Complex

うざピエロ

文字の大きさ
2 / 3
第1章 -Duo-

SIDE -NAOTO-

しおりを挟む
学校内に終礼のベルが鳴り始めた頃には
大勢の学生たちが大きな荷物を持ち、下駄箱から走り出ていった。その終礼のベルは1学期の終了と共に、長い夏休みの始まりを表していた。
ギラギラと指す太陽の光は、地球に対
しての怨みのようなものを感じるほど暑
かった。

「おい治斗、早く支度終えろよな~」

夏休みのスタートに遅れてしまったのが気に食わなかったのか、帰り支度の遅い治斗に対し急かす言葉をかけているのは治斗の親友の1人の杉田英大である。

「ごめんごめん、もう終わるよ」

「そういえばさ、治斗の家って大きなお寺だよな?」

「あぁ..まぁそうだけど」

「夏休み!肝試しでも治斗の家でやろうぜ!スリルあって絶対面白いっしょ!」

「え~~肝試し?絶対ダメでしょ?そんな罰当たりなことしちゃ!」

「そうだぞ杉田。石ちゃんの言う通りだ」

治斗の親友の1人の石本耕輝は肝試しなんてゴメンだと言うふうに杉田の発言に呆れていた。

「支度できたっとごめんよ遅れて」

治斗はパンパンに詰まった鞄を背負い、その重さに、毎回学期末に同じ思いをしているなと自分のだらしなさを実感した。

「本当にやろうぜ!肝試し!な?いいだろ!!」

「やんないほうがいいと思うよ、うち本当に出るしさ」

「出るって...幽霊的な奴?」

「的な奴ってなんだよ耕輝!そりゃ幽霊に決まってるだろ!幽霊でないとむしろ面白くないっしょ!」

「面白くないって...杉田は幽霊にでも取り憑かれて、呪われてみればいいんだ」

そんな話に笑いながら、校門を出て少しみんなとは遅い夏休みがスタートした。

「それじゃあな、治斗!夏休みもいっぱい遊ぼうな!」

「うん!いっぱい遊ぼうね治ちゃん!僕達こっちだから!」

「当たり前だよ!誘うし、誘ってくれよ!それじゃあな2人とも!あ、それと、!」

「「ん?」」

「2人とも、幽霊さんがお付きのようなのでウチの寺にでもお祓いに来てね!それじゃ!また!」

「冗談きついぜ治斗は~!なぁ?耕輝!」

「本当だよ!驚かないからね!!」

3人はそれぞれの家路に向かい自転車を漕ぎ出した。

「冗談きついぜ」か。あれが本当に幽霊を信じていない人の意見だろう。だが、俺には幽霊が見える。この何の変哲もない1本道だって、君たちは歩行者が3人見えているだけだろう。でも俺には、血だらけの老婆や行進していく腕のない兵隊達も見えてしまう。幽霊を見たいなんて興味本位で言う奴もいるけど、できるならそんなやつと目玉をくり抜いて交換してほしいくらいだ。

あぁ、なんで俺が幽霊を嫌いかって?あんまり言いたくはない。誰も信じてくれないから。

「おーーーいアホ治斗ーー!!」

こんな大きな声で俺の名前をアホ呼ばわりする奴は1人しかいない。

「何で先に帰っちゃうのさ!家隣なんだし待っててくれてもよくない?」

こいつは家が隣...しかも大きな洋風な家に住んでるお嬢様、尾崎まほろ だ。
うちのおんぼろお寺とは大違いで、なんだかギャップを感じてしまい少し苦手だ。

「待つわけないだろ~。お嬢様今日はお車でお帰りではないんですね~」

「何その嫌な言い方!雨の日だけしか送ってもらってませんーー」

「へーへー、そうですか」

雨の日もカッパ着ながら汗かいて自転車漕いで学校こいよっっっっ!

と言いたいところだが、言うとどうなるかは、想像できたため、心に留めた。

「そういえばさ、最近ここら辺で火事が多いの知ってる?連続放火魔の可能性アリなんだってさ~怖いよね~」

「あぁそういえば、今朝ニュースにもなってたっけ、大成区 連続放火か? なんて言ってたわ」

「アンタは呑気ね~、いつお寺に火を付けられるかわからないわよ~」

「アホか、そしたらお前の家まで焼けちまうだろ」

「アホとはなによ!アホ治斗!」

コツンッ

「!?空から何か降ってきた」

「何言ってるのアホ治斗?」

治斗は空から落ちた"なにか"に向かって大きくペダルを回した。

「黒い...数珠?なんだこれ」

「何やってるの急にスピード出したと思ったら急に止まって!!」

「これ、、空から落ちて着たんだけど、、数珠だよな?」

「は?どれのこと言ってるの?まさか、またアホな事言ってるの?」

そうだ、まほろにアホ呼ばわりされるようになったのは、幽霊と人を判別できていない子供の頃、まほろの後ろにいる人を指摘した事からはじまったんだ。あれは幽霊でまほろには見えていなかった。

そして、、この数珠も、、

「お前本当に見えないのか?」

「見えないも何も、アンタ手に何の持っていないじゃない!本当怖い事言わないでよね、気持ちが悪い!私やっぱり先帰る!」

先程の治斗よりもペダルを大きく回し、横を通り過ぎて行ってしまった。

まほろが見えないと言うことは...幽霊の落し物?いや、こんな体験は初めてだ。
見えないモノではなく、見えない物だという事か。

【この時の俺はまだ、この数珠から運命が大きく変わる事を知らなかった-】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

双五、空と地を結ぶ

皐月 翠珠
ファンタジー
忌み子として生まれた双子、仁梧(にこ)と和梧(なこ)。 星を操る妹の覚醒は、封じられた二十五番目の存在"隠星"を呼び覚まし、世界を揺るがす。 すれ違う双子、迫る陰謀、暴かれる真実。 犠牲か共存か─── 天と地に裂かれた二人の運命が、封印された星を巡り交錯する。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...