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第36話答えのないゲーム

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そう自分に強く言い聞かせる。

とりあえずお店の中にある服を一通り見てみる。

色々と悩んだ結果モモさんには少し大人っぽいデザインの水色の服で、ナギにはおとなしめの白い服を選んだ。

『2人ともこれでいいって言ってくれるかな?』

そんな不安を感じながらも服を2人のところへ持っていく。

『2人とも一応選んできたけどこれでいい?』

そう確認の言葉を投げかける。

「それじゃあ早速試着してみていいですか勇者様!」

「はい別にいいですよ」

そう言って僕はモモさんに水色の服を渡す。

「それじゃあ私も試着してこようかしら」

ナギに白い服を渡した。

それからしばらくして。


先に試着室から出てきたのはモモさんだった。

「勇者様どうですか!」

その水色の服はモモさんの雰囲気ととてもマッチしていた。


いつもよりも少しハイテンションでとても嬉しそうに聞いてくる。

『とても似合ってると思います』

そのテンションに少し圧倒されながらもそう答える。

『気に入ってくれてるみたいで良かった』

「はい私この服とても気に入りましたありがとうございます勇者様」

モモさんとそんな話をしていると今度はナギが試着室から出てきた。

「どう…」

頬を赤くしながらそう聞いてくる。

清楚な感じの服装になっていた。

『とても似合ってると思うよナギ』

「ええ私もそう思います、とても似合ってますよナギさん」

『それじゃあ2人の服選びも終わったことですし場所を移動しましょうか』

「何を言ってるんですか勇者様の服を選ぶのがまだじゃないですか」

「僕は別にいいですよ買わなくても」

「まあまあそんなこと言わずに」

その表情は明らかに何かを企んでいる表情だ。


『僕の服選びはまた今度にしましょう』

そう言ってすぐにその場から逃げようとするが。

「まあまあ遠慮しないでくださいよ」

あっけなく捕まってしまう。

もう観念しろと言わんばかりに僕を一旦小さい子用の椅子に座らせる。

この時点でこれから何をされるのかあらかたの想像はついていた。

「勇者様まず最初はこれを着てみましょうか」

試着室に連れ込まれ次から次へと色んな服に着替えさせられる。

と言っても僕のこの赤ちゃんの体じゃ着れる服も限られてくるのだが。

モモさんが服を着替えさせているのを見てナギがなんどか止めようとしたが全く言うことを聞かず。

僕をしばらくおもちゃのようにして着替えさせるのを楽しんでいた。

結局僕の服は1着も買わずに店を出た。

「服選び楽しかったですね勇者様」

とても満足そうな笑顔でそう言ってくる。

『僕は色々と疲れましたよ』

肉体的にも精神的にも、モモさんのおもちゃにされて疲労がたまっている。

僕達は宿屋に戻った。


ナギと2人で僕のスキルポイントをどうやって貯めるか考えていると、モモさんがいきなりいたずらが思いついた子供のような笑みを顔に浮かべてこう言った。

「私から一つ提案なんですけど、勇者様に2人で育児をするっていうのはどうでしょうか?」

「モモさんいきなり何を言ってるの!」

「第一クロリスには私が育児をしないと意味ないんだからどっちにしろ一緒じゃない」

「確かに育児をするのは那岐山じゃないといけないのかもしれませんけど2人で育児をするともしかしたらポイントが増えるかもしれませんよ」

「そそそそんなことあるわけないでしょ!」

明らかに動揺した口調でそう言葉を返す。

『そうですよモモさんそれにたまにナギの育児の邪魔をしてますけどそんなにポイントに差はなかったじゃないですか!』

僕も慌ててそう言葉を返す。

正直言ってはっきりとは覚えていないが。

「それはちゃんと検証しないと分からないことなんじゃないですか?」

勝ちを確信したような笑みを浮かべてナギにそう言ってくる。

「それにあの時はじゃれ合っていただけでちゃんと育児はしてませんでしたし」

顔にニヤリと笑みを浮かべて僕に近づいてくる。

『ナギに育児をしてもらうだけでも十分恥ずかしいのにモモさんと2人がかりで育児されるなんて耐えきれない!』

モモさんは僕が慌てていることなど一切気にせずに何かを考えているようだった。

「2人で育児をするにしてもどういうやり方がいいですかね?」

『2人で育児を本当にするつもりなんですか?』

確認の言葉を投げかける。

『やるやらないどっちにしてもナギが嫌がると思うんですけど?』

『今現在すでにナギが嫌がってるわけだし』

これはいつものようにナギが嫌だと言って終わる流れだと思っていたが、モモさんがナギにこう言った。

「ナギさんこれでもし勇者様のスキルポイントを効率よく貯めていくことができれば早く魔王を倒せるかもしれないんですよ!」

言っていることは実に正しいのだがモモさんがそれだけのために僕の育児を2人でやろうと言ったとはとても思えない。

「それは確かに一理あるわね」

『ナギモモさんの口車に乗せられないで!』

「口車に乗せてるなんて人聞きの悪いこと言わないでくださいよ勇者様」

「勇者様だってできることなら早く魔王を倒して元の姿に戻りたいんじゃないですか?」

『それは確かにそうだけど…』

その言葉には何も言い返せなかった。

「とりあえず試しにやってみるだけやってみましょうよ」

それから色々なパターンで試してみたが確かにモモさんの言うとおり手に入るポイントは普通にナギに育児をしてもらうより上がっていた。

モモさんがこれからこの育児を理由に僕にやたらと絡んでくるということはわざわざ考えるまでもない。

「これでナギが育児を始めた後に私が一緒に育児をすればポイントが貯まることがわかりましたね」

「だからってむやみやたらにクロリスに触らないでよ」

怪しむような目線をモモさんに向ける。

3人でお風呂に入ることになる,

「はぁこれからどうなっていくんでしょうね」

特に理由もなくため息まじりにそう言ってくる。

『どうしたんですかモモさんいきなり』

「これからどうなっていくのかなと思って」

「これからどうなっていくって…」

僕は言っている意味が分からず疑問がこもった口調で言っていた言葉をそのまま返した。

「今ふと思ったんですけど例えば勇者様達が魔王を倒した後どうするのかなと思って」

『そう言われてみればそうだこうしてモモさんに言われるまで考えたこともなかったけど』

『いずれは魔王を倒して元の姿に戻れるのかな?』

『いやそこはちゃんと戻ってもらわないと困るそのために魔王を倒そうとしてるんだから!』

「魔王を倒し終わって勇者様の姿が元に戻っても私をパーティーにいさせてくれますか?」

いきなりそんなことを聞いてくる。

『それはもちろん魔王を倒したらモモさんをパーティーから外すなんてことはしませんよ』

「ありがとうございます勇者様!」

そう言いながら僕に勢いよく抱きついてくる。

「ちょっといきなり何抱きついてるのモモさん!」

どうやら今のは僕にその言葉を言わせるための演技だったらしい。

またまんまとモモさんの罠に引っかかったというわけだ。

楽しそうな表情を顔に浮かべている。



面白かった。

続きが気になる。

と思っていただけたかたはお気に入り登録よろしくお願いします。
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