ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~

実川えむ

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第8章

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 翌日、朝から腹いっぱい食べた俺は、かなり元気だ。
 昨夜の不審者は戻ってこなかったようで、俺は朝までぐっすり寝ることができた。
 へリウスに抱きかかえられたまま、冒険者ギルドに行くと、そこそこの人数が掲示されている場所に集まっている。そうは言ってもCランク程度までのものに人が集まっている状態で、それ以上のランクの前には、ちらほらしかいない。
 俺たちは掲示板には行かずに、受付の方へと向かう。
 へリウスの姿を見て、カウンターの中にいた若い女の人がすぐに動いた。奥の部屋から、昨日会ったおじさんが現れる。

「すまんね」

 本当にすまんと思ってるのか微妙な感じの、笑みを浮かべている。

「……悪いが、やっても今日一日だ」

 へリウスもそれを察したのか、ブスッとした顔でそう答える。

「で、できれば、三日くらいいられないか」
「……宿屋で、部屋に賊が入ろうとしたらしいんでね。そんな町に長居する気はない」
「な、なんだって」

 おじさんはサッと顔色を悪くする。どっちの意味で悪くしたんだろう。
 賊のこと?
 早くいなくなること?
 フードの中から、ジロリと見下ろす俺。 
 
「とりあえず、優先してやるのはどれだ」
「あ、え、えと」

 へリウスの威圧が半端ないのか、おじさんがビクビクしだしている。
 ああ、慌てるから書類が床に散らばるし。

「……なんだ、ボブ、騒々しい」

 奥の部屋から、今度は随分とイケボなおっさんが現れた。スキンヘッドがなかなかにいいテカリ具合だけど。

「ギ、ギルマスッ」

 明らかにホッとしている受付のおじさん。慌てて、ギルマスと呼ばれた男のところによって、何やらコソコソ話してる。チラッと俺に目を向けるが、これといって感情は見られない。

「なるほど……あんた、名前は」
「……先に名乗るのが礼儀ってもんじゃないか」
「お、おいっ」
「ああ、悪い、俺はここでギルマスやってるアランってもんだ」
「……へリウス」
「へリウスな、んで、仕事は今日一日だけか」
「ああ」
「わかった」
「ギルマスッ」
「仕方ねぇだろ。やってもらえるだけありがたいんだ」

 おじさんはまだ納得いかないようだけど、ギルマスの言葉に引き下がる。

「んで、この坊主はうちで預かればいいんだな」
「ああ。宿は物騒なんでな」

 へリウスはそう言うと、俺を床に下した。すると、若い女の子がカウンターの中から出てきて、俺を捕まえようとするので、すぐにへリウスの後ろに逃げ込む。そんな残念そうな顔をされても、嫌なもんは嫌だ。
 結局、ギルドの受付カウンターの中のスペースに、小さな、本当に小さなテントをはって、俺はそこにいることになった。一応、へリウスの荷物も預かってもらうっていう体で。
 昨日、へリウスが買いに行ったのは、この小型のテントだったらしい。これにも一応、結界機能がついているとかで、俺の避難場所でもあるらしい。

「何も、そこまでしなくても……」

 そうブツブツ言ったのは、受付のおじさん。

「昨夜のこともあるんでな」

 そうへリウスが言えば、何も言えないようだ。

「とりあえず、今日できるものだけな……ハル、大人しくしてろよ」
「うん」

 ぐりぐりっと頭を撫でられた俺。ニヤリと笑って返事をする。
 へリウスなら大丈夫だろう。
 俺はそう確信しながら、ギルドを出ていくへリウスの背中を見送った。
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