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エピローグ
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へリウスの母国、獣人の国、ウルトガ王国に移住し、彼の養子になって、5年が経った。
俺も10歳になり、冒険者ギルドに登録できる年齢になった。
へリウスの正式な名前が、『へリウス・フォン・ゴードン』というのを知ったのは、養子縁組の書類を見た時。
俺の名前は『ハル・ゴードン』という名前に変わった。『フォン』がついていないのは、俺がゴードン家の血筋ではないというのと、継承権のない『養い子』という立場のためなのだとか。
養子になったからといって、さすがにへリウスを『父上』だの『お父様』だのと呼ぶ気にはならず、いまだに『へリウス』呼びだ。もう慣れたのか、何も言わなくなったが、最初の頃のへリウスは、相当凹みまくっていた。
「へリウス、行ってくる!」
「おう、気をつけてな!」
屋敷のエントランスで、狼獣人の赤ん坊を抱えたへリウス。腕の中で眠っているのは、産まれて3カ月の長女のクリステルだ。
唯一の女の子にデロデロのへリウスに見送られ、屋敷を飛び出していく。
「ハル、忘れ物は? 大丈夫っ?」
屋敷の2階、大きな窓から身を乗りだして叫ぶのは、へリウスの奥さん、俺の義母にあたるメイリン義母さん。
三人目を産んで間もないのに、すでに領主としての仕事をこなしている、働くお母さんだ。
後から知ったのだけれど、へリウスは入り婿で、メイリン義母さんの方が子爵という爵位を持っている人だったのにはビックリだった。
そりゃぁ、領主のお仕事をするわけだ。
「大丈夫!」
背中に背負ったリュックを見せて、親指を立ててみせる。メイリン義母さんは、輝くような笑顔で同じように指を立てて返事を返してきた。
メイリン義母さんは、人族でへリウスの番。その上、元日本人っていう前世をもっているという、情報盛りだくさんな女性だ。そのせいもあってなのか、この世界の貴族のご婦人らしからぬ、サバサバした女性でもある。
あのへリウスが粘って粘って、番ってもらったらしい。
今日は、魔の森の外縁で常設の薬草採取の依頼に出かけることになっていた。
へリウスの息子で、俺の義兄、長男のサイラスが待ちきれなさそうな顔で、屋敷の門の前で足踏みしている。
「ハル、急ぐぞ」
今日は学校が休みで家に戻ってきていたサイラスは、ヤル気満々だ。
サイラスは俺より3歳ほど年上で、でも、獣人の方が身体が大きく育つらしく、もっと年上に見える。
思い切り走り出すサイラスの後を、必死に追いかける俺。
獣人のパワーは半端ないんだけど、俺も精霊魔法で風の精霊に助けてもらいながら、なんとかついていく。
「ニ、ニコラスはっ?」
「はっ、あいつは婚約者様とお約束だとさ」
「あー、大変だーねー」
俺の1歳上の次男のニコラスも、行きたがってたのを思い出す。
「お、来た来た」
「待ってたわよ」
街の出入口の前で、二人の人族が俺たちを笑顔で迎えてくれた。
彼らは、ミーシャさんのところで出会った、アルフレッドとシャーリーだ。彼らは、ミーシャさんの義兄夫婦の所の子で、ウルトガ王国に留学に来ているのだ。
すでにアルフレッドは自分の国でCランクにまでなっていて、俺たちのリーダー的存在だ。なんでも、アルフレッドの家は、全員が冒険者ギルドに登録している家だそうだ。それは妹のシャーリーも例外ではない。
今日は俺の採取依頼の護衛ってことで、3人がついてきているけど……実際は、それを口実に、周辺で魔物の討伐をするつもりらしい。
「さぁ、さっさと討伐してこようぜ!」
「フフフ、サイラス様ってば、ヤル気ですわね」
……何気に仲良しのサイラスとシャーリーを先頭に、俺とアルフレッドは、後をついていく。
「ハルは無理はするなよ」
5年経っても、それほど成長しない俺は、小柄なままだ。
それがエルフ仕様っていうのなら仕方がないんだけれど、どうもそうとも言えないらしい。
「うん、アルフレッドも……サイラスたちに気を付けてね」
「ああ」
妹たちの様子に苦笑いするアルフレッド。俺もつられて笑みを浮かべた。
あれから、母方の一族からの接触はなかったけれど、たまにやってくるアーロン曰く、未だにあちらの大陸の冒険者ギルドには、俺の手配書は貼り出されたままらしい。所謂、塩漬け案件というヤツになっているそうだ。
そうは言っても、エルフ。時間の感覚が他の種族とは異なることもあって、5年程度じゃ、大した事ではないらしい。
いつか、こっちの大陸にまで手を伸ばしてくるんじゃないか、そんな気がしてならない。
――今の俺は、まだまだ子供だ。
でも、いつまでも逃げていられない、そんな気がする。
だから、強くなって、自分で身を守れるようにならないといけない。
『ハル、探している薬草はこれじゃないか?』
『ほら、あの辺に密集してるわよ』
『あっちにもあるぞ』
――今の俺は、子供だけれど、一人じゃない。
あれから、風以外の精霊王様たちに加護を頂き、火・水・土と、それぞれの精霊が俺の周りについてまわるようになった。
ちびっ子精霊の彼ら曰く、俺の護衛なのだとか。
「ありがとう!」
俺は張り切って、薬草の前にしゃがみこむ。
少し離れたところでアルフレッドが、周囲を警戒しているのを確認して、こっそり精霊魔法で、自分の周りだけという狭い範囲の結界を張る。
――今の俺は、子供だけれど、もっともっと強くなって、自分のことは自分で守れるようになってやる。
少し離れたところで、サイラスたちの歓声が聞こえた。
何か魔物を狩ったのだろう。
「俺も早く冒険者ランク上げたいな」
『大丈夫さ。ハルなら、あっという間さ』
『そうよ! でも、危ないことはしないでね』
『俺たちがいるから、大丈夫さ。焦らず、行こうぜ!』
「ああ、そうだね」
俺は、ニヤリと子供らしからぬ悪い笑みを浮かべてみせると、採った薬草をまとめて、サイラスたちの方へと向かうのだった。
(了)
俺も10歳になり、冒険者ギルドに登録できる年齢になった。
へリウスの正式な名前が、『へリウス・フォン・ゴードン』というのを知ったのは、養子縁組の書類を見た時。
俺の名前は『ハル・ゴードン』という名前に変わった。『フォン』がついていないのは、俺がゴードン家の血筋ではないというのと、継承権のない『養い子』という立場のためなのだとか。
養子になったからといって、さすがにへリウスを『父上』だの『お父様』だのと呼ぶ気にはならず、いまだに『へリウス』呼びだ。もう慣れたのか、何も言わなくなったが、最初の頃のへリウスは、相当凹みまくっていた。
「へリウス、行ってくる!」
「おう、気をつけてな!」
屋敷のエントランスで、狼獣人の赤ん坊を抱えたへリウス。腕の中で眠っているのは、産まれて3カ月の長女のクリステルだ。
唯一の女の子にデロデロのへリウスに見送られ、屋敷を飛び出していく。
「ハル、忘れ物は? 大丈夫っ?」
屋敷の2階、大きな窓から身を乗りだして叫ぶのは、へリウスの奥さん、俺の義母にあたるメイリン義母さん。
三人目を産んで間もないのに、すでに領主としての仕事をこなしている、働くお母さんだ。
後から知ったのだけれど、へリウスは入り婿で、メイリン義母さんの方が子爵という爵位を持っている人だったのにはビックリだった。
そりゃぁ、領主のお仕事をするわけだ。
「大丈夫!」
背中に背負ったリュックを見せて、親指を立ててみせる。メイリン義母さんは、輝くような笑顔で同じように指を立てて返事を返してきた。
メイリン義母さんは、人族でへリウスの番。その上、元日本人っていう前世をもっているという、情報盛りだくさんな女性だ。そのせいもあってなのか、この世界の貴族のご婦人らしからぬ、サバサバした女性でもある。
あのへリウスが粘って粘って、番ってもらったらしい。
今日は、魔の森の外縁で常設の薬草採取の依頼に出かけることになっていた。
へリウスの息子で、俺の義兄、長男のサイラスが待ちきれなさそうな顔で、屋敷の門の前で足踏みしている。
「ハル、急ぐぞ」
今日は学校が休みで家に戻ってきていたサイラスは、ヤル気満々だ。
サイラスは俺より3歳ほど年上で、でも、獣人の方が身体が大きく育つらしく、もっと年上に見える。
思い切り走り出すサイラスの後を、必死に追いかける俺。
獣人のパワーは半端ないんだけど、俺も精霊魔法で風の精霊に助けてもらいながら、なんとかついていく。
「ニ、ニコラスはっ?」
「はっ、あいつは婚約者様とお約束だとさ」
「あー、大変だーねー」
俺の1歳上の次男のニコラスも、行きたがってたのを思い出す。
「お、来た来た」
「待ってたわよ」
街の出入口の前で、二人の人族が俺たちを笑顔で迎えてくれた。
彼らは、ミーシャさんのところで出会った、アルフレッドとシャーリーだ。彼らは、ミーシャさんの義兄夫婦の所の子で、ウルトガ王国に留学に来ているのだ。
すでにアルフレッドは自分の国でCランクにまでなっていて、俺たちのリーダー的存在だ。なんでも、アルフレッドの家は、全員が冒険者ギルドに登録している家だそうだ。それは妹のシャーリーも例外ではない。
今日は俺の採取依頼の護衛ってことで、3人がついてきているけど……実際は、それを口実に、周辺で魔物の討伐をするつもりらしい。
「さぁ、さっさと討伐してこようぜ!」
「フフフ、サイラス様ってば、ヤル気ですわね」
……何気に仲良しのサイラスとシャーリーを先頭に、俺とアルフレッドは、後をついていく。
「ハルは無理はするなよ」
5年経っても、それほど成長しない俺は、小柄なままだ。
それがエルフ仕様っていうのなら仕方がないんだけれど、どうもそうとも言えないらしい。
「うん、アルフレッドも……サイラスたちに気を付けてね」
「ああ」
妹たちの様子に苦笑いするアルフレッド。俺もつられて笑みを浮かべた。
あれから、母方の一族からの接触はなかったけれど、たまにやってくるアーロン曰く、未だにあちらの大陸の冒険者ギルドには、俺の手配書は貼り出されたままらしい。所謂、塩漬け案件というヤツになっているそうだ。
そうは言っても、エルフ。時間の感覚が他の種族とは異なることもあって、5年程度じゃ、大した事ではないらしい。
いつか、こっちの大陸にまで手を伸ばしてくるんじゃないか、そんな気がしてならない。
――今の俺は、まだまだ子供だ。
でも、いつまでも逃げていられない、そんな気がする。
だから、強くなって、自分で身を守れるようにならないといけない。
『ハル、探している薬草はこれじゃないか?』
『ほら、あの辺に密集してるわよ』
『あっちにもあるぞ』
――今の俺は、子供だけれど、一人じゃない。
あれから、風以外の精霊王様たちに加護を頂き、火・水・土と、それぞれの精霊が俺の周りについてまわるようになった。
ちびっ子精霊の彼ら曰く、俺の護衛なのだとか。
「ありがとう!」
俺は張り切って、薬草の前にしゃがみこむ。
少し離れたところでアルフレッドが、周囲を警戒しているのを確認して、こっそり精霊魔法で、自分の周りだけという狭い範囲の結界を張る。
――今の俺は、子供だけれど、もっともっと強くなって、自分のことは自分で守れるようになってやる。
少し離れたところで、サイラスたちの歓声が聞こえた。
何か魔物を狩ったのだろう。
「俺も早く冒険者ランク上げたいな」
『大丈夫さ。ハルなら、あっという間さ』
『そうよ! でも、危ないことはしないでね』
『俺たちがいるから、大丈夫さ。焦らず、行こうぜ!』
「ああ、そうだね」
俺は、ニヤリと子供らしからぬ悪い笑みを浮かべてみせると、採った薬草をまとめて、サイラスたちの方へと向かうのだった。
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