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第1章 -Duo-
SIDE -NAOTO-
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学校内に終礼のベルが鳴り始めた頃には
大勢の学生たちが大きな荷物を持ち、下駄箱から走り出ていった。その終礼のベルは1学期の終了と共に、長い夏休みの始まりを表していた。
ギラギラと指す太陽の光は、地球に対
しての怨みのようなものを感じるほど暑
かった。
「おい治斗、早く支度終えろよな~」
夏休みのスタートに遅れてしまったのが気に食わなかったのか、帰り支度の遅い治斗に対し急かす言葉をかけているのは治斗の親友の1人の杉田英大である。
「ごめんごめん、もう終わるよ」
「そういえばさ、治斗の家って大きなお寺だよな?」
「あぁ..まぁそうだけど」
「夏休み!肝試しでも治斗の家でやろうぜ!スリルあって絶対面白いっしょ!」
「え~~肝試し?絶対ダメでしょ?そんな罰当たりなことしちゃ!」
「そうだぞ杉田。石ちゃんの言う通りだ」
治斗の親友の1人の石本耕輝は肝試しなんてゴメンだと言うふうに杉田の発言に呆れていた。
「支度できたっとごめんよ遅れて」
治斗はパンパンに詰まった鞄を背負い、その重さに、毎回学期末に同じ思いをしているなと自分のだらしなさを実感した。
「本当にやろうぜ!肝試し!な?いいだろ!!」
「やんないほうがいいと思うよ、うち本当に出るしさ」
「出るって...幽霊的な奴?」
「的な奴ってなんだよ耕輝!そりゃ幽霊に決まってるだろ!幽霊でないとむしろ面白くないっしょ!」
「面白くないって...杉田は幽霊にでも取り憑かれて、呪われてみればいいんだ」
そんな話に笑いながら、校門を出て少しみんなとは遅い夏休みがスタートした。
「それじゃあな、治斗!夏休みもいっぱい遊ぼうな!」
「うん!いっぱい遊ぼうね治ちゃん!僕達こっちだから!」
「当たり前だよ!誘うし、誘ってくれよ!それじゃあな2人とも!あ、それと、!」
「「ん?」」
「2人とも、幽霊さんがお付きのようなのでウチの寺にでもお祓いに来てね!それじゃ!また!」
「冗談きついぜ治斗は~!なぁ?耕輝!」
「本当だよ!驚かないからね!!」
3人はそれぞれの家路に向かい自転車を漕ぎ出した。
「冗談きついぜ」か。あれが本当に幽霊を信じていない人の意見だろう。だが、俺には幽霊が見える。この何の変哲もない1本道だって、君たちは歩行者が3人見えているだけだろう。でも俺には、血だらけの老婆や行進していく腕のない兵隊達も見えてしまう。幽霊を見たいなんて興味本位で言う奴もいるけど、できるならそんなやつと目玉をくり抜いて交換してほしいくらいだ。
あぁ、なんで俺が幽霊を嫌いかって?あんまり言いたくはない。誰も信じてくれないから。
「おーーーいアホ治斗ーー!!」
こんな大きな声で俺の名前をアホ呼ばわりする奴は1人しかいない。
「何で先に帰っちゃうのさ!家隣なんだし待っててくれてもよくない?」
こいつは家が隣...しかも大きな洋風な家に住んでるお嬢様、尾崎まほろ だ。
うちのおんぼろお寺とは大違いで、なんだかギャップを感じてしまい少し苦手だ。
「待つわけないだろ~。お嬢様今日はお車でお帰りではないんですね~」
「何その嫌な言い方!雨の日だけしか送ってもらってませんーー」
「へーへー、そうですか」
雨の日もカッパ着ながら汗かいて自転車漕いで学校こいよっっっっ!
と言いたいところだが、言うとどうなるかは、想像できたため、心に留めた。
「そういえばさ、最近ここら辺で火事が多いの知ってる?連続放火魔の可能性アリなんだってさ~怖いよね~」
「あぁそういえば、今朝ニュースにもなってたっけ、大成区 連続放火か? なんて言ってたわ」
「アンタは呑気ね~、いつお寺に火を付けられるかわからないわよ~」
「アホか、そしたらお前の家まで焼けちまうだろ」
「アホとはなによ!アホ治斗!」
コツンッ
「!?空から何か降ってきた」
「何言ってるのアホ治斗?」
治斗は空から落ちた"なにか"に向かって大きくペダルを回した。
「黒い...数珠?なんだこれ」
「何やってるの急にスピード出したと思ったら急に止まって!!」
「これ、、空から落ちて着たんだけど、、数珠だよな?」
「は?どれのこと言ってるの?まさか、またアホな事言ってるの?」
そうだ、まほろにアホ呼ばわりされるようになったのは、幽霊と人を判別できていない子供の頃、まほろの後ろにいる人を指摘した事からはじまったんだ。あれは幽霊でまほろには見えていなかった。
そして、、この数珠も、、
「お前本当に見えないのか?」
「見えないも何も、アンタ手に何の持っていないじゃない!本当怖い事言わないでよね、気持ちが悪い!私やっぱり先帰る!」
先程の治斗よりもペダルを大きく回し、横を通り過ぎて行ってしまった。
まほろが見えないと言うことは...幽霊の落し物?いや、こんな体験は初めてだ。
見えないモノではなく、見えない物だという事か。
【この時の俺はまだ、この数珠から運命が大きく変わる事を知らなかった-】
大勢の学生たちが大きな荷物を持ち、下駄箱から走り出ていった。その終礼のベルは1学期の終了と共に、長い夏休みの始まりを表していた。
ギラギラと指す太陽の光は、地球に対
しての怨みのようなものを感じるほど暑
かった。
「おい治斗、早く支度終えろよな~」
夏休みのスタートに遅れてしまったのが気に食わなかったのか、帰り支度の遅い治斗に対し急かす言葉をかけているのは治斗の親友の1人の杉田英大である。
「ごめんごめん、もう終わるよ」
「そういえばさ、治斗の家って大きなお寺だよな?」
「あぁ..まぁそうだけど」
「夏休み!肝試しでも治斗の家でやろうぜ!スリルあって絶対面白いっしょ!」
「え~~肝試し?絶対ダメでしょ?そんな罰当たりなことしちゃ!」
「そうだぞ杉田。石ちゃんの言う通りだ」
治斗の親友の1人の石本耕輝は肝試しなんてゴメンだと言うふうに杉田の発言に呆れていた。
「支度できたっとごめんよ遅れて」
治斗はパンパンに詰まった鞄を背負い、その重さに、毎回学期末に同じ思いをしているなと自分のだらしなさを実感した。
「本当にやろうぜ!肝試し!な?いいだろ!!」
「やんないほうがいいと思うよ、うち本当に出るしさ」
「出るって...幽霊的な奴?」
「的な奴ってなんだよ耕輝!そりゃ幽霊に決まってるだろ!幽霊でないとむしろ面白くないっしょ!」
「面白くないって...杉田は幽霊にでも取り憑かれて、呪われてみればいいんだ」
そんな話に笑いながら、校門を出て少しみんなとは遅い夏休みがスタートした。
「それじゃあな、治斗!夏休みもいっぱい遊ぼうな!」
「うん!いっぱい遊ぼうね治ちゃん!僕達こっちだから!」
「当たり前だよ!誘うし、誘ってくれよ!それじゃあな2人とも!あ、それと、!」
「「ん?」」
「2人とも、幽霊さんがお付きのようなのでウチの寺にでもお祓いに来てね!それじゃ!また!」
「冗談きついぜ治斗は~!なぁ?耕輝!」
「本当だよ!驚かないからね!!」
3人はそれぞれの家路に向かい自転車を漕ぎ出した。
「冗談きついぜ」か。あれが本当に幽霊を信じていない人の意見だろう。だが、俺には幽霊が見える。この何の変哲もない1本道だって、君たちは歩行者が3人見えているだけだろう。でも俺には、血だらけの老婆や行進していく腕のない兵隊達も見えてしまう。幽霊を見たいなんて興味本位で言う奴もいるけど、できるならそんなやつと目玉をくり抜いて交換してほしいくらいだ。
あぁ、なんで俺が幽霊を嫌いかって?あんまり言いたくはない。誰も信じてくれないから。
「おーーーいアホ治斗ーー!!」
こんな大きな声で俺の名前をアホ呼ばわりする奴は1人しかいない。
「何で先に帰っちゃうのさ!家隣なんだし待っててくれてもよくない?」
こいつは家が隣...しかも大きな洋風な家に住んでるお嬢様、尾崎まほろ だ。
うちのおんぼろお寺とは大違いで、なんだかギャップを感じてしまい少し苦手だ。
「待つわけないだろ~。お嬢様今日はお車でお帰りではないんですね~」
「何その嫌な言い方!雨の日だけしか送ってもらってませんーー」
「へーへー、そうですか」
雨の日もカッパ着ながら汗かいて自転車漕いで学校こいよっっっっ!
と言いたいところだが、言うとどうなるかは、想像できたため、心に留めた。
「そういえばさ、最近ここら辺で火事が多いの知ってる?連続放火魔の可能性アリなんだってさ~怖いよね~」
「あぁそういえば、今朝ニュースにもなってたっけ、大成区 連続放火か? なんて言ってたわ」
「アンタは呑気ね~、いつお寺に火を付けられるかわからないわよ~」
「アホか、そしたらお前の家まで焼けちまうだろ」
「アホとはなによ!アホ治斗!」
コツンッ
「!?空から何か降ってきた」
「何言ってるのアホ治斗?」
治斗は空から落ちた"なにか"に向かって大きくペダルを回した。
「黒い...数珠?なんだこれ」
「何やってるの急にスピード出したと思ったら急に止まって!!」
「これ、、空から落ちて着たんだけど、、数珠だよな?」
「は?どれのこと言ってるの?まさか、またアホな事言ってるの?」
そうだ、まほろにアホ呼ばわりされるようになったのは、幽霊と人を判別できていない子供の頃、まほろの後ろにいる人を指摘した事からはじまったんだ。あれは幽霊でまほろには見えていなかった。
そして、、この数珠も、、
「お前本当に見えないのか?」
「見えないも何も、アンタ手に何の持っていないじゃない!本当怖い事言わないでよね、気持ちが悪い!私やっぱり先帰る!」
先程の治斗よりもペダルを大きく回し、横を通り過ぎて行ってしまった。
まほろが見えないと言うことは...幽霊の落し物?いや、こんな体験は初めてだ。
見えないモノではなく、見えない物だという事か。
【この時の俺はまだ、この数珠から運命が大きく変わる事を知らなかった-】
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