弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)

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本編完結(年齢制限無し)

ようやく学園、弟も婚約者も同じ学年?

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ついに来た学園生活。学園生活はイベントが盛りだくさん。トアのために俺はゲーム通りにした。一般的に13歳で入学の学園。俺も13歳、この世界での入学式は1月でどうも前世とは違うようだ。この5年間の内、1年は時々アイリス嬢をトアに会わせ、後4年は俺がアイリス嬢に会いに行くことで会わせなくした。

トアも剣や魔法も加わり、休憩時間はひそかになり、俺自身も全く会わなくなった。恐らく父が手を回したんだろう。それでもトアがどうしているか聞くことくらいは許してもらえた。

だから驚いたものだ。父が手を回して会わせないようにしたのに、ちょうどよく勉強過程が被ったからと俺の入学式に、トアも入学するのだから。ついでに強制力かわからないが、俺の婚約者も優秀らしく、10歳にして同じく入学だ。一番年上ないのに情けない。

というわけで、久々のトアとの再会は入学式。平等主義の学園では家名の地位順ではなく、家名のあ~わ行の順となり、同じ家名のトアとは隣同士。

8歳になり、最年少で一番小さく目立つトアは、ちらちらと緊張した様子で俺を見てくるのが丸わかりで4年ぶりなのもあり、弟の可愛さに悶えそうになる。本当、前世よく弟を前にしてあんな暴言吐けたな俺と思うくらいにはブラコンになりつつあるのを自覚している。

まあ久々だし、いいか。と軽い気持ちで、トアの膝の上で握り締めている手を包むようにして握ってやれば、びくっと面白いくらいに動揺し、困惑した表情でこちらを見てきたので、ついおかしくて声を抑えて笑ってしまった。

俺でこうならヒロインのアイリス嬢にはどんな風になるのだろうとつい想像してしまう。

そんな可愛い弟を愛でてる内に、入学式が終わり、ようやくアイリス嬢とトアの再会イベントだと思っていれば、トアに引っ張られ人気のない校舎裏へ。入学式だし、迷子だろうか?ここから出て正門まで行かないと再会イベントが果たされない。俺を待つアイリス嬢が先にトアと会うことで果たされるわけだから、まず俺が離れなければいけないわけだが。

この時点でリーアベルをアイリス嬢が待つ理由が、婚約者とわからなかった俺はバカなのかもしれない。他にこのゲームをしていた人たちは勘づいていたのだろうか。それともリーアベルの婚約者である表示がゲームであったりしたのだろうか。

「兄上、お久しぶりです。あの………えっと」

「久しぶり。どうも父上がトアと俺を会わせないように手を回していたみたいだ。でも、トアがどうしているかを聞く分には許してもらえていたし、頑張っているのも聞いている」

「父上が………」

聞きたいことは合っていたようだ。入学式中にも思ったが、どうやらまだ俺は嫌われてないみたいだ。3歳時のことなんてそれこそすぐに忘れて、トアと違い大したこともできないリーアベルなどすぐ嫌うと思ったんだけど。

正直トアに嘘はつきたくないし、嫌われているならともかく、まだ構っていた時のことを覚えている上で慕ってくれているのなら、自分から避けたなど悪いよう言って傷つけたくはない。あくまで俺はトアを傷つけずに幸せにしたいのだから。

「剣も魔法もその年じゃありえないくらいにできてるんだとか。すごい頑張ったんだなぁ」

「あ………王になりたいから」

「既に次期王としての自覚もあるのか。さすがだな。王になってしたいことでもあるのか?」

「兄上を………」

「俺を?」

「えっと………兄上とリトレーン嬢の婚約破棄を」

「なるほど………トアはアイリス嬢に既に恋しているのか」

思った以上に進展が早いな。

「ち、違います!誰があんな女………じゃなくて、兄上をとられたくないんです!」

なんとも可愛い理由だった。なるほど、婚約者のアイリス嬢が来てから俺と二人の時間がなくなり、さらに4年も会えなかったことで、アイリス嬢に俺がとられたと感じたのか。いや、アイリス嬢への恋が無自覚でそう思い込んでいる可能性もあるか?本当はアイリス嬢を俺に渡したくない気持ちから?

うんうん、どうやら順調のようだ。

「なら頑張らないとな。そろそろ行くよ。アイリス嬢を待たせてるから。なんなら俺が行く前に会って言うか?俺との婚約を破棄させること宣言」

「い、いいのですか?」

「いいよ。その方がやる気も出るだろ」

「はい!」

これで後は俺がトアを避け、トアとアイリス嬢の二人の時間を作りやすくし、アイリス嬢に嫌がらせを開始すれば、アイリス嬢がトアを頼り、トアが俺を嫌い、王になるまで待てないとアイリス嬢を父上に頼み込んで婚約者にすれば、アイリス嬢を殺すフリをすることで、アイリス嬢を失うかもしれないという感情から、より深い愛に目覚め、俺を処刑し、より固い婚約で成人後結婚し、誰もが羨む夫婦となりトアの幸せが続くことになるだろう。

完璧なストーリーである。トアの幸せを見続けられないのだけが残念だけど。
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