでしょう。侯爵の孫ですものね!」
「侯爵家では、子爵夫人を隠して使用人として扱っていたそうよ」
「まあ! クリストファー様の娘になんてことを!」
祖父は足を悪くしてから舞踏会には出席していない。バートン侯爵家に反感を持つ者たちがここぞとばかりに、シェイラを非難した。先ほど、ニナリアを悪くいった者たちも反対のことを口にする。ニナリアは心の中でニヤリとした。
(うまく引っかかったわね)
ニナリアは、祖父が他家を陥れることでのし上がってきたことを、母から聞いて知っていた。使用人の間でも周知の事実だ。味方も多いが敵も多い。叔父とシェイラは祖父よりも、輪をかけて愚かだ。祖父がいなくなれば侯爵家は維持できないと、みんなが思っている。だからこそ、シェイラを今のうちに、王子妃にしたいのだろう。
シェイラは、ニナリアに暴力をふるうことはなかったので、仕返しはこのぐらいでいいだろうと、ニナリアはとりあえず満足した。
そのころ叔父はこの様子を見て、素早く廊下に逃げ込んでいた。口元に手を近づけ、汗をかきながら事の成り行きを見守っていた。その妻もどこかに隠れて見ていることだろう。
(なんてことをしたんだ、シェイラ!)
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「これはどういうことです。我が妻に無礼を働くとは、許しがたい」
「……それは、たまたま、引っかかってしまって……」
シェイラは大勢の前では強く振舞うことができず、おどおどして答えるしかなかった。そこへ壇上から、第一王子のヒースの声がした。
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